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ドラマ「Mine」#714


「金持ち喧嘩せず」って、韓国ではいわないのかしら?

韓国ドラマばかり観ていると、そんな疑問を持ってしまう。それくらい、財閥一家のドロドロ抗争は、定番中の定番といえます。

現在、Netflixで配信されている「Mine」も、そんなドラマのひとつだと思っていたのに。対決から、自分自身を取り戻す闘いへと変化していく展開に、夢中になりました。

☆☆☆☆☆

ドラマ「Mine」Netflixで配信中
https://www.netflix.com/title/81403973

☆☆☆☆☆


こうして毎日、ドラマや映画や本のことを書いていますが、基本的に「全部終わってから」紹介することにしていました。

でも、「Mine」は全16話がまだ終わっていません。今日26日に15話、明日27日に最終話が配信される予定なんです。

なぜ、先に書こうとしているのか。

ドラマの展開が胸熱すぎなんです!!!

だから最終話の配信に合わせて書いてみようかと思いました。

第1話を観た段階では、イギリスの貴族の生活を描いた「ダウントン・アビー」のようなお話なのかなと予想していました。もちろん、韓国ドラマ風味たっぷりで、「人生の喜怒哀楽って、身分の差に関係なく降りかかってくるのよねー」なのかなと。

序盤は、よくある財閥の後継者を巡るドロドロの争いです。

ボンクラの長男と、超有能だけど秘密を隠している嫁(キム・ソヒョン)。

有能だけどヤバい趣味を持つ次男と、元女優の嫁(イ・ボヨン)。

美しい笑顔の裏に秘めたバチバチ感にちょっと震えるのですが、この一家のもとに、家庭教師(オク・ジャヨン)がやって来ます。


さあ、いよいよ試合が始まる!!


「SKYキャッスル~上流階級の妻たち~」で、上流階級の家庭を破壊しまくったキム・ソヒョンが、家庭教師に振り回される役とは、なんたる皮肉。

そしてもうひとつ、皮肉なことがあります。

財閥家の母、長男の嫁、次男の嫁は、それぞれ「自分が産んでいない子ども」を育てているんです。すべて、男たちのエゴのせい。

闘いの末、女たちは決心します。

共闘することを。

ドラマを制作しているtvNのサイトに、「Mineとは?」という文章があります。

余裕があり、幸せな人生を生きていたふたりの女性のもとに、
見慣れない女が訪ねてくる。
その日以後、
わたしのものだと信じたことが
一つずつ崩れていく。
(中略)
自身のアイデンティティと価値を守るために、
誇りを持って前進する。
わたしのものだと信じていたことから勇敢に抜け出して、
本当のわたしを見つけ出す、強靭な女性たちのストーリー


「金持ち喧嘩せず」とは、「金持ちは利にさとく、けんかをすれば損をするので、人と争うことはしない」という意味だそう。ですが、「Mine」の一家では、生まれながらに豊かな暮らしをして、努力もせず、周囲の人間を道具として扱うお金持ちの姿が、かなり極端な形で示されます。

自分自身を取り戻そうと決意する、キム・ソヒョンの演技が一番のみどころです。

キム・ソヒョンは「がんばれ!クムスン」でも長男の嫁を演じていて、合理的でシビア、でも、前近代的な家事をしているクムスンを案じてくれた唯一の人でした。


「Mine」は、セットも衣装も超豪華です。ロケに使われているのは、江原道原州市にある美術館「Museum SAN」で、安藤忠雄が手掛けたものだそう。


おまけに「にわにはにわにわとりがいる」じゃなくて、お庭にクジャクがいるのです!

クジャクって、こんな声で鳴くんだ……という驚きが、米粒ほどにしからならない。

エルメスのお馬さんがちょこんと飾られていたり、BOTTEGA VENETA、ETROなど、ハイクラスなお洋服もたくさん登場したり、とにかく目の保養になります。衣装のブランドを調べた記事もありました。


尊厳を踏みにじられてきた女性たちによる闘いが、これからどうなるのか。残り2話がとても楽しみ。一気見必至です。ぜひ!


ドラマ情報「Mine」tvN 全16話(2021年)

演出:イ・ナジョン

脚本:ペク・ミギョン

出演:イ・ボヨン、キム・ソヒョン、オク・ジャヨン、イ・ヒョンウク、ハン・スヒョク、チョン・イソ、パク・ヒョックォン


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