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1月, 2020の投稿を表示しています

理想の上司とは『鬼平犯科帳』#205

今週はビジネスパーソンにおすすめの時代小説を紹介しています。 1月27日に発表された、 「理想の上司」アンケート によると、男性上司は内村光良さん、女性上司はアナウンサーの水卜麻美さんが1位とのこと。 (明治安田生命保険が実施。2020年春の新入社員が対象) まもなく社会人デビューをする人たちにとって“親しみやすさ”は大きなポイントのようですね。 斬り捨て御免の権限を持つ幕府の火付盗賊改方の長官・長谷川平蔵と聞くと、強面感満載ですが、ついでに漢字もいっぱいですが、わたしは理想の上司と言われると“鬼平”を思い浮かべるかなぁ。 ☆☆☆☆☆ 『鬼平犯科帳』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 名前こそ“鬼の平蔵”ですが、平蔵が鬼となるのは盗賊に対してだけ。部下や協力者たちからは心から信頼され、頼りにされています。それは平蔵が義理も人情もユーモアも心得た、懐の深い人だったからでしょう。 文春文庫の「決定版」はカバーデザインが一新されて、歌川広重の「名所江戸百景」になりました。紙の本で時代小説を読む人はある程度の年齢がいった人、という見立てなのか、文字も大きめです。笑 作者の池波正太郎さんは、もしもこの小説を映像化するなら、主人公は八代目松本幸四郎がいいと仰っていたそうです。希望は叶えられ、テレビドラマ化された時は八代目松本幸四郎が、役者交代の際は息子の中村吉右衛門が演じました。 落語家や歌舞伎俳優って名前が変わっていくのでややこしいですね。八代目松本幸四郎とは、初代松本白鸚のことで、松たか子のおじいさんにあたる人です。 (※画像はWikipediaより) 小説の話に戻ると、1作目が「オール讀物」1967年12月号に掲載され、その後、全部で135作におよぶ長期連載となりました。文庫本は24巻あります。「鬼平犯科帳」の名前をつけたのは、当時の担当編集者だった花田紀凱だそう。 人気連載となり、ドラマ化、アニメ化、マンガ化と、メディアは広がっていきましたが、池波さんは「原作のあるものだけ使ってOK」と強く主張していました。その点、原作を元に脚色を進めるアニメ番組などとは違うわけですが、やはり鬼平のイメージを守りたかったのかな。 鬼平自身は、恵まれた生い立ちではありません。妾腹の子で母親の顔も知らず、マイルドではないヤンキー時代もあったようです。そこから放火や強盗、賭博を取り締まる警察で

『言葉ダイエット』刊行記念 橋口幸生×田中泰延トークイベント #195

「僕からこの話をするとは思ってませんでした。“仮想通貨”についてです」 ホント、ま・さ・か!でした。 ついに橋口さんまでも仮想通貨の世界に足を踏み入れてしまった!? 2020年1月20日、おしゃれの街・代官山にある蔦屋書店にて、トークイベントが開催されました。橋口幸生×田中泰延というコピーライターおふたりによる“言葉”談義。 橋口さんの新著『言葉ダイエット』発売を記念したトークイベントは、予想通り、笑い笑い笑いの連続で、写真を撮るのを忘れました……。でも内容はバッチリなんとなくふんわりと覚えてます! というわけで、今日はトークイベントの様子をお伝えします。 目次: 『言葉ダイエット』とは……の前段 『言葉ダイエット』とは……の前に 『言葉ダイエット』とは……のプリクエル 『言葉ダイエット』とは、言葉をダイエットすること まとめ 『言葉ダイエット』とは……の前段 「今日は仮想通貨の話はいたしません。骨伝導の話もありません。言葉のダイエットについてお話しします」 客席からの期待と不安のまなざしを受けて、ひろのぶさんが厳かに宣言されました。そうです。今日のイベントのメインテーマ。一番大事なもの。これだけ覚えて帰ればいい。 橋口さんが2019年12月に上梓された『言葉ダイエット』です。 ☆☆☆☆☆ 『言葉ダイエット』 https://amzn.to/3fY5qtN ☆☆☆☆☆ 田中さんの本『読みたいことを、書けばいい。』は、15万部を超えるベストセラーになっています。 ☆☆☆☆☆ 『読みたいことを、書けばいい。』 https://amzn.to/34WnfmE ☆☆☆☆☆ わたしたちが毎日、書いたりしゃべったりして操っているつもりの“言葉”。そのプロであるコピーライターのおふたりです。さぞかしすんごいお話が聞けると期待が高まります。 最初の話題は、 「さえりさん」から返事が来ない件 についてでした。 「さえりさん」とは、作家の 夏生さえりさん のことです。 橋口さんとひろのぶさん、そしてさえりさんは、昨年実施されたスカパー!のコピー募集で審査員を務められているのです。 #スカパーコピー書いてみた 応募総1万超の中から、受賞コピーが決まりました!受賞者の皆さま、おめでとうございます。ツイートしていただいた全ての方、ありがとうございました!受賞コピーは、みんなで作ったスカ

