「僕からこの話をするとは思ってませんでした。“仮想通貨”についてです」
ホント、ま・さ・か!でした。
ついに橋口さんまでも仮想通貨の世界に足を踏み入れてしまった!?
2020年1月20日、おしゃれの街・代官山にある蔦屋書店にて、トークイベントが開催されました。橋口幸生×田中泰延というコピーライターおふたりによる“言葉”談義。
橋口さんの新著『言葉ダイエット』発売を記念したトークイベントは、予想通り、笑い笑い笑いの連続で、写真を撮るのを忘れました……。でも内容はバッチリなんとなくふんわりと覚えてます!
というわけで、今日はトークイベントの様子をお伝えします。
『言葉ダイエット』とは……の前段
「今日は仮想通貨の話はいたしません。骨伝導の話もありません。言葉のダイエットについてお話しします」
客席からの期待と不安のまなざしを受けて、ひろのぶさんが厳かに宣言されました。そうです。今日のイベントのメインテーマ。一番大事なもの。これだけ覚えて帰ればいい。
橋口さんが2019年12月に上梓された『言葉ダイエット』です。
☆☆☆☆☆
『言葉ダイエット』
https://amzn.to/3fY5qtN
☆☆☆☆☆
田中さんの本『読みたいことを、書けばいい。』は、15万部を超えるベストセラーになっています。
☆☆☆☆☆
『読みたいことを、書けばいい。』
https://amzn.to/34WnfmE
☆☆☆☆☆
わたしたちが毎日、書いたりしゃべったりして操っているつもりの“言葉”。そのプロであるコピーライターのおふたりです。さぞかしすんごいお話が聞けると期待が高まります。
最初の話題は、「さえりさん」から返事が来ない件についてでした。
「さえりさん」とは、作家の夏生さえりさんのことです。
橋口さんとひろのぶさん、そしてさえりさんは、昨年実施されたスカパー!のコピー募集で審査員を務められているのです。
#スカパーコピー書いてみた 応募総1万超の中から、受賞コピーが決まりました!受賞者の皆さま、おめでとうございます。ツイートしていただいた全ての方、ありがとうございました!受賞コピーは、みんなで作ったスカパーの広告として、東京大阪の主要駅でポスターになります! pic.twitter.com/DkLB4TRdnd
— 橋口幸生 (@yukio8494) February 2, 2019
(なぜか)審査員を務めさせていただいた、スカパーコピー大賞が決まりました〜!👏 SNSで募集したらなんと応募は1万件。大賞は、主要駅で大きな広告になるらしい。すごい夢のある企画だった。大賞のコピー、本当に超良かったです。#スカパーコピー書いてみた https://t.co/q3Ae0kw77t
— さえりさん (@N908Sa) January 31, 2019
1万通を超えるご応募、ありがとうございました。大賞と各賞が決定しました!みなさま、おめでとうございます!そして、ありがとうございます。ぼくもがんばろう、そう思いました!
— 田中泰延 (@hironobutnk) January 31, 2019
スカコピ!〜スカパーコピー書いてみた〜|衛星放送のスカパー! https://t.co/YEPY2g9GFQ #スカパーコピー書いてみた
実は橋口さん、ずっとスカパー!のお仕事を担当されているのだとか。ここ数年は俳優の堺雅人さんをメインにした男性的なCMでしたが、憧れと共感を呼べる夫婦像を形にしたCMも制作されています。
そんな「家を楽しくするのはテレビだ」をテーマにしたコピーを募集し、1万通以上の応募が集まったのだそうです。ちょうど一年前の出来事ですね。
熱いコピー、泣けるコピーを一緒に選んだ仲なのに。今日のイベントに誘ったら、返事が来ない。 これはおふたりにとって重大な事件です。
こんな文章をダイエットしていきましょう。
『言葉ダイエット』とは……の前に
ご存じの方も多いと思いますが、橋口さんは現役の電通マンでコピーライター、ひろのぶさんは元電通のコピーライターで青年失業家です。巨大なマンモス超優良大手企業に入社された後、初々しくてピチピチだったおふたりは「クリエイティブ局」に配属され、コピーの書き方を仕込まれたわけですが。
コピーを書くより、もっと機会の多い「仕事の文書」の書き方を教えてくれよ!!!
