インターネットで誹謗中傷をくりかえす人のことを、英語で「インターネット・トロール」と呼ぶそうです。
トロールとは、「妖怪=少数者」のこと。日本では「ネット民=民衆」扱いですが、英語圏では「特殊な少数者」と認識されているのだとか。
この違いは大きいな。
劇作家で演出家の鴻上尚史さんと、評論家の佐藤直樹さんの対談本『同調圧力 日本社会はなぜ息苦しいのか』で紹介されていました。
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『同調圧力 日本社会はなぜ息苦しいのか』
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会話の成立しない「インターネット・トロール」の言動は、日本でもニュースになったりしていますが、状況は韓国も同じ。“匿名”の影に隠れて、有名人に対して言いたい放題なことが起きています。
でも、総務省の調査によると、Twitterの匿名利用は、日本がダントツに多くて75.1%。アメリカや韓国は30%台でした。
あることないこと言われっぱなしになるのは気の毒だなーと思っていたら、誹謗中傷の言葉を逆手にとって、トークショーをおこなったコメディアンがいました。
韓国のコメディアンであるユ・ビョンジェは、トークショー「ユ・ビョンジェの言いたいことが言えない」で、自分に対する批判と、今の韓国社会が抱える問題を、見事に笑いに変えています。
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トークショー「ユ・ビョンジェの言いたいことが言えない」https://www.netflix.com/title/80223582
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わたしが知っている韓国のコメディアンといえば、キム・ジェドンでした。わたしの好きなロック歌手ユン・ドヒョンの親友だからです。
キム・ジェドンは政治の圧力があった時代にも、果敢に政治ネタを取り上げたり、盧武鉉(ノ・ムヒョン)前大統領の追悼式で司会をしたりして、番組を降板させられていました。
「韓国の芸能人は政治ネタを避けない」と言われていますが、保守政権に対する激しいツッコミは、風当たりも強かったんです。
政治ネタをジョークにしているユ・ビョンジェも、トークの中で「キム・ジェドンのマネしやがって」と、悪口を書かれたと語っています。
「小説『82年生まれ、キム・ジヨン』を読んだ」といっただけで男性陣からバッシングされ、女性にやさしくすると「韓男虫(男性嫌悪を表すネットスラング)」と嫌われる。
保守派についてなんか言えば「勉強不足」と言われ、リベラル派の政治家がなんかやらかした時にコメントしないと「ズルイ」と言われる。
もーどうしようもない状況を、それでも笑いにしていくんです。AIのような音声がつぶやく「悪口」が、マヌケにしか感じられない。
韓国の今が透けて見える、スタンダップコメディ。これが“公演”なのは、さすがにテレビでは放映できないからなのかも。貴重な声を聴くことができるプログラムです。
「ユ・ビョンジェの言いたいことが言えない」 54分(2018年)
監督:チョン・ヨンジュン
出演:ユ・ビョンジェ
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