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8月, 2021の投稿を表示しています

映画「カエル少年失踪殺人事件」#780

韓国映画は、自分たちの社会や歴史の暗部をドラマ化するのが、本当にうまい。 ポン・ジュノ監督の「殺人の追憶」や、パク・ジンピョ監督の「あいつの声」は、未解決事件を、チャン・ジュナン監督の 「1987、ある闘いの真実」 や、カン・ウソク監督の「シルミド」などは、葬り去られそうになった歴史を掘り起こしています。 イ・ギュマン監督の「カエル少年失踪殺人事件」も、そのひとつ。 1991年3月に大邱市で発生した小学生5人の行方不明事件を映画化。犯人不明というミステリーに、“オトナの思惑”を加えて、緊迫のサスペンスドラマに仕立てています。 ☆☆☆☆☆ 映画「カエル少年失踪殺人事件」 DVD ☆☆☆☆☆ 実際に起きた事件をベースにしたストーリーで、映画を観るだけで事件の推移が把握できます。それが、なんとも胸が痛い展開。 遺骨が見つかるまでの10年の間、家族たちがどれほど苦しんできたのか。杜撰な捜索、特ダネ狙いのテレビプロデューサー、犯人像を分析して家族に疑いの目を向ける教授ら、どれほどの人たちが家族を弄んできたのか。 それでも、映画の封切りに合わせて家族たちは、「全部許すから、出てきて欲しい」と犯人に呼びかけたのだそう。 当然、ポン・ジュノ監督の「殺人の追憶」と比較されることも多かったようですが、サスペンス度は「カエル少年」の方が強かったなーと思います。 ただ、事件についてまったく知らなかったし、「カエル少年失踪殺人事件」というタイトルだけを見て、わたしは勘違いしておりました。 少年探偵団みたいなコメディだと思っていたのに!!! バッチバチの緊迫感漂うサスペンスで、まばたきするのも忘れてしまってたよ。 特に、赤いマントの少年の母を演じたキム・ヨジン。 (画像はKMDbより) 最近ではドラマ「ヴィンチェンツォ」の悪役ぶりが目立っていましたが、こういうセリフのない演技の壮絶さは、ピカイチだと思います。エアロビ踊ってるだけじゃないのですよ。 ドラマ「ヴィンチェンツォ」#667   「カエルを捕まえに行く」という言葉を残して、姿を消した少年たち。事件は2006年3月26日に時効が成立し、迷宮入りとなりました。 赤いマントを翻して走っていた、うれしそうな顔に無念ばかりが残ってしまう。 (画像はKMDbより) 痛烈な批判と皮肉が込められたストーリー。これを劇映画として成立させてしまう

映画「詩人の恋」#779

詩人に見えている世界は、凡人のわたしとはなんて違っているんだろう。 うだつの上がらない詩人が、ひとりの青年に出会ったことで自分の世界を開いていく。 でも、トキメキの対象は同性の青年。妻は妊活中で、現実と恋との板挟みになってしまうんです。その姿が、ひたすら愛おしくて痛々しかった。 済州島を舞台に、ヤン・イクチュンを主演に迎え、詩人の心の揺れを映画化したキム・ヤンヒ監督は、これが長編デビュー作です。 ☆☆☆☆☆ 映画「詩人の恋」 オフィシャルサイト https://shijin.espace-sarou.com/ DVD ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 済州島で生まれ育った詩人テッキは、スランプに陥っていた。稼げないテッキを支える妻のガンスンが妊活を始めたことから、人生に波が立ち始める。乏精子症と診断され、詩も浮かばずに思い悩むテッキは、ある時、港に開店したドーナツ屋で働く美青年セユンと出会う。セユンのつぶやきをきっかけに新しい詩の世界を広げることができ、セユンについてもっと知りたいと思うようになるが……。 朝鮮半島の南西部にある済州島。自然に恵まれた火山島なんですが、風と石と女が多いため、「三多島」とも呼ばれています。 伝統的に女性が強いそうで、テッキも完全に主導権を妻に握られています。詩を読む会で酷評され、家に帰って「ボクっておデブかなー?」と聞くところなんて、かわいいしかない。 (画像は映画.comより) しっかり者の妻のおかげで、自分自身は現実に対峙せずに済んでいたところもあったんですよね。5センチくらい宙に浮いているような感じ。 でも、ドーナツ屋の青年にときめいちゃってからは、「生きる」ことに対して積極的になっていきます。寝てるけど。 (画像は映画.comより) そんなテッキを微笑ましく見守りながら、わたしの頭の中を占めていたのは。 「クリスピー・クリーム・ドーナツ」が食べたい。 「クリスピー・クリーム・ドーナツ」が食べたい。 「クリスピー・クリーム・ドーナツ」が食べたい。 行ってきました。 わたし、オリジナル・グレーズドが好きなのですけど、テッキのマネをしたくて、いろんなドーナツを買ってしまった。 ああ、なんか、詩人とは見ている世界が違いすぎて、自分で自分にガッカリしてしまう……。 テッキ役のヤン・イクチュンがみせるモジモジしたおっちゃん感はたまらないし

