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6月, 2021の投稿を表示しています

映画「よく知りもしないくせに」#718

キム・ミニは、ホン・サンス監督にとってミューズと讃えられています。多作な監督ですが、その作品群は、「キム・ミニ以前/キム・ミニ以後」に分けられるとのこと。 “よく知りもしないくせに”芸術的なことなんて、なんとも言えないですが、“分かりやすくなった”のは「よく知りもしないくせに」から、と言われています。 ☆☆☆☆☆ 映画「よく知りもしないくせに」 https://amzn.to/3xhqKkd ☆☆☆☆☆ <あらすじ> アート系映画監督のギョンナムは、審査員として呼ばれた映画祭で、かつての親友サンヨンと遭遇する。サンヨンの家で彼の妻と共に飲み明かすが、翌日、なぜかサンヨンから絶交を言い渡されてしまう。数日後、済州島を訪れたギョンナムは、先輩チョンスの妻となった元恋人スンと再会し、関係を持つが……。 「豚が井戸に落ちた日」でデビューした監督にとっては、9作品目にあたる映画です。この後、8作品後の「正しい日 間違えた日」でキム・ミニと初タッグを組むことになります。 「よく知りもしないくせに」は「キム・ミニ以前」の映画で、だらしない、こじらせ映画監督が、女たちに小突き回されるスタイル。小説家のキム・ヨンスがカメオ出演しているのですが、友人からは、 「どんな目に遭うのか分かってるのに、なんで?」 と言われてしまったのだそう。それくらい、ホン・サンス作品における男たちの処遇には、定評があるんですね。 キム・テウ、コン・ヒョンジン、ハ・ジョンウ、チョン・ユミら、めっちゃ豪華な俳優たちも、みんな「ノーギャラ」。それでも出たいと思わせる監督なのでしょう。 (画像は映画.comより) この映画が、「逃げた女」のラストシーンで、ガミが観ていた映画です。何度も何度も打ち寄せる波が、セリフを重複して繰り返すホン・サンス映画そのもののようでした。 映画「逃げた女」#717   「二度と自分の前に現れないでくれ」という親友のメッセージを受け取って、アタフタ、オロオロ。密かに下心を抱いていたコーディネーターの女性に責められて、アタフタ、オロオロ。訳も分からず映画祭から逃げ出すギョンナム。元カノと情事にふけっていたところに夫に踏み込まれ、またもや逃げ出すギョンナム。 そしていま。 女に逃げられた男は、アタフタ、オロオロしているのではないかしら……なんて考えてしまいました。 ギョンナムという男は、自分

映画「逃げた女」#717

この女性は、なにから逃げているんだろう。そして、どこへ逃げているんだろう。 ホン・サンス監督の作品をすべて観ているわけではないですが、新作の「逃げた女」は、いい意味で一番“分かりやすい”映画かもしれないと感じていました。 でも、あらためて考えてみると、じわじわと疑問がわいてきます。 第70回ベルリン国際映画祭コンペティション部門で、最優秀監督賞である銀熊賞を受賞した映画です。 ☆☆☆☆☆ 映画「逃げた女」 http://nigetaonna-movie.com/ ☆☆☆☆☆ <あらすじ> ソウル郊外に住む先輩の家を訪ねたガミ。焼き肉をしながらおしゃべりし、一泊することに。別の日には、気楽な独身生活を謳歌する先輩のスヨンを訪ねる。夫のことを聴かれたガミは、夫が出張中であること、5年の結婚生活の間、夫と離れるのは今回が初めてだと語り……。 ホン・サンス監督常連のキム・ミニが、今作でも主演を務めています。 手土産を携え、先輩の家を訪ねるガミ(キム・ミニ)。先輩とのおしゃべりがメインの映画なのですが。 「愛する人とは何があっても一緒と夫が言うから」 何度も繰り返されるこのセリフ自体が、どんどんと疑わしいものに思えてきます。 (画像は映画.comより) それが「愛」だと信じたいだけなのでは……。 ガミ自身が、その言葉を信じていないのでは……。 「わたしたち、そんなに親しかったっけ?」 なんて、とつぜんの訪問に本音をこぼす先輩もいるくらい。 タイトルになっている「逃げた女」とは、主人公であるガミのことだと思われますが、ガミは特に用事もないのに、フラフラと先輩の家を訪ね歩いているだけ。そのひょうひょうとした存在感が、キム・ミニの特徴といえば特徴なのですけど、話が進むにつれ、不安を感じさせるのです。 (画像は映画.comより) これまでのホン監督作品は、ダメンズなこじらせ中年男が主人公なことが多かったんですよね。しかも、職業は「映画監督」。ホン監督自身を反映させたのであろうキャラクターが、女性たちに小突き回される姿に、ほんのりと笑いを誘われたものでした。 ですが、「逃げた女」は、ほぼ女性しか登場せず、えんえんとおしゃべりしているだけの会話劇です。女性のおしゃべりって、話題があっちにいったり、こっちにいったりすると言われますが、ホントにそんな感じです。 そこへ、「闖入者」としてやって

