「ケン・ローチとポン・ジュノの両方を観れば、テーマに関しては、僕はやっぱりケン・ローチのほうがいい。でももっとワイドスコープで観れば、たぶん、ポン・ジュノのほうがケン・ローチの何十倍か世界に届いている」 映画を届けることと、完成度やメッセージはトレードオフなのか? 『映画評論家への逆襲』で、映画監督の森達也さんが語る言葉には、興行的な成功と映画の社会的役割の狭間で悩む姿が垣間見えます。 (画像リンクです) このあたりの話題はもちろん、ポン・ジュノ監督の「パラサイト」はアカデミー賞をとるほどの傑作だったのか!?でした。 “無意識の悪意”が階級を分断する 映画「パラサイト 半地下の家族」 #171 ポン・ジュノ監督には格差に対する批判的精神がない、リアルな社会を描いているのはケン・ローチ監督では、という指摘です。たしかにケン・ローチ監督の映画は、めっちゃいい映画なんだけど、興行的にはしょっぱい状況なんですよね……。 人としての尊厳は守られるのか 映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」 #191 名匠が描きだすシステムへの怒り 映画「家族を想うとき」 #186 めっちゃいい映画を撮るんだけど、興行的に数字が厳しいのだろうなーと思う韓国の映画監督の筆頭が、イ・チャンドン監督です。失礼……なんだけど、とある韓国映画特集のムックにも、「イ・チャンドン」の名前は2回しか出てこない! 驚愕!!!!! まったくエンタテインメントじゃないせいか、日本ではあまり知られていないのですかね……。 イ・チャンドン監督は、社会の「名もなき人々」の痛みに寄り添い、韓国社会の変化をみつめてきた監督です。 ポン・ジュノ監督は1969年生まれで、イ・チャンドン監督は1954年生まれ。15歳の年の開きは大きく感じますが、ふたりとも学生時代に民主化闘争へと身を投じた世代で、その経験が作品作りにも反映されています。 もともと教師として教鞭をとりながら、小説家として活躍したイ・チャンドン監督。映画の脚本も手がけるようになり、ハン・ソッキュ主演の「グリーンフィッシュ」で監督デビュー。 2本目に撮った「ペパーミント・キャンディー」は、第53回カンヌ国際映画祭の監督週間部門に出品されました。 特徴的なのは、ある青年の20年間が、“後ろ向きに再生”されるという手法。 燃え殻さんの小説『ボクたちはみんな大人にな