ドラマ「サウンド・オブ・ハート」#778

お気楽に笑えるドラマが観たいなーということで、ポチってみたシットコム「サウンド・オブ・ハート」が、おバカすぎて笑いました。 漫画家を目指すソクと、その家族たちを描いたコメディです。1話が30分くらいなので、「韓国ドラマ=長い」と敬遠している方にもおすすめ。 ☆☆☆☆☆ ドラマ「サウンド・オブ・ハート」Netflixで配信中 https://www.netflix.com/title/80155793 ☆☆☆☆☆ 韓国のポータルサイト「NAVER」で、10年間も連載された人気ウェブ漫画がベースになっています。「10年」というのは、ウェブ漫画としては初めての大記録なのだそう。そんな神話を作り上げた漫画ですが、KBS芸能局が初めてドラマに挑戦した作品でもあります。 チョ・ソク役のイ・グァンスは、コミカルな演技も得意な俳優だし、このドラマでも思い込みの強い漫画家を熱演。ここはナイスキャスティング!な感じです。 注目は、ソクのお兄ちゃん役です。 (画像はナムウィキより) 「賢い医師生活」で、おっとりとしたクマのような産婦人科医を演じている、キム・デミョンがー!!! アホアホ感満載のコメディにー!!! 学生時代に思い描いた理想、生きてる? ドラマ「賢い医師生活」 #379   クマ感はそのままに、全然違う姿を見せています。 おそろしい子!!! ストーリーは、トイレに行ったら紙が……的な下ネタが多め。顔を隠して、下は丸出しで走って逃げるとか、「そっち!?」的なズレが楽しい。 パロディあり、ドタバタあり、チョン・ソミンやキム・ビョンオクらベテランが、本気で笑わせに来ます。 もう一本、「リブート」バージョンも配信されていて、こちらは漫画が大ヒットしてウハウハになった“リアル家族”という設定。 わたしはいつも、朝にこのドラマを観て、それから仕事を開始してたんですよね。いい感じに力が抜けますよ。 ドラマ「サウンド・オブ・ハート」 KBS全10回(2016年) 監督:ハ・ビョンフン 脚本:イ・ビョンフン、クォン・ヘジュ、キム・ヨンジ 出演:イ・グァンス、キム・デミョン、チョン・ソミン、キム・ビョンオク、キム・ミギョン