映画「夏時間」#716

なつかしい匂いのする映画。それがユン・ダンビ監督の長編デビュー作「夏時間」でした。 夏休みのあいだ、祖父の家で過ごすことになった、姉と弟の目線で描かれる“日常”の風景。大きな事件が起きるわけでもなく、魔法使いや死神が登場するわけでもない。静かに、静かに、大人への不信と不満が、じゅくじゅくとつのっていって……。 爆発した瞬間、泣いちゃった。 ☆☆☆☆☆ 「夏時間」 http://www.pan-dora.co.jp/natsujikan/ ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 父親が事業に失敗したため、祖父の家に引っ越して来たオクジュとドンジュの姉弟。離婚寸前の叔母までやって来て、3世代が一緒に暮らすことに。具合の悪い祖父、偽物のスニーカーを売る父、自分たちを捨てた母に会いに行く弟。オクジュのイライラはつのっていき……。 これが長編デビュー作となるユン・ダンビ監督は、1990年生まれの弱冠31歳。近年、韓国映画では女性の映画監督デビューが続いていて、また新たな☆がやってきたなーと感じます。 この映画は第24回釜山国際映画祭で、市民批評家賞など4部門を受賞。ノッテルダム国際映画賞でもグランプリに輝きました。監督の「小津安二郎ファン」という言葉は、カメラワークからも感じられます。 映画は、半地下のアパートから引っ越しをするシーンから始まります。半地下の部屋に別れを告げ、階段を上るオクジュ。 (画像は映画.comより) そして着いたのは、古いけど、広いお庭のある大きな家です。家庭菜園には、とうがらしやトマトが植わっていて、ぶどうまである。そこに次々と転がり込んでくる家族たち。 (画像は映画.comより) めちゃくちゃ平和な風景だけど、これって……「パラサイト 半地下の家族」では!? (画像は映画.comより) 実は最初のシナリオは、「パラサイト」のようなブラックコメディ風だったのだそう。スタッフの意見も聞いて練り直し、そして舞台となった家と出合ってから、さらに書き直して完成させたとのこと。 この映画は子役ふたりの演技もすばらしいのですけれど、主役はおじいちゃんの“家”だといえます。 仁川にある、実際に老夫婦が住んでいる“家”を借りて、撮影。古びた手すりや、無造作に置かれたモップなど、生活感があふれる“家”自体に、「ホンモノ感」がとても伝わってきます。 (画像は映画.comより) 父と、