人としての尊厳は守られるのか 映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」 #191

「ただいま電話が大変混みあっております。しばらく経ってからおかけ直しください……」 自動応答のアナウンスに、イライラしたことがある人は多いのではないでしょうか。 イギリス北東部の町・ニューカッスルで大工として働くダニエル・ブレイクもその一人。映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」の一幕です。 ケン・ローチ監督による、イギリスの緊縮財政政策への痛烈な批判が込められたこの映画は、第69回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞。制度に振り回され、貧困に苦しみながらも“助け合う”お隣さんと、杓子定規な対応で弱者を追い込む公務員との対比が描かれます。 ☆☆☆☆☆ 映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」 DVD (画像リンクです) Amazonプライム配信 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 心臓を患い、医師から働くことを禁じられたダニエル。国からの援助を受け取るために審査を受けるが、不合格に。仕方なく向かった職業安定所で、担当者ともめているケイティ一家と出会う。複雑な支援制度と申し込み方法にイラついていたダニエルは、ケイティと2人の子どものために家を補修するなどの援助を申し出て、徐々に親しくなっていく。 映画は真っ暗な画面の中、男女が会話するところから始まります。 女:帽子をかぶるぐらい腕は上げられますか? 男:手足は悪くない。カルテを読めよ、悪いのは心臓だ。 女:電話のボタンなどは押せますか? 男:悪いのは指じゃない。心臓だって言ってるだろう。 女:簡単な事柄を人に伝えられないことは? 男:心臓が悪いのに伝わらない。 聞いてるだけでイライラする!!! 徐々に分かってきたのは、男性(ダニエル)は、心臓病のために「働く意志はあるけど、働けない」状態にあること。日本でいう失業手当のようなものを給付してもらうために審査を受けているのです。 ところが、女性(審査担当の職員)のチェック項目にあるのは上記にあるような項目だけ。「心臓が悪くてドクターストップ」という項目がないために、ダニエルは「働く意志はあるのに、働こうとしない」人になってしまうわけです。 態度が悪いと審査結果に影響しますよ、という脅しにも屈せず、「悪いのは心臓だ!」を訴え続けるダニエル。 当たり前やん!!! 結果は、あえなく「就労が可能で、手当は中止」。ありえねー!と思ってしまうのですが、この通知が、どんどんとダニエ