『スチームフード』#777

我が家に「電鍋」さんをお迎えしました。 「電鍋」とは、文字通り「電気の鍋」のことで、炊く・蒸す・煮込む・温めるの4役をこなしてくれる調理家電です。台湾では電子レンジよりも普及していると言われていて、一家に1.7台はあるそう。 たぶん、最初にその存在を知ったのは、田中 伶さんが「無人島に持っていくべき調理家電ナンバーワン」と激推しされているnoteでした。 無人島に持っていくべき調理家電ナンバーワン 『大同電鍋』|田中 伶|note   めっちゃ気になる~!!!と思ったものの、「モノを減らせ」とダンナ氏から言われ続けているため、キッチン用品や器は買わないことにしているのです。泣く泣く見送ることに。 そして、このnoteから約1年。 再び「電鍋」激推しコメントに出会ってしまいました。 台湾の電鍋で作る、手羽中のスンドゥブチゲ|Reizoko ni ALMONDE -冷蔵庫にあるもんで-|note   and recipeの山田さんと、「你好我好」のオーナー青木由香さんのコラボLiveです。青木さんの「ガスレンジが足りないよーという時に便利よ」というひと言に、思わず買うことを決意。ポチってしまったのでした。 ☆☆☆☆☆ 【TATUNG 公式販売店】大同電鍋 6合 ☆☆☆☆☆ 青木さんは10合サイズをお勧めされていましたが、うちはふたり暮らしなので、迷った末に6合サイズを購入。色も、さんざん迷った末に白にしました。 取り出して、最初に思ったことは。 炊飯器感ハンパない!! (大きさが分かるように、5.5合炊きの炊飯器と並べてみました) 実は、この「大同電鍋」は東芝が技術提供して誕生したものなのだそう。もともとが炊飯器のせいか、計量カップとしゃもじも付いてきました。 使い方はシンプルで、スイッチ的なものは、黒いレバーだけ。外鍋にお水を入れて、食材を入れた内鍋を置いて「ポチッ」で完了です。 本当にこれだけでいいんだろうかと不安になるくらい簡単です。下の画像は「炊飯」モード稼働中。 本体のヒーターが熱くなることで、外鍋に入れた水が蒸発し、その蒸気で食材を加熱してくれるしくみ。 タイマー的なものもないので、水の量で加減するというアバウトな機械です。水がなくなれば自動的に「保温」モードに変わるので、加熱しすぎて爆発したり、火事になったりという心配がないとのこと。 これが、

『西の善き魔女』#776

先日、自分の「価値観」と「仕事の真価」を探るワークを実施しました。いろいろ考えながらキーワードを整理していて、あぁ、これかもと拾い上げたワードに、自分でも笑ってしまった。 わたしにとって大切で、心躍るもの。それは、「冒険」でした。 仕事の上では、チャレンジが好きで、チャレンジする人を応援したいタイプです。プライベートでは、ファンタジー小説やミステリーが好き。他にもいろいろ自分が好きなものを挙げていくと、行き着くのは「冒険」。 荻原規子さんの『西の善き魔女』シリーズは、出生の秘密、異国への旅、学園生活と、辺境の地育ちの少女が大冒険するお話で、ワクワクが満載でした。 ☆☆☆☆☆ 『西の善き魔女』 ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 辺境の地セラフィールドで生まれ育った15歳の少女フィリエル。初めての舞踏会の朝、幼なじみの少年ルーンから、亡き母の首飾りを渡される。フィリエルの父で、行方不明の天文学者ディー博士が託した品だったが、従姉のアデイルによって女王試金石であることが判明。フィリエルは全寮制の修道院で学ぶことになるが……。 わたしが持っているのは中公文庫のシリーズですが、これは新装版。C★NOVELSファンタジア版や、ハードカバー、角川文庫版などがあるのでややこしいですが、「外伝」の入り方が違うだけで、だいたい8巻のシリーズです。(“だいたい”って……) I:セラフィールドの少女 II:秘密の花園 III:薔薇の名前 IV:世界のかなたの森 V:銀の鳥プラチナの鳥(外伝・IVとVIの間の話) VI:闇の左手 VII:金の糸紡げば(外伝・Iの前日譚) VIII:真昼の星迷走(外伝だけど、実質最終巻) タイトルがル=グィンの異名である「The Good Witch of the West」、サブタイトルに彼女のSF作品の名前を使っていたりと、思い入れの強さが感じられるのですよね。 それもそのはず。 荻原さんが大学時代に所属していた、児童文学研究会で初めて完成させた小説が基になっているのだそう。 学園ものにあたる第2巻の「秘密の花園」では、学生たちがヒミツの活動をしているんですが、研究会での活動の思い出がベースになっています。 シリーズの中でわたしが好きなのも、「秘密の花園」です。国中から集められた女子学生たちが学ぶ内容を知って、思わず本を落っことした! くノ一学園かよ!? そんな展