ドラマ「SKYキャッスル~上流階級の妻たち~」#715

「子どもたちに尊敬されないパパのほうこそ失敗作じゃない!」 「あなたが言う幸せって何?」 「そんなに医学部っていうんなら、おばあちゃんがいけばいいじゃん」 超加熱した韓国の受験戦争をベースに、“我が子のために”必死になる母の闘いを描いたドラマ「SKYキャッスル~上流階級の妻たち~」は、名言の宝庫でした。 ☆☆☆☆☆ ドラマ「SKYキャッスル~上流階級の妻たち~」Netflixで配信中 https://www.netflix.com/title/81030062 ☆☆☆☆☆ 韓国の学校制度は日本と同じで、小・中・高の6・3・3年制です。大学への進学率は2006年で82.1%。同じ年の日本は52.3%で、世界的に見ても進学率が高い方だそう。 ただ、大学なら「どこでもOK」というわけではないのが現実。 以前、通っていた韓国語学校の先生に、韓国の就職事情について話を聞いたことがありました。 まずはSKY出身者の履歴書だけをチェック ↓ 合う人がいなければ、ソウル市内にある他の大学出身者をチェック ↓ それでも合う人がいなければ、地方の大学出身者をチェック という形でふるいに掛けられていくそうです。 ドラマのタイトルにもなっている「SKY」とは、韓国の名門大学の頭文字で、 S:ソウル大学(国立大学) K:高麗(コリョ)大学(私立大学) Y:延世(ヨンセ)大学(私立大学) のことです。SKYに入学できた=優秀な人なので、上のふるいに掛けられた時、地方出身者の出番なんてほとんどないとのこと……。 だからこそ、必死になってSKYへ、せめてソウルの大学へと、受験生たちは駆り立てられてしまう。「名門大学に入って大企業に入ることが成功」といわれる社会で、競争から落ちこぼれることは、人間失格並みのことなのです。 ファン・ジョンミン主演のドラマ「ハッシュ~沈黙注意報~」では、優秀なのに正社員採用されない、地方大学出身の女性の悲劇が。 ドラマ「ハッシュ~沈黙注意報~」#712   「SKYキャッスル」は、そんな「名門大学を卒業して、立派な仕事をしている男」の一家が住む高級住宅地のこと。三大大学を指す「SKY」と、「雲の上の人」の意味がありそうです。 夫の仕事は医師や法律家で、妻のステイタスを決めるのは、子どもの学歴。 第1話、見事ソウル大学の医学部に合格した息子の、「母」をねぎらうパーティーが

ドラマ「Mine」#714

「金持ち喧嘩せず」って、韓国ではいわないのかしら? 韓国ドラマばかり観ていると、そんな疑問を持ってしまう。それくらい、財閥一家のドロドロ抗争は、定番中の定番といえます。 現在、Netflixで配信されている「Mine」も、そんなドラマのひとつだと思っていたのに。対決から、自分自身を取り戻す闘いへと変化していく展開に、夢中になりました。 ☆☆☆☆☆ ドラマ「Mine」Netflixで配信中 https://www.netflix.com/title/81403973 ☆☆☆☆☆ こうして毎日、ドラマや映画や本のことを書いていますが、基本的に「全部終わってから」紹介することにしていました。 でも、「Mine」は全16話がまだ終わっていません。今日26日に15話、明日27日に最終話が配信される予定なんです。 なぜ、先に書こうとしているのか。 ドラマの展開が胸熱すぎなんです!!! だから最終話の配信に合わせて書いてみようかと思いました。 第1話を観た段階では、イギリスの貴族の生活を描いた「ダウントン・アビー」のようなお話なのかなと予想していました。もちろん、韓国ドラマ風味たっぷりで、「人生の喜怒哀楽って、身分の差に関係なく降りかかってくるのよねー」なのかなと。 序盤は、よくある財閥の後継者を巡るドロドロの争いです。 ボンクラの長男と、超有能だけど秘密を隠している嫁(キム・ソヒョン)。 有能だけどヤバい趣味を持つ次男と、元女優の嫁(イ・ボヨン)。 美しい笑顔の裏に秘めたバチバチ感にちょっと震えるのですが、この一家のもとに、家庭教師(オク・ジャヨン)がやって来ます。 さあ、いよいよ試合が始まる!! 「SKYキャッスル~上流階級の妻たち~」で、上流階級の家庭を破壊しまくったキム・ソヒョンが、家庭教師に振り回される役とは、なんたる皮肉。 そしてもうひとつ、皮肉なことがあります。 財閥家の母、長男の嫁、次男の嫁は、それぞれ「自分が産んでいない子ども」を育てているんです。すべて、男たちのエゴのせい。 闘いの末、女たちは決心します。 共闘することを。 ドラマを制作しているtvNのサイトに、「Mineとは?」という文章があります。 余裕があり、幸せな人生を生きていたふたりの女性のもとに、 見慣れない女が訪ねてくる。 その日以後、 わたしのものだと信じたことが 一つずつ崩れていく。 (中略)