そんな心の叫びは華麗にスルーされました。わたし自身、会社員になったころは「現場で学べ、背中を見ろ、先輩のやり方を盗んで覚えろ」とよく言われました。
盗みは犯罪です! ダメ! 絶対!
あ、間違えた。だって背中を見ろと言われても、「いい感じに肉が付いてますね」しか分からない。できる人と一緒に仕事をする機会がないと、永遠に書けるようにはならないんですよね。「ほーらっ」って海に放り込んで、「いつか泳げるようになるよ♡」って言うようなもんです、現場で学ぶって。
特に、橋口さんが入社された2002年頃は「ソリューション」という言葉が流行っていたそうです。
こんなワードがアクティブにカム・アンド・ゴーしてしまうわけですから、橋口さんも「これが社会ってものなのか」とシンキングしちゃったわけです。ルー大柴か。
これはあれですね。カルガモなど鴨の仲間が、孵化してすぐに「動くもの」や「声を出すもの」を親だと認識してしまう「刷り込み」。
おとなしく親の後ろを歩いていた橋口カルガモさんは数年後、旭化成の「昨日まで世界になかったものを。」というコピーを手がけられた磯島拓矢さんと一緒に仕事をすることになります。そこでオープン・アイズしちゃったわけです。
普通に、読みやすく書いてもいいんだ!
実際、磯島さんは「お母さんが読んでも分かる文章」を書いてらしたそうで、この発見が今回の本『言葉ダイエット』につながります。10年以上、「ソリューションの世界」に首までどっぷり浸かってきた、橋口さんの集大成。
もう一度、出しておきましょう。こちらの本です。
☆☆☆☆☆
『言葉ダイエット』
https://amzn.to/3fY5qtN
☆☆☆☆☆
2回出しましたから、2冊買いましたよね? ポチるの忘れました? 安心してください。あと3回出てきます。
『言葉ダイエット』とは……のプリクエル
コピーライターの研修で最初に教わることは、「広告を見たくて見る人はいない」だそうです。なのに、世の中には「見てもらう・読んでもらう」ことを前提にしたものが多すぎる!
たとえば渋谷駅。ご存じですか? 地下鉄の駅が地下になったんです! ええ、当たり前のことが当たり前になったおかげで、めちゃくちゃダンジョン化しました。だって、これですよ。
トイレに行きたい時は、どっちに行けばいいの?
また、軽減税率の説明はこんな感じ。
(画像はSankeiBizより)
これは24時間365日消費税について考えている人にとっては画期的な分類なのかもしれません。
橋口「そんな人、フツーいませんよね?」
田中「アグリーだね」
人は読まない。
まずはこの前提に立たなければいけません、と橋口さんは力説されていました。
実は、これを逆手にとることもできるのです。たとえば橋口さんの本の帯には「田中泰延氏 対談収録」と書かれています。これを見て、「田中泰延さんが書かれた本だ!」と思った方もいたそう。
これは、ひろのぶさんの著書『読みたいことを、書けばいい。』の手法を転用しているんです。
この帯を見て、「糸井重里さんが書いた本だ!」と思った方がいたのだとか。この橋口マジックのおかげで、本屋さんでは並べて置かれるようになっています。
実際、ひろのぶさんの『読みたいことを、書けばいい。』と、橋口さんの『言葉ダイエット』は、相互補完の関係になっているんですよね。それぞれのバリューがシナジーを生んでエンパワーしてくれる世界。ハラショー!