『空色勾玉』#775

与えられるものはすべて与えているはずなのに、なぜみんな去ってしまうのか……。 日本神話をモチーフにした『空色勾玉』は、命の不思議を感じさせるファンタジーなのですが、恋愛小説の要素もたっぷり。 考えてみれば日本って、イザナキとイザナミのきょうだいが結ばれて誕生した国土。現代の人間なら「許されない恋」ですよね。韓国ドラマなら、あるあるな設定だけど。 タブーに惹かれ、運命の扉を開き、世界を変えてしまう。 神話的ファンタジーが描く少女の運命に、調和と共生の意義を感じました。 ☆☆☆☆☆ 『空色勾玉』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 輝(かぐ)の大御神が治める地で少女・狭也(さや)はある日、祭りの楽人に出会う。彼らの正体は輝に敵対する闇(くら)の一族で、狭也は闇の巫女姫・狭由良(さゆら)だと告げる。そこへ、狭也の憧れだった輝の大御神の御子である月代王(つきしろのおおきみ)が現れ、狭也は輝の宮に行くことに。輝の宮で幽閉されている美少年・稚羽矢(ちはや)と出会い……。 輝の一族は不変性、闇の一族は変化の性質を持っているため、両者が相容れることはないのですが。 家族を失い、輝の神を崇める村で育ったため、狭也は「月代王=輝一族」への憧れを持ってしまうんです。知らなかったとはいえ、闇の一族なのに。月代王に見初められたものの、月代王が見ているのは転生する前の自分。 どこまでもすれ違い、分かり合うことのない関係が、めちゃくちゃせつない。 月代王って、今風にいうと「勘違い男」なんですよ。 女の子たちがドンドン寄ってきて、よしよしーってかわいがってあげてたのに、いつの間にかみんないなくなっちゃう。 なんで!? って感じで、さっぱり理由を分かってない。 いや、だって。 きみが、いま、そこにいる、その人を見ていないからだよ!! って感じで、ツッコみたくなるところもいっぱいです。 光・闇・剣といったモチーフが日本神話を彷彿させるので、『空色勾玉』を読んでから『古事記』を読んだ方が、すんなり頭に入ってくるかもしれません。漢字が多くてこんがらがっちゃうけど、わたしの場合、この本が入り口となって日本の神話に関する本を読みました。 そして、あっけらかーーーんとした性の描写にビックリした……。 国造りの神話が、開放的な性描写なのは世界でもまれなのだそうです。神話好きと、ファンタジー好きをつないで

『伴走者』#774

見逃した!!! 昨日8月24日は、東京パラリンピックの開会式が行われていた“そう”です。知らなかった……。最近は忙しくて、テレビもネットも見ていなかったから? オリンピックほど話題になっていないから? 14時頃、ミーティングをしていた時に、オフィスにいるメンバーが窓の外を見て、 「ブルーインパルスが飛んでる!!!」 と声を上げていました。開会式があるからだったのかと、今さら気が付きました。 でも、これって話題になってました? 小中校生を対象にした「学校連携観戦プログラム」はニュースになっているのに、なんだか扱いが逆じゃないのかしらという気がしてしまいます。「安全・安心」な大会にすると丸川大臣は語っていますが、なにを、どうやって「安全・安心」にするのかを知りたいのですよね。 一方で、橋本会長は、子どもたちが直接会場でパラリンピックの競技を観戦することが「教育に値する大きなもの」と説明。それが理由に値するのかどうか……。 地元である東京が開催地な分、オリンピックとの温度差を、これまで以上に感じています。 わたし自身、これまでパラリンピックの競技をほとんど見たことがなかったので、実はオリンピックより楽しみにしていました。こんな状況じゃなければ、会場まで観戦に行ったと思います。 見たかったのは、車いすテニスとブラインドサッカー。そして、マラソンでした。 テニスとサッカーは、以前テレビで特集を見たことがあったから。マラソンは、浅生鴨さんの小説『伴走者』を読んだからです。 ☆☆☆☆☆ 『伴走者』 ☆☆☆☆☆ 本には、夏の「マラソン編」と冬の「スキー編」の2編が収められています。 「速いが勝てない」と言われ続けた淡島は、視覚障害者ランナーの内田の伴走者として走ることに。この、内田という選手が、めっちゃ性格が悪いんです……。 ランナーと伴走者は、“キズナ”とも呼ばれる伴走ロープを持って、ピッタリくっついて走ります。条件によっては、伴走者もメダルをもらえるそう。 伴走者もメダルがもらえる?~陸上・和田伸也選手~ | 東京2020パラリンピック | NHK   なのに、性格の合わない、いや、むしろ憎たらしいしかないようなヤツの横で走れるものなのだろうか。一緒に走りながら、周囲のすべてを教え、戦略を考え、励まし、しかも自分もトップスピードで走り続ける仕事です。 でも、内田と一緒