ドラマ「ロースクール」#713

「ルールは、頭のいい奴に都合のいいように作られてるってことだっ!」 マンガ『ドラゴン桜』で、弁護士の桜木建二が檄を飛ばす時のセリフです。世の中が気に入らないなら、自分でルールを作る側に回るしかない。 そう思ったのかどうかは知らないけれど、ドラマ「ロースクール」でルールを作る側の人・行使する側の人たちは、ホントーーーに、自分の都合のいいように法を解釈していました。 その姿、アッパレと言いたくなるほど。 憑依型俳優キム・ミョンミン主演のドラマで、若手俳優たちがのびのびと演技している、というか、しごかれています。現在、Netflixで配信中です。 ☆☆☆☆☆ ドラマ「ロースクール」Netflixで配信中 https://www.netflix.com/title/81413647 ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 韓国一の名門・韓国大学のロースクールで、教授が殺害されるという事件が発生。検事出身で、現在は刑法教授のヤン・ジョンフンが逮捕されてしまう。「ヤンクラテス」とあだ名されるほどのスパルタで知られるジョンフンは、自身の事件をも教材にしようとするが……。 2004年から放送されていたJ・J・エイブラムス監督のドラマ「LOST」って、ご存じでしょうか。無人島に不時着した乗客の、過去や秘密が徐々に明らかになっていく、というストーリーで、日本でも大人気になりましたよね。 当時のキャストがインタビューで、「来週の脚本を受け取った時、“オレ、まだ生きてるかなー”って、まず確認してたよ。笑」なんてことを語っていました。 ドラマ「ロースクール」でいうと、「来週は、わたしが“犯人”だー」なんて言っていたんじゃないかと思うくらい、殺人事件の容疑者が次々に変わっていくんです。 そして回を追うごとに、学生と教授、学生同士の関係、過去、秘密が明らかになっていきます。 犯人は、いったい誰なのか。なんのために殺したのか。 推理ドラマをベースに、突きつけられるのは、法律における「正義」です。 落第スレスレの落ちこぼれ学生もいれば、優秀なんだけどコミュニケーションに問題のある学生もいる。ピカイチの頭脳を持っているけど、倫理観がなかったり、必死さのあまり一線を越えてしまったり。 司法試験に挑戦する学生たちの、厳しい現実。こんな苦労をして「法律の専門家」になった後、どんな道をいくのでしょう。 現役のプロである検事

ドラマ「ハッシュ~沈黙注意報~」#712

「ペンは剣よりも強し」というけれど、現実は「ご飯はペンより強し」なのではないでしょうか。 食べていくために、ガマンしたり、見逃したり。言いたいことがあっても、黙らざるを得ないこともある。 でも、そんな誇りのない仕事に未来はあるだろうか? 8年ぶりにテレビドラマに復帰したファン・ジョンミンを拝みたくて、現在、Amazonプライムで配信されている「ハッシュ~沈黙注意報~」をクリックしました。 ですが……。 序盤に描かれる「若者の現在」が、あまりにもあまりにもな状況で、涙なしには観られませんでした。 ☆☆☆☆☆ ドラマ「ハッシュ~沈黙注意報~」Amazonプライムで配信中 https://amzn.to/3xLfyfu ☆☆☆☆☆ ドラマの舞台は新聞社です。ある事件をきっかけに、情熱を失い、記事を書かなくなったベテラン記者ハン・ジュンヒョクを演じる、ファン・ジョンミン。 愛嬌と泥臭さを兼ね備えた人物を演じることが多い彼が、今回は心の傷を抱えながら新人記者の教育担当となるところから始まります。 そのインターン記者に選ばれたイ・ジスは、少女時代のユナが演じています。 ふてぶてしく、ジュンヒョクをにらみつけるジス。意外なつながりが明らかになって……と話が展開していきます。 ある日、同期で入社したインターンのひとりが、オフィスから飛び降りて自殺。新聞社本体にも、そこで働く人々にも衝撃が走ります。 ところが。 「コピペ」でPVを稼ぐ部署であるデジタルニュース部は、同僚の死をも、お金稼ぎのネタとしてしまうんです。 なんてこったいな展開ですが、若者の就職難が続く韓国では、せっかく得たインターンの機会を手放すことができません。同時に、上層部の決定に憤りを感じるベテラン記者たちにも生活があり、それぞれに家庭の事情を抱えています。 こうやって、人は気概を失い、あきらめ、沈黙してしまうのか。 超学歴社会として知られる韓国社会は、「名門大学に入って、大企業に入ることが成功」と教え込まれるそうです。教育ママと、勉強に追い詰められる子どもたちを描いているのが、Netflixで配信されている「SKYキャッスル ~​上流階級の妻たち~」です。 ☆☆☆☆☆ ドラマSKYキャッスル ~​上流階級の妻たち~ Netflixで配信中 https://www.netflix.com/title/81030062