人は読まない。
この前提に立たなければ言葉のダイエットは成功しないのです。コンビニで買ったおやつを食べながらnoteを書いているわたしも、ダイエットに成功しない気がしてきました。だって「今のあなたに食べてほしい」って言われちゃったんだもん。シュークリームをガマンした自分をほめてあげたい。
現在、午前2時をまわりました。もうすぐ3000字になるのに、まだ本題にたどり着かない。この記事自体にダイエットが必要な気がしてきました。
ダイエット、成功させたいものですね。ニッコリ
『言葉ダイエット』とは、言葉をダイエットすること
お待たせしました。ようやく本題です。橋口さんの本『言葉ダイエット』とは、どんな内容なのか。
☆☆☆☆☆
『言葉ダイエット』
https://amzn.to/3fY5qtN
☆☆☆☆☆
「買って、読んでください」
としてもいいじゃないですか。イベントの会場は本屋さんだし、目の前に本、あるんだし。ネットでこの記事を読んでいる人も、上のリンクをクリックすれば、すぐにポチれます。わたしには一銭も入らないのでご安心を。
なのに、やさしさでできている橋口さんとひろのぶさんは、きっちり説明してくださるんですよ。ちょっと言葉を失うレベルの悪い例を挙げつつ、ダイエットの効用を説く。
これは……洗脳です。おふたりによる洗脳タイム。でも、この場合は洗脳された方がいいと思います!
メールの文章だけでなく、件名やファイル名など、至る所に悪文はあります。簡潔さが求められるビジネス文書が悪文化してしまう理由について、橋口さんはこんな風に語っています。
橋口「マジメで、気遣いができて、配慮が行き届いた人ほど、悪文を書きやすい気がします」
田中「アグリーだね」
橋口さんがこれまで出会った中で、一番の「クソファイル名」がこちらです。
こんなもん送ってくんなよ! 開く前からよくないことが起きるって分かっちゃうよ!! こんな言葉が飛び交う世界でダイエットにオープン・アイズしちゃった橋口さんは、ときどき「良いものをダメにする遊び」をするそうです。
コピーライター・仲畑貴志さんの代表作「TOTOウォシュレット」の広告をご存じですか?
名作中の名作。発見があり、価値観の転換があり、言葉の遊びがある。これをダメにしてみると、こうなります。
橋口「これはメーカー側の意見の押し付けであり、説明しすぎですよね」
田中「アグリーだね」
企画会議で通ってしまうのは断然、ダサくてヘンに凝ったコピーの方。もっと読み手のことを考えよう。そうでないとデンジャラスでインテリジェントがナッシングに見えちゃう。
もし、あなたが本当に言葉をダイエットした方がいいかも、する、すれば、せよ、と思うならば。まずはこちらを意識してみましょう。
・( )や「・」で言葉をつなぐの禁止
・させていただきますなど、ムダな敬語禁止
・カタカナ語禁止
・修飾語を減らす
・話は具体的に
田中「つまり、田中泰延(松坂桃李)という書き方は止めた方がいいんだね。これからは“とおり”だけでいくわ」
橋口「アグリーです」
田中「カタカナ語やんか!」
橋口「意味を分かってないという悪い例をみせました」
カタカナ語は意味を分からないまま使っている人が多いのと、業界によって意味するところが違う場合があります。人によって解釈が違うような言葉を使うのは事故の元!
たとえば「crypto currency」って、なんのことか分かりますか?
「仮想通貨」のことなんですよ!!!
「仮想通貨」はバーチャルなマニーのことだと思っておりましたよ、わたくし。フリガナも振って欲しいの。さぁ、冒頭の文に戻ってみましょう。
「僕からこの話をするとは思ってませんでした。“仮想通貨”についてです」
橋口さんの“仮想通貨”必勝法や、ひろのぶさんの“仮想通貨”の裏技は、ここではとても書けない……。ので、本題に戻りますね。
仮想通貨とは、本来は「暗号化された通貨」のことなんです。橋口さん曰く、英語は本来の意味から逃げない言葉。でも、日本語だと。
なんていう、何も言ってないのに、何か言った気になる文章が作れてしまいます。だからダイエットが必要なんです。極意はこれ。
・( )や「・」で言葉をつなぐの禁止
・させていただきますなど、ムダな敬語禁止
・カタカナ語禁止
・修飾語を減らす
・話は具体的に
などなど、詳しくはこの本に書いています!(当たり前や)
☆☆☆☆☆
『言葉ダイエット』
https://amzn.to/3fY5qtN
☆☆☆☆☆
書いているとき、人は不安です。
バカだと思われるんじゃないか。無礼者と思われるんじゃないか。怒られるんじゃないか。
そんな恐怖を先回りして予防しようとすると、「ダイエットが必要な文章」ができあがっていくのです。パワーポイントで資料を作っているとき、文章をチェックしたくなったら、文字のサイズを確認しましょう。
でかくするのです!