『15分でチームワークを高めるゲーム39』#773

「出勤者7割削減」は可能なのかが議論になっていますが、テレワークが進んだことで浮上した課題だってあります。 この1年以上、わたしが頭を悩ませているのは、チームワークの醸成。 新卒メンバーや転職したての方に、どうやって会社にとけ込んでもらうか。会社のカルチャーを知ってもらうか。逆に、どうやって本人の悩みを吸い上げるか。 スピーチコンサルタントの矢野香さんは、『オンラインでの「伝え方」 ココが違います!』で、オンラインとオフラインは共有するものが違うと指摘されています。 オンラインの話し方と映り方総まとめ 『オンラインでの「伝え方」 ココが違います!』 #633   リアルで会えないということは、「感情」を共有する場がないということ。「手を取り合って喜ぶ」とか、「肩をたたいて励ます」なんていうコミュニケーションも成立しません。 来年の研修に向けて、できることを探していて行き当たったのが『15分でチームワークを高めるゲーム39』でした。 ☆☆☆☆☆ 『15分でチームワークを高めるゲーム39』 https://amzn.to/3z9Qtvz ☆☆☆☆☆ 著者のブライアン・コール・ミラーさんは、リーダー研修を行う会社の設立者なのだそう。本には、4つのカテゴリー、全39種類のゲームが収録されています。 カテゴリーはこちら。 ・初対面のメンバーが親しくなるゲーム ・チームが盛り上がって活性化するゲーム ・チームに交渉力・創造力がつくゲーム ・変化に負けないチームをつくるゲーム 対面でないと難しいものもありますが、オンラインでも可能なゲームも載っています。 たとえば、「折り紙」ゲーム。目をつぶって、指示通りに紙を折っていくという単純なゲームなので、画面をオフにして実施し、最後に見せ合いっこする方法がとれると思います。 ゲームを通して、「分かっているはず」なんていう思い込みをあぶり出すことができそう。 これまでの新人研修では、「伝言ゲーム」などを取り入れていました。自分が思っているほど、相手には伝わらないことを体感してもらうのが目的です。 ゲーム形式でやると、地が出てくるので、意外と負けず嫌いなんだなといった人柄も見えてきます。 社会的に大きな変化が起きた時。 あれができない、これだからムリと、できない理由を考えるのは、あまり生産的ではありません。それよりも、工夫のしどころだと発想を