名匠が描きだすシステムへの怒り 映画「家族を想うとき」 #186

「大黒柱」とは、家や国の中心となって支える人を指す言葉です。「他の柱よりも太くて家を支えている柱」が語源となっていることから、一家の経済的な支柱という意味合いが強いように思います。 経済的に家族を養う。 歴史的に「大黒柱」は“父”が背負うことが多かったわけですが、その重荷はいかばかりか。そんな風に感じてしまった映画がケン・ローチ監督の「家族を想うとき」でした。 ☆☆☆☆☆ 映画「家族を想うとき」 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ <あらすじ> イギリスのニューカッスルに暮らすターナー一家。マイホーム購入のため、父のリッキーはフランチャイズの宅配ドライバーを始めることに。妻のアビーもパートタイムの介護福祉士として時間外まで働いており、高校生のセブと小学生のライザは寂しさを募らせていく。ある日、セブの学校から呼び出しを受けるがリッキーは仕事を抜けることができず……。 マンチェスター出身のリッキーは、「マンチェスター・ユナイテッド」のファン。香川真司が所属していたチームですね。ところが配達先のおっちゃんのシャツについていたワッペンは「マンチェスター・シティ」のもの。 名試合について冗談を飛ばしているうちに熱くなってしまう様子は、イギリスだなーという感じがします。 インターネットが発達して、暮らすには格段に便利になりましたが、最終的にわたしたちの手元に届けてくれる窓口はやはり、人。 でも、ここで描かれているような人間的なやり取りは、「安い賃金で、長時間」働かせることで利益を生もうとしている企業にとってムダでしかありません。 小さな黒い機械に支配されるようになったリッキーの日常はつらいしかなく、日本でも問題になっている労働問題、コンビニの24時間営業や「ウーバーイーツ」配達員の労働環境などを彷彿させました。 ターナー一家は、心から家族のことを気遣い、幸せになりたいと願う人たちです。 家族を路頭に迷わせるわけにはいかないと、大黒柱である父のリッキーは一所懸命に働く。なのに家族の間には、どんどんとイライラが溜まり、ケンカが絶えなくなり、ギクシャクしてしまうのです。 なに、この矛盾? 「勝つも負けるも自分次第」と説明されるフランチャイズ契約の実態は恐ろしいものです。あれをしたからペナルティ、これをしなかったから罰金、機械を壊したから弁償…。そもそも1日14時間、週に6日という働き方

特大級のブラックコメディ 映画「エクストリーム・ジョブ」 #185

長期休暇明けの一番つらい一週間を終えた方、お疲れさまでした! とにかく朝起きただけで「エライじゃん、わたし!」と、とにかく自分を褒めましょう。 これから一年、また忙しい日々が始まりますよね。本を読む時間も、映画を観る時間も、ジムに行く時間もない! それくらい忙しく仕事に打ち込んでいるのに実績は……と考えると、思わず落ち込んでしまいます。 そんな時は、ぜひコメディを!!! 韓国で2019年の観客動員数1位、歴代観客動員数2位、歴代興行収入1位という大記録を達成した映画「エクストリーム・ジョブ」 には、何もかも忘れさせてくれる特大の笑いがあります! なにより必死に仕事してるのに、結果が裏目裏目に出る様子が、自分を見ているようでした。 ☆☆☆☆☆ 映画「エクストリーム・ジョブ」 https://amzn.to/2RTvhty ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 一所懸命がんばっているのに結果が出ず、解散の危機にあるダメダメ麻薬捜査班。大型シンジケートの張り込みのために、フライドチキン店を買収したところ、その店が大人気に! 犯人を挙げるのか、チキンを揚げるのか。お店の仕事で疲れ切った捜査班の前に、ついに麻薬取引の動きが見えて……。 2019年の大ヒット映画「翔んで埼玉」はバカっぽさが最高に笑えましたが、それを超えるおもしろさだな、と思いました。ハリウッドでのリメイクも決定したそうです。 とはいえ、脚本を担当したムン・チュンイルは、ウディ・アレン監督「おいしい生活」にインスピレーションを得たそうなので逆輸入ということになりますね。 「エクストリーム・ジョブ」は、<3人の男たちの青春を描いた映画「二十歳」で注目された“イ・ビョンホン”が監督>と聞いて、 「“イ・ビョンホン”って、あの“イ・ビョンホン”!? 映画監督もしてたの!?」 と驚きました。だって「韓流四天王」と呼ばれたイケメン実力派俳優ですよ。 「グッド・バッド・ウィアード」 では陰のある(でもマヌケな)殺し屋役を。 (画像はKMDbより) 「マグニフィセント・セブン」などでハリウッドにも進出しています。 (画像はKMDbより) そんな彼が映画も撮っていたなんて!!! チェック不足でした!!!と思ったら、同姓同名の別人でした……。 本物の監督“イ・ビョンホン”は、こちらの方。たぶん、日本でインタビューなんて受けたら言われ続けるでし

