「韓国の大統領って、退任後に行くところが決まってるよね……笑」
そんな冗談を耳にすることも多い時期。問題は、この「笑」の部分ですよね……。なんでこんなに懲りずにやらかしてしまうんだろう?と不思議に思います。
現大統領の人気は今年の5月9日まで。本日3月9日は、大統領選の投票日です。
韓国の政治ドラマは“忖度なし”の骨太な作品が多く、歴代大統領の中でもパク・チョンヒ大統領やチョン・ドファン大統領は、何度も映画に描かれています。
この時代、軍事的、政治的な事件が多かったせいでしょうね。
一方、チャン・ジン監督の「グッドモーニング・プレジデント」は、“人間”としての大統領に焦点を当てたヒューマンドラマです。
3人の大統領に仕えた青瓦台(大統領官邸)の料理人の視点で描かれる、大統領たちのあまりにも庶民的な姿。かなり笑えます。
☆☆☆☆☆
映画「グッドモーニング・プレジデント」
☆☆☆☆☆
最初に登場するのは、イ・スンジェハラボジが演じるキム大統領。退任まで半年を切り、ガツガツと手腕も発揮することもなくなってしまった、ある日。
ロトで244億ウォンが当たったーーーーー!!!!!
けど。
以前、当せんしたら「全額寄付する」と公約してしまっていたのでした。なんてこったいな事態に、大いに悩んでしまう。そりゃ、そうだわ。
そんなキム大統領の跡を継いで就任したのが、チャン・ドンゴン演じるチャ大統領。
(画像はKMDbより)
若いし、切れ者だし、おまけにイケメンというエリート政治家なのですが、国家的危機の時に恋に落ち、シングルファーザーでもある大統領も、大いに悩んでしまう。いや、それどころじゃないかもよ。
そして最後に登場するのが、コ・ドゥシム演じる、「初の女性大統領」という設定のハン大統領。
映画としては4年ぶりにスクリーンに復帰したチャン・ドンゴン押しな宣伝だったと記憶していますが、一番おもしろくて、ホロリとしたのは、この3番目の大統領でした。
ハン大統領と一緒に、青瓦台で暮らすことになり、ファースト・ジェントルマン扱いを受けるようになった夫。慣れない生活に、「ちょっとだけ……」と羽目をはずして、スキャンダルを起こしてしまう。
うもーー!!!となって離婚するしかないと、大いに悩むハン大統領。うん、分かる……。
だけど、イム・ハリョンの「憎めないおっちゃん」感は最高によくて、「他人」なら大好きだと思います。身内ならたしかにつらいな。
(画像はKMDbより)
悩める大統領の駆け込み寺になっているのが、厨房です。
シェフとおしゃべりすることで、自分にとって本当に大切にしたいものに気付く。
シェフがまた、ド天然な人。分かったような、分からないような、的外れなような、ど真ん中のストライクのような話をしてくれるんです。
作為的じゃない、本当に相手のことを思った言葉だからこそ、ちゃんと届くのでしょうね。
政治家である前に、大統領だってひとりの人間。
チャン監督はインタビューで「タブー視されてきた大統領という素材で、大衆娯楽映画を作ってみたかった」と語っています。「トンマッコルへようこそ」で朝鮮戦争を、皮肉を交えてユーモアたっぷりに描いた手腕は、今作でも健在。
重苦しくなりがちな政治劇が、ホワッと温もりのあるヒューマンドラマに仕上がっています。
それにしても。願わくば。
韓国の大統領たちはどうせモチーフにされるんだから、コメディになるような業績をつくってほしいな。退任後も、ぜひ。
映画「グッドモーニング・プレジデント」132分(2009年)
監督:チャン・ジン
脚本:チャン・ジン
出演:イ・スンジェ、チャン・ドンゴン、コ・ドゥシム、イム・ハリョン、ハン・チェヨン、パク・ヘイル、イ・ムンス、イ・ハヌイ、チャン・ヨンナム、リュ・スンヨン
コメント
コメントを投稿