『エア新書―発想力と企画力が身につく“爆笑脳トレ”』#772

孫正義著『お金持ちに見られないための10の鉄則 ―なぜしょぼい感じなのか?』 こんなタイトルの本があったら、思わず買ってしまう……かもしれない。いや、わざわざ“しょぼく”見せるほど、お金持ちでもないしなーと思ってしまうかな。 でも、この本は本当に刊行されるものではありません。編集者の石黒謙吾さんが、“お遊び”がてら考えた「エア新書」のタイトルなんです。 ☆☆☆☆☆ 『エア新書―発想力と企画力が身につく“爆笑脳トレ”』 https://amzn.to/3sEqU3C ☆☆☆☆☆ 「新書」というサイズの本の出版は、1938年に岩波書店から始まったのだそうです。古典の岩波文庫に対して、書き下ろしの教養系をテーマとしていました。 その後、1961年に中公新書が、1964年に講談社現代新書が創刊され、「新書御三家」と呼ばれるように。 1998年に「文春新書」、1999年に「集英社新書」、そして2003年に「新潮新書」などが創刊され、内容もアカデミックなものからライトなものへと変化してきたそう。 “ライト”といえば、まだ聞こえはいいけど、正直に言って(うーん……)となるものもある気がしますがね。 バブル崩壊…出版不況のなかで探った「現代新書」らしい切り口とは?(現代新書編集部)   わたしは新書が好きで、よく手に取る方だと思います。新聞の調査報道のような読み応えのあるものもありますし、興味のある分野の入り口にもいい。 で、思うこと。 新書のタイトルって、とても特徴的……。 「一瞬、なに言ってるか分からない」とか、「意外なものを組み合わせている」とか。 石黒さんは、タイトルの方向性について、エポックメイキングとなった本が、公認会計士である山田真哉さんの『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』だと指摘されています。 ☆☆☆☆☆ 山田真哉『さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学』 https://amzn.to/3gpuBoR ☆☆☆☆☆ この本がヒットした後、「○○はなぜ○○なのか?」が類型化し、「○○の品格」と「○○の壁」といったパターンも爆増。 『エア新書』は、こうした「今風の新書っぽいタイトル」をパターン化し、架空の新書タイトルを考えてみよう、という本なんです。 人物 × タイトル × サブタイトル × 帯 考えるのはこの4つ。タイトルに“爆笑脳トレ”とあるよ

『ロボット・イン・ザ・ガーデン』#771

“かわいい”は、すべてを越える。 パッと見には、時代遅れでポンコツのロボット。ホントになにをしてくれるわけでもない、しかも“壊れかけ”のロボットである「タング」が、ずっと一緒にいたいと思えるくらいにかわいいんです。 デボラ・インストールの小説『ロボット・イン・ザ・ガーデン』は、レトロなロボット「タング」と、妻に愛想を尽かされたベンの旅物語です。 ☆☆☆☆☆ 『ロボット・イン・ザ・ガーデン』 https://amzn.to/3D5AbGB ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 近未来のイギリス南部の村。仕事も家事もせず、家でブラブラと過ごしている34歳のベンは、庭で壊れかけのロボットのタングを見つける。巷に溢れるアンドロイドにはない「何か」をタングに感じたベンは、彼を直してやるため、作り主を探そうとアメリカに向かうことになるが……。 2016年ベルリン国際映画祭で「映画化したい一冊」に選ばれ、劇団四季では舞台化もされています。映画化はいつ……!?と思ったら。 二宮和也さん主演、三木孝浩監督で製作が決定したとニュースになっていました。 二宮和也、嵐の活動休止後初の映画主演!「ロボット・イン・ザ・ガーデン」実写化で不良品ロボットと出会うダメ男に|シネマトゥデイ   ベンがニノか……。ちょっとキレイすぎる気もしちゃう。 というくらい、やさぐれた中年のおっさんなんです、ベンは。妻のエイミーのことは大切に想っているようなんですが、なぜ彼女がそんなにイライラしているのか分からない。 庭にとつぜん現われた「タング」を、捨ててくるように言う理由も分からない。 共感性ゼロなおっさんが、幼児レベルの頭脳しかもたないロボットと旅をするのですから、そりゃもう「珍道中」にならざるを得ないのです。 「タング」は簡単な会話なら交わせる程度ですが、やっぱロボットといえば、「スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望」のR2-D2だと思います。 (画像はIMDbより) 1977年公開とあって、いま見ると、ホントに「レトロ風」ですね。2015年に公開された“新たなる”3部作1作目の「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」には、BB-8が登場します。動きの軽やかさは段違いでした。 (画像は映画.comより) 「スター・ウォーズ」シリーズでも、有能で、かっこよく、人間の“役に立ってくれる”ロボットに活躍のシーンが与えられ