『わけるとつなぐ これ以上シンプルにできない「論理思考」の講義』#711

「わかる」は「わける」と同源の言葉といわれています。 広辞苑によると…… わかる(分かる): ① きっぱりと離れる。別々になる。 ② 事の筋道がはっきりする。了解される。 ③ 明らかになる。判明する。 わける(分ける): ① まとまりに境界をくっきりとつけて、二つ以上にする。区別する。 「二つ以上のグループに仕分ける」ということは、「違いを明らかにする」ことでもあります。違いを明らかにして「わける」ことによって、「わかる=理解する」が生まれるのだといえます。 理解する意味の「わかる」を書く時、「分かる」の漢字を使う理由が、これでした。「分けて、分かる」んだなと、自分で納得できるから。 ちなみに、「解る」「判る」といった漢字を使う方もいますが、これらの漢字は漢字表にない音訓なので、新聞などでは使われない表記です。 こうした表記については『記者ハンドブック』が参考になりますよ。 ルールを決めて、“考える”に時間を振り分ける 『記者ハンドブック』 #486   で、「なんかよく分かんないわー」という時は、だいたい「わける」が足りていないのではないか。 たとえるなら、まな板の上に、ジャガイモとニンジンとタマネギとお肉とお鍋とスパイスを並べて、カレーを作ろうとしているような状態。これ、全部いっぺんにお鍋に放り込んでも、おいしいカレーにはならないんですよね。 まずは、それぞれの野菜を切らなければならない。 おまけに野菜ごとに、ちょうどいい大きさにしないといけない。 などなど、何かをしようとする時は、自分が「わかる」単位まで「わける」ことが大切。とはいえ、「わける」って、なかなかに一筋縄ではいきません。おまけに「わけた」ものを再度組み立て直して、形にしなければならないのですから。 深沢真太郎さんの『わけるとつなぐ これ以上シンプルにできない「論理思考」の講義』は、そんな「わける」の重要性をとても分かりやすく説いた本です。 ☆☆☆☆☆ 『わけるとつなぐ これ以上シンプルにできない「論理思考」の講義』 https://amzn.to/3wQVlEP ☆☆☆☆☆ 「論理思考」の講義というと、めっちゃお固い、文字が詰まった本をイメージしませんか? この本は、ちょっと違うんです。著者の深沢さんは、「ビジネス数学教育」の第一人者だそう。 え、すごい!!! 算数講座に困っているわたしの救世主!

『数字で話せ』#710

6月21日月曜日の朝、パソコンを起ち上げると、同僚からメッセージが届いていました。 「あさってのミーティングを次の日にしてほしい」 この人とのミーティングがあるのは22日の火曜日。「あさって」と呼んでいるのは、本人が日曜日に送っているからでしょうね。「次の日にして」ということは、水曜日を希望しているということだろうか。 「23日の水曜日でいいですか?」 と聞くと、 「あさってでお願いします」 との返事。この辺りでイラッとする人も多いのではないでしょうか。日付で聞いているんだから、日付で答えてくれよー!! 仕事をする上で、数字を使って伝えるのは基本スキルといえます。算数は苦手でも、これならできるはず。 「数字が苦手」という人は、女性に多い印象があるようですが、それは甘えなのかもしれません。数をこなして、型を身につければ、だんだん分かってきますよと言われたこともありました。 営業トークで、提案で、社内のミーティングで、「数字を使う」ことには多くのメリットがあると、斎藤広達さんも『数字で話せ』で語っています。 ☆☆☆☆☆ 『数字で話せ』 https://amzn.to/3gI7PJh ☆☆☆☆☆ 経営コンサルタントをされている斎藤さんは、もともと文系人間だったそう。外資系金融機関に在籍していたころは、数字にとても苦労したそうです。 そこで、数字に対する瞬発力を身につけようと考えたのだとか。スキルとして紹介されているのは、「@変換」「2ケタ×2ケタ暗算」など。 この本は、まさしく「数字取り扱い説明書」といえます。 「@変換」とは、大きな数字を「1人当たり」「1個当たり」に変換して、意味のある数字として捉え直すことです。 また、「1000×1000」でケタが1つ繰り上がるという、暗算をラクにしてくれるルール?もありました。 1000人×2000円=200万円 万×万=億 こんな感じで、数字の感覚を身につけていくのです。 「ざっくり暗算」を可能にする、逆数計算とゾロ目計算ができたらかっこいいだろうなー。これをやってみたいと後輩(社内の算数講座の講師)に言ったら、「割り算を使う計算が苦手なのに? まずは電卓で練習しましょう」と、キッパリ言われてしまった。 昨日ご紹介した芳沢光雄さんの『「%」が分からない大学生 日本の数学教育の致命的欠陥』は、教育上の問題を指摘した本でしたが、すで

