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3月, 2020の投稿を表示しています

時を越えた武将の恋と悲劇 「トッケビ~君がくれた愛しい日々~」 #265

1990年代前後に放送されたトレンディドラマといえば、浅野温子、浅野ゆう子の「W(ダブル)浅野」や、三上博史、柳葉敏郎、陣内孝則、江口洋介、織田裕二、吉田栄作ら、美男美女による恋物語です。 流行の最先端の職業、オシャレな街や、素敵なインテリアの部屋に暮らす主人公たちには憧れました。東京って日本じゃないんだと思ってましたよ。 韓流ブーム全盛期の頃の韓国ドラマは、もうちょっと泥臭い設定でした。 親に捨てられるとか、貧乏のどん底生活とか、家の奴隷のような嫁、強父に逆らえない息子、裏切りを乗り越えて復讐することが生きる目的になっているような、そんな設定が多かったんですよね。 韓国社会自体が成熟したせいか、設定は大きく様変わり。日本のトレンディドラマのような等身大といえばそうだけど、どちらかというと非現実的な設定やお仕事ドラマが増え、それと共に高視聴率の番組も減ってしまったように思います。 そんな中で2016年から放送が始まった「トッケビ~君がくれた愛しい日々~ 」は、ケーブルテレビとしては異例の高視聴率を記録。主演のコン・ユは、百想芸術大賞などの賞を総なめにしました。 900年の時を行ったり来たりしつつ、高麗時代の武将の恋と悲劇を描いたラブコメディです。 ☆☆☆☆☆ ドラマ「トッケビ~君がくれた愛しい日々~」 DVD (画像リンクです) Netflix https://www.netflix.com/title/81012510 ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 高麗最強の武士キム・シン(コン・ユ)は、王の嫉妬から逆賊とされ、命を落とす。しかし、不滅の人生を生きる呪いをかけられて蘇ることに。約900年後、女子高生のウンタク(キム・ゴウン)と知り合う。幽霊が見える彼女は、キム・シンをトッケビだと見破り、自分は「トッケビの花嫁」だと主張するのだが……。 「トッケビ」とは、朝鮮半島に伝わる精霊や妖怪のことです。辞書には「小鬼、お化け」と出ているのですが、「鬼」と何が違うねん、「幽霊」との違いはなんや?というツッコミはなしで読んで欲しいのですけど。 「トッケビ」は大衆文化の象徴としてキャラクター路線が進んだそうです。これをモチーフに、壮大なドラマを作り上げたのが、脚本家のキム・ウンスクです。 日本のトレンディドラマのブームを築いた脚本家として名前が挙がるのが、坂元裕二や野島伸司でしょう。同

ケタ違いのスケールで問う。命か、権力か Netflixドラマ「キングダム」 #263

韓国ドラマに火をつけたのは「冬のソナタ」といわれています。日本では2003年〜2004年にかけて放送され、「冬ソナ現象」と呼ばれる一大ブームになりました。 実は「冬ソナ」観てないんですけど。 韓流ドラマブームには時代劇も多くて、わたしはこちらを観ていたからです(言い訳)。この頃の正統派時代劇のほとんどを手がけていたのがイ・ビョンフン監督。日本では2004年に放送された「宮廷女官チャングムの誓い」や、2008年から2009年に放送された「イ・サン」が有名です。 差別と階級。嫉妬と謀略。苦難のパッケージングは胸を熱くする ドラマ「宮廷女官チャングムの誓い」#441   王の生涯を貫くのは、友情と陰謀 ドラマ「イ・サン」 #560   宮廷の衣装や調度品、儀式や食べ物、役職などは、ドラマを通して知ったのですが、そこはやっぱりテレビドラマ。 (ちょっと安っぽい) と感じたものもありました。 でも。 Netflixオリジナルシリーズ「キングダム」は違う。セットが。スケールが。迫力が。桁違いです。1本あたりの制作費は約20億ウォン(約2億円)で、すべてNetflixが負担したというんだから驚きです。 時代劇×ゾンビ×ミステリーを組み合わせ、映画並みのクオリティに仕上がっています。現在はシーズン2まで配信中。 ☆☆☆☆☆ ドラマ「キングダム」Netflixで配信中 https://www.netflix.com/title/80180171 ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 舞台は朝鮮時代。王の崩御を知った高官のチョ氏は、秘術によって王を生き返らせてしまう。姿を見せなくなった父を心配した世子(皇太子)は、こっそり王の寝室に侵入、怪物を目撃する。一方、王に秘術を施した医師は、弟子の亡骸と共に帰郷。泣き崩れる医女たちを尻目に、お腹を空かせた民衆のため、ひとりの男が料理を振る舞うことに。しかしその料理を食べた人が次々にゾンビとなり、襲いかかってきて……。 ドラマのオープニングが医師による秘術のシーンなんですが、美しくもあり、まがまがしさも感じる映像で一気に引き込まれました。 ゾンビ映画のお約束として、 ・呪術で蘇る ・主食は人間の肉 ・噛まれた人間もゾンビになる ・光と音に敏感 ・頭を破壊すると行動を停止する があります。 これに加えて「キングダム」では、 ・火と水が苦手 ・昼間眠り夜活動する