もっと説明した方がいいような気がしてドンドン詰め込むと、どうしても文字のサイズが小さくなります。
でも、いらない。だって人は読まない。それよりもダイエットをして、シンプルに伝えよう。
「言葉の鎧」を脱ごう。
これが、橋口さんが本で伝えたかったことだそう。
橋口「仕事は競争かもしれないけど、戦争じゃない。だから鎧を脱いで身軽になった方がいいと思うんですよ」
田中「天才か!」
ここで、おふたりが絶賛されていたドラマをご紹介します。
忖度して、配慮して、保険をかけて、鎧を着て、言わなければいけないことが言えなくなった世界を描いたドラマ「チェルノブイリ」です。
まだ観てないよーという方は、予告編だけでもご覧ください。
1986年に発生した、チェルノブイリ原子力発電所の爆発事故の原因を調査することになった科学者が主人公のドラマです。人類が経験したことのない事故。「ご相談させてください」なんて言っている間に、バタバタと人が死んでいく。
「チェルノブイリ」は、言葉をめぐる物語なのです。
企画書をカタカナ語だらけにしたり、させていただいたりしていても誰かが死ぬことはありませんが、原発事故は違いますよね。
わたし、ダイエットしなきゃ!!!
言葉をダイエットする効果について、これ以上、分かりやすいドラマはないと思います。
まとめ
・( )や「・」で言葉をつなぐの禁止
・させていただきますなど、ムダな敬語禁止
・カタカナ語禁止
・修飾語を減らす
・話は具体的に
もっと詳しく知りたいよ!という方は、ぜひこちらの本を読んでみてください。わたしは新人にも配りまくっています。
☆☆☆☆☆
『言葉ダイエット』
https://amzn.to/3fY5qtN
☆☆☆☆☆
では、この画面のはるか上、記事冒頭で書いた文章をチェックしてみましょう。
コンセプト・アイデア→×
方向性(企画)→×
ご相談させていただく→×
相談させていただいた→×
再度リバイズさせていただいて→×
クリアなビジョン→×
チューニング→×
全部あかんやん。
また、
こういう修飾語ででっぷり太った文章も削ってシンプルに。
ダイエットに成功すれば、幸せな人生が待っている……と思われるのですが、5000字を超えたところで、ふと気が付きました。
わたしは190日ほど前から「#1000日チャレンジ」というものに挑戦しておりまして、毎日、本か映画を紹介するnoteを書いています。
でも……橋口さんの『言葉ダイエット』も、ひろのぶさんの著書『読みたいことを、書けばいい。』も、もう書いちゃった!!!
『読みたいことを、書けばいい。』
https://note.com/33_33/n/nffd5a8f2bd0d
こんな……、こんなに書いて、使えないなんて。アホすぎる。
そんな理由で、最後に橋口さんの前作『100万回シェアされるコピー: いますぐ使えるウェブコピー「4つのルール」』をひっそり置かせてください。
☆☆☆☆☆
『100万回シェアされるコピー: いますぐ使えるウェブコピー「4つのルール」』
https://amzn.to/34VOHkw
☆☆☆☆☆
わたしの橋口さんとの出会いはこの本でした。本屋で手にとり、パラリと開いたページにこんな言葉があったんです。
それは言ってはいけない真実では!!!と思って購入。買ってよかった本の1冊になっています。
タイトルには「ウェブコピー」とありますが、短い言葉で表現することを体系化して説明した本なので、TwitterやInstagramで「いいね!」がもらえる書き方をみつけたい方にピッタリです。
イベントの最後に、橋口さんとひろのぶさんに、とても聞いてみたかったことを質問しました。
ダイエットのコツ、知りたくないですか? わたしはめちゃくちゃ知りたかったんです!!!
答えはこれです。
(※有料イベントのため、4割程度の内容に抑えています。ご了承ください)
コメント
コメントを投稿