『「%」が分からない大学生 日本の数学教育の致命的欠陥』#709

算数が苦手です。 子どものころに理解しようという努力をしなかったのもありますが、とにかく好きになれなかったんですよね。 あまりのできなさに呆れた上司から、「お前に理解しろとは言わない」と言われる始末。幸い、周りには必ず算数が得意な人がいて、計算をしなければならない時は、全部お任せでやり過ごしてきました。 なのに、今さら算数に苦しめられるなんて……。 わたしは勤め先の会社で社内研修を担当しています。昨年からのテーマは「数字力の強化」。一番やりたくないことに手を付けなければならなくなった悲劇よ。チョコが手放せない。 元はといえば、原稿を読んでいて、「算数おかしくない?」ということが続いたからです。発狂したくなるほど愉快なグラフ、母数のそろっていない割合の計算などなど、算数が苦手なわたしが見ても、「これってやばいのでは」という状況でした。 わたし自身、計算はできないけど、「校正原稿を読んでいる時はおかしいことに気が付く」というポンコツなレベルなので、どこで気が付くんだろう、どこが分からないんだろうを探りつつ、昨年から何度かに分けて「数字を使わない算数講座」を実施してきました。 そして気付いたこと。 ・割合と平均(比も)の違いが分からない人が一定数いる ・割合の足し算(引き算も)が分からない人が一定数いる ・日本語と計算式の行き来ができない人が一定数いる たぶん、これらが一番大きなネックのようです。 わたしが算数を苦手と感じるようになったのは、中学1年生の時のこと。当時の数学の先生が苦手だったからです。続く2年生の時の先生も、ドラムのバチのような棒を振り回している先生だったため、勉強しようという努力をキッパリ止めました。 研修の講師をしてくれた後輩からは、「なんでこれを知らないんですかー!?」と何度も言われましたんですよね。だって、知らないことが多い・習ったのがはるか昔のこと過ぎて覚えていないせいだと思われます。言い訳です。 でも、大学を卒業して数年のメンバーたちが、これほど苦手だとは……。念のために付け加えておくと、みんなそれぞれすばらしい大学を卒業している人たちです。 小学生用の算数ドリルを買ってきて、分からない問題の型を探しつつ、どういう研修ができるだろうと調べていた時、桜美林大学で数学教育をされている芳沢光雄さんの『「%」が分からない大学生 日本の数学教育の致命的欠