ブラックユーモアと生きるための知恵 『旅行者の朝食』 #255

いろんな国の国民性を端的に表した“エスニックジョーク”。有名なのは「沈没船ジョーク」でしょうか。 沈没しかけた船に乗り合わせた人たちに、海に飛び込むよう船長が呼びかけます。 アメリカ人には「飛び込めばヒーローになれます」 イギリス人には「飛び込めばジェントルマンになれます」 ドイツ人には「飛び込むのはルールです」 フランス人には「飛び込まないでください」 日本人には「皆さん飛び込んでます」 一方で、その国でしか通用しないジョークもありますよね。早くも今年の流行語大賞になるんではと言われている「時を戻そう」とか、「マヌケなことを言ったらタライが落ちてくる」とか、こういうのには名前がついていないみたい。 ロシア語通訳の米原万里さん曰く、「ジョークと小咄はロシア人の必須教養」だそう。でも、通訳の時にロシア人が爆笑する「旅行者の朝食」が何を意味しているのか分からず、困ったそうです。 ある男が森の中で熊に出くわした。 熊はさっそく男に質問する。 「お前さん、何者だい?」 「わたしは、旅行者ですが」 「いや、旅行者はこのオレさまだ、お前さんは、旅行者の朝食だよ」 こんな、フツーの小咄にしか思えない話に、ロシア人は爆笑するのです。「何がおかしいの?」と聞いても、笑うだけでみんな教えてくれない。辞書や慣用句辞典、寓話集を探しても載っていない。 「日本の商社が“旅行者の朝食”を大量にわが国から買い付けるらしいぜ」 「まさか。あんなまずいもん、ロシア人以外で食える国民がいるのかね」 「いや、何でも、缶詰の中身じゃなくて、缶に使われているブリキの品質が結構上等だっていうらしいんだ」 まさかのエスニックジョークを聞いて、ようやく“旅行者の朝食”の正体がつかめたのですが、その実態は……。 そんなロシアをはじめとする、さまざまなお国の民族性と食を巡るエッセイ集が『旅行者の朝食』です。 ☆☆☆☆☆ 『旅行者の朝食』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 9歳から14歳までの5年間を、プラハのソビエト大使館付属学校で過ごした米原さん。クラスメイトは50か国ほどの子どもたちで、それぞれの文化的背景や国情なんて違って当たり前。ロシア語というつながりしか持たない世界なんです。 まーったく言葉が分からないまま放り込まれた学校でコミュニケーションを学んでいく。 学校の試験はすべて論述試験だったこともあり、彼女のロ

失敗にこそ成功の種がある 『佐藤オオキのボツ本』 #239

今月は新型コロナウイルスの感染予防のため、全体の勉強会を中止にし、夜に実施予定だったセミナーも延期……という事態になっています。残念。 1月に実施した若手向けのセミナーは、人材紹介会社の方からもほめてもらった内容でした。テーマは「失敗から学ぼう」で、カンタンに言うと会社版「しくじり先生」です。 失敗したくない。100点とって、いいところを見せたい。 「学校秀才」のワナという気がしますが、気持ちはとても分かるんです。でも失敗してくれないと、何が分かってないのかも分からない。だから失敗を恐れるな。失敗したからって評価は下がらないし、怒られないよ、と言葉で言っても挑戦を避けようとする。 だったら先輩方に「失敗から学んだことを話してもらおう」というセミナーでした。 終わってみて、「自分と同じ失敗を、先輩もしたことがあると聞いて安心した」という声や、「一つひとつの失敗に落ち込まなくていいんだなと思った」という感想をもらいました。わたしが紹介した失敗は、ちょっと引かれたけど。笑 “失敗にこそ成功の種がある。” そう語るのは、Newsweek誌「世界が尊敬する日本人100人」に選出されたこともあるデザイナーの佐藤オオキさんです。 佐藤さんは400を超えるプロジェクトを同時進行させているそうで、プレゼンの影には当然、累々たるボツ案があります。その“渾身の”ボツ案を一挙に集めた本が『佐藤オオキのボツ本』です。 ☆☆☆☆☆ 『佐藤オオキのボツ本』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ プロダクト類をプレゼンする時には、3Dプリンターでリアルサイズの模型を作っていくそうです。自動販売機の横に置くゴミ箱、美容院の椅子、野菜のパッケージなどなど、多くのボツ案が紹介されています。 おもしろかったのが美容院の椅子のプレゼン。 こんなことできたらいいな♪ 奇抜な発想のアイディアを持っていくのですが、「美容院の椅子は重いのでムリです」と瞬殺。 それでも佐藤さんは「そっかー!」で次にいくのです。数あるアイディアのひとつが消えただけ。議論を深めるための「たたき台」だから、よりよい方向が絞り込みやすくなった、くらいのおおらかな受け止め方はうらやましくなります。 佐藤さんほどの割り切りとハートの強さを求めるよりは、社内の空気を作る方がいいので、先述のセミナーの前には先輩たちへの研修を行いました。 本当に怒られない