「彼の歩き方は、“ダンサー”じゃないんです! 彼こそ“俳優”の歩き方ができる人なんです!!」 2002年に公開された山田洋次監督初の時代劇「たそがれ清兵衛」を観て、当時師事していたアメリカ人映画監督が叫びまくっていました。感動の叫びですよ、念のため。 DVD (画像リンクです) Amazonプライム配信: https://amzn.to/3IiVKpv “彼”とは、映画の中で清兵衛が討ちに行く相手・余吾善右衛門を演じた田中泯さんです。 狭い家の中で斬り合い、倒れる善右衛門。 この時、なんの音もしないんです。静かに、ゆっくりと倒れていく。 これは、絶対的に全身の筋肉をコントロールできる人だけができる演技とのこと。 (画像はIMDbより) ドラマ「太陽にほえろ!」などでは、亡くなるシーンの時、いかに派手に、個性的に、華々しく散るかを考えたそうです。ジーパン刑事(松田優作)の 「なんじゃあこりゃああ!!!!!」 が有名ですよね。 でも、田中泯さんが見せてくれたのは、およそ正反対の極にある死に様でした。 その姿はいまでも強烈に残っています。 クラッシックバレエとモダンダンスを学び、土方巽氏に師事した田中泯さん。その踊りと生き様を追ったドキュメンタリー「名付けようのない踊り」が公開されています。 ☆☆☆☆☆ 映画「名付けようのない踊り」 公式サイト: https://happinet-phantom.com/unnameable-dance/ ☆☆☆☆☆ 映画は、ポルトガルの街角で、ひとりの男がしゃがみこんでいるところから始まります。 ホームレスのような風貌(すいません)、モソモソと超スローモーションで伸びていく腕、ゴソゴソと超スローモーションで動きだす足。 これが、田中泯さんの“踊り”です。 わたしの貧弱な知識の中で「ダンス」といえば、音とリズムに合わせて手足を動かすもの、でした。軽やかで、ウキウキするような、“ハレ”の気配を感じるもの。 映画「スウィング・キッズ」なんて、マジで重力を感じさせない「ダンス」でした。 K-POPアイドルグループ「EXO」のド・ギョンスくんと、ブロードウェイミュージカルの最優秀ダンサーの称号をもつジャレッド・グライムスのダンス対決シーンは、しびれるほどのかっこよさです。 タップのリズムで結ばれた絆の行方 映画「スウィング・キッズ」 #227