『字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ』#708

字幕翻訳は「要約翻訳」だと語る、太田直子さん。映像翻訳は「1秒4文字」が絶対に厳守すべきルールなためです。 映画を観るなら字幕派で、実際に字幕翻訳もしていたわたしにとって、太田さんの『字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ』は、痛快愉快な一冊でした。 ☆☆☆☆☆ 『字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ』 https://amzn.to/3vOQ27L ☆☆☆☆☆ 著者の太田直子さんは、「ボディガード」や「コンタクト」など、多くのハリウッド映画を手掛けられている方です。 字幕翻訳の裏側を綴った本は他に、『字幕屋のニホンゴ渡世奮闘記』『字幕屋に「、」はない (字幕はウラがおもしろい)』があります。 太田さんがいかにして字幕翻訳家となったのかを綴った『字幕屋のニホンゴ渡世奮闘記』は、あまりコースが明確でない「プロの翻訳家」となるまでの道のりが見どころ。 字幕文化へのプライドを感じる『字幕屋のニホンゴ渡世奮闘記』 #82   『字幕屋に「、」はない (字幕はウラがおもしろい)』は、タイトルどおり字幕に「、」や「。」を使わないことなど、技術的な話というか、そこから生まれる苦労を綴った本。 映画を2倍3倍楽しむ裏技『字幕屋に「、」はない』 #81   そして『字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ』には、日本語に悩まされる字幕屋さんの苦労が綴られています。 日本語の文章で一番難しいのは、なんだと思いますか? 太田さんは、言葉の使い分けではないかと指摘。年齢、性別、敬語、立場の違いによるキャラクターは、一人称や語尾に反映されます。そのため、一本の映画の中で言葉が変化するのか、しないのかまで含めた選択をしなければならないのです。 めっちゃ大変な仕事ですね……。 日本で初めて映画に字幕がついたのは、1931年に上映された「モロッコ」という映画だったそう。工夫と試行錯誤を重ねた日本の字幕文化は、世界一クオリティが高いとのこと。 Netflixなどの配信サービスが増えたことで、英語圏でも字幕で映画を観るスタイルへの抵抗が薄れた、といわれています。ただ、量産されることで、質の担保が難しくなるのも事実。でも、字幕って職人仕事のイメージがあるから、ひとりで改善していくのは厳しいかもしれませんね。 韓国ドラマ「それでも僕らは走り続ける」の主人公オ・ミジュが、まさに字幕翻訳家の仕事をしていました

『ジェンダーで見るヒットドラマ 韓国、アメリカ、欧州、日本』#707

配信サービスが充実してきたおかげで、観たいドラマが増えました。といいつつ、韓国ドラマばかり観てしまうのですけれど。 治部れんげさんの『ジェンダーで見るヒットドラマ 韓国、アメリカ、欧州、日本』を読んで、久しぶりに他の国のドラマも観てみたくなりました。 韓国、アメリカ、カナダ、デンマーク、そして日本のドラマをジェンダー視点で読み解いた本です。 ☆☆☆☆☆ 『ジェンダーで見るヒットドラマ 韓国、アメリカ、欧州、日本』 https://amzn.to/2THEiXh ☆☆☆☆☆ 韓国ドラマから取り上げられているのは、 「愛の不時着」 、 「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」 、 「SKYキャッスル」 、 「椿の花咲く頃」 、「ミスティ」、「私の名前はキム・サムスン」です。 「私の名前はキム・サムスン」 だけちょっと古くて2005年のドラマ。それ以外は2018年から2020年に放送されたドラマです。 治部さんが初めて観た韓国ドラマは、ヒョンビンとハ・ジウォン主演の「シークレット・ガーデン」だったそう。 ☆☆☆☆☆ ドラマ「シークレット・ガーデン」 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ その後、ヒョンビンつながりで「愛の不時着」をおすすめされ、すっかりハマってしまったのだとか。出合いがこのパターンだと、ずいぶん甘ったるいイメージになっちゃうんじゃないかなーと思っておりました。 でも。 ジェンダーの視点で切り取ると、なるほど、こういうおもしろさもありましたね!と思うところがいっぱいでした。 特に「椿の花咲く頃」です。わたしにとっては、ミステリー部分が不完全燃焼だったのですが、たしかに「田舎町で偏見と戦うシングルマザーの物語」としてみると、魅力が120%増しに。もう一度見直したくなりました。 人は、誰かの奇跡になれるだろうか? ドラマ「椿の花咲く頃」 #381   30代の主人公の恋愛に口を出す。子どもの受験戦争に母の方が必死になる。韓国ドラマにとって家族との関係は切っても切れないものです。 一方でアメリカやカナダ、ヨーロッパのドラマが描くのは、個人主義と核家族の世界観。日本のドラマはその中間にあたるのではないか、と指摘されています。 各国のドラマを、社会事情と共に紹介しているので、「次に観たい」を探す格好のガイドブックだと思います。 日経BP社でエンタメ雑誌の記者をされていた治部さん