わたしを悩ませる“センス”の正体 『センスは知識からはじまる』 #183

「考える→アイデアを出す→説明する→書いてみる」までいくと、自ずと感じるのが「センス」の有無です。こうして毎日noteを更新しながら、心から実感するのです。 わたし、ホントにセンスないわー。才能ないわー。 こんなにもわたしを悩ませる「センス」とは何なのか。 「くまモン」のアートディレクターである水野学さんは、著書『センスは知識からはじまる』の中で、「センスは生まれついたものではなく、あらゆる分野の知識を蓄積すること」と語っています。 ☆☆☆☆☆ 『センスは知識からはじまる』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 本で語られている「センス」とは。 “「センスのよさ」とは、数値化できない、事象のよし悪しを判断し、最適化する能力” 「センス」が「能力」ということは、誰でも磨いて伸ばすことができるはずです。では、どうするか。水野さんは「普通」を知ることが大切としています。 「普通」を知るためには、「いいもの」と「悪いもの」の両方を知る必要がありますよね。その真ん中が分かることが第一段階。 普通を知り、その能力を向上させるためには、観察と几帳面さを維持することが大事とのことです。 効率よく知識を集め、センスをよくしたいなら、これ。 王道を知る ↓ いま流行しているものを知る ↓ 「共通項」や「一定のルール」を探る なぜこれだけ知識にこだわるのかというと、知識があれば、より自由に発想できるからです。 知識を「紙」、センスを「絵」にたとえ、知識があるということはそれだけ広い大きな「紙」を使える。だから自由な「絵」を描くことができるのだとしています。これはデザイン業界だけでなく、どんな仕事にも通じる考え方だと思います。 センスとは「知識の集積」だから。 本でこのくだりを読んでいて「あれ?」と思いました。ジェームス W.ヤングの『アイデアのつくり方』には、 アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせである。組み合わせるための情報をたくさん集めよ。 とあった! はい、というわけで、「考える→アイデアを出す→説明する→書いてみる→センスを磨く」は、見事に円環の中にあることが分かりました。笑 「センスがないから分からない、できない」は、言い訳でしかない。分からないのは、センスを磨く努力をしていないから、と水野さんは言っています。キビシー。 でも、これが真実で現実です。 企画の仕事をしている、仕事力

はじめに読むべき決定版 『言葉ダイエット』 #182

「考える→アイデアを出す→説明する」の本に続いて、いよいよ「書き方」です。近年、文章指南の本がかなりの数、出版されています。以前は文法に着目した「文章読本」が多かったように思いますが、最近では「読みやすさ」「伝わりやすさ」を重視したものが増えたなと感じます。それだけ書くことに悩む人が多いのでしょう。 「書き方」指南の本が増えたことで、混同されているのでは?と感じる言葉が、「文章」と「文書」です。 文:一組の主語と述語とを含む、言語表現の一単位。 文章:文よりも大きい言語単位で、通常は複数の文から構成される。 文書:文字や記号を用いて、人の意思を書き表したもの。 『広辞苑』より 「文」とは、マル(句点)を打って区切りをつけるまで、と考えると分かりやすいかもしれません。 「・・・・・。」←こういうのですね。 「文」を複数集めたものが「文章」、そして「文章」を集めて意思を表したものが「文書」です。 なので、「バズる文章」という言葉には、わたしは違和感を持ちます。バズっているツイートなどをみると、誤字や文法的な間違いがあったりしますが、「内容=文書」を見て、おもしろいと思うから「いいね」を押すのでは?と思うからです。 文章力 <<< ネタ ではないか、と感じています。 「文書」としての記事やツイートを磨きたい!と考える方は、アイデアや企画の本を読むことをおすすめします。そうではなく、普段書いている「文章」をなんとかしたい!という方には、橋口幸生さんの『言葉ダイエット メール、企画書、就職活動が変わる最強の文章術』がおすすめです。 ☆☆☆☆☆ 『言葉ダイエット』 https://amzn.to/3fY5qtN ☆☆☆☆☆ 西島さん、中村さんと同じく、橋口さんもコピーライターでいらっしゃいます。やっぱりコピーライターという人々は、「考える」速度も深度も違うんですよ。知らんけど。考えてみたら、ジェームス W.ヤングから始まって博・電・博・電になってた。偶然です。 この本のいいところは、文章を書くにあたって最低限必要なことがとてもコンパクトにまとまっていることです。ここに書かれていることをきちんと守っていけば、逆に、分かりにくい文章は書けなくなるはず、です。 “<言葉ダイエットの極意> ・一文一意 ・一文は60文字以内 ・抽象論禁止 ・繰り返し禁止 ・ムダな敬語禁止 ・表記統一 ・