『ブタが好きすぎてハンガリーの国賓になりました』#770

ウソみたいなホントの話が、うらやましすぎた!! くるくる巻き毛のブタ「マンガリッツァブタ」ってかわいいよねーとマンガを描いていたら、ハンガリーから招待されてしまったというお話です。 しかも、「国賓」として! 貴重な体験をエッセイをマンガで紹介しているのが、松本救助さんです。 ☆☆☆☆☆ 『ブタが好きすぎてハンガリーの国賓になりました』 https://amzn.to/3yXgmPr ☆☆☆☆☆ 「マンガリッツァブタ」は、品種改良で生み出されたハンガリー固有の、希少種の豚です。一時は絶滅の危機に陥り、国を挙げて養豚を支援。いまでは国宝に指定されています。 一瞬、どっちが顔か分からないくらいモッサモサです……。 (画像はWikipediaより) わたしはブタが好きで、旅行のお土産にもブタ関連のものをもらうことが多いんですよね。これは鹿児島のお土産です。しかも、同じものを別の友人からももらったがあります。 松本さんも、ただただブタさんが好きでマンガを描いていたのだそう。「マンガリッツァブタ」がバーテンダーというマンガを投稿したところ、大使館から連絡が来て、招待されることになり、でもひとりで行くのは不安だし……みたいな展開が、ユーモアたっぷりに描かれています。 不思議なご縁がつながったという、「ブタへの愛」がもたらした奇跡の物語。きっかけとなったマンガ「Bar:Mangalica」は、松本さんの連載デビュー作で、現在、noteで読むことができます。本には「特別編」を収録。 Bar:Mangalica6話目「ある日のMangalica」 https://note.com/mtq/n/n2e182452b66d?magazine_key=maa75ec9f09a4 ハンガリー側としては、国宝である「マンガリッツァブタ」のことを、ただただ「正しく」知ってほしいと思っている。その一心が伝わってきます。 心から、うらやましいしかない展開。将来どうなるかなんて下心は置いておいて、やっぱり「好き」を大事にしたいなと思ったのでした。

『氷柱の声』#769

「なんてキレイな海!!!」 そう言いたくなったとたんに、言葉を飲み込んでしまったことを思い出す。 2017年の7月、夏休みに岩手を旅しました。ふるさと納税の返礼品でホテルの宿泊券を選び、盛岡→遠野→陸前高田を回った旅。三陸海岸の海は透明度が高いんです。 「青の洞窟」の中では、岩にしがみついたウニの姿も見えました。「青」という名前ですが、光の加減やプランクトンの様子で色味は変わるそう。わたしが行った時は、エメラルドグリーンでした。 青の洞窟(さっぱ船遊覧) | 浄土ヶ浜マリンハウス   生活の糧を与えてくれたこの海が、2011年3月11日には、いろんなものを飲み込んでいきました。そう思うと、なんて言えばいいのか分からない。 海辺の町にはまだ空き地も多くて、建っている家はピカピカの新築。その姿を見ても、胸にグッとこみ上げてくるものがある。 海そのものを見ること、光っているものが消えていく様子を見ることが苦手になってしまった「中鵜くん」の姿を読んでいて、この夏の旅を思い出しました。 「中鵜くん」は、短歌や俳句などで活躍してきた、くどう れいんさん初の小説『氷柱の声』の登場人物です。ヘラッとしているようにみえて、消えない痛みを抱えている彼に、すごく感情移入してしまったのでした。 ☆☆☆☆☆ 『氷柱の声』 https://amzn.to/3z6UEsk ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 高校の美術部員である伊智花(いちか)。祖母との思い出の詰まった「不動の滝」の絵が完成間近となった頃、東日本大震災が発生。内陸にある伊智花の家には大きな被害がなかったが、そのことがだんだんと重荷になっていき……。 東日本大震災が起きた時、盛岡の高校生だった伊智花(いちか)が、仙台の大学で出会い、恋人になったのが「中鵜くん」でした。 油絵の作品を出した、伊智花にとって高校最後のコンクール。 同じアパートに住む、福島出身の友人。 千葉から陸前高田へと移住し、海を撮り続ける女性。 そして、宮城県の避難所で夜を明かした経験を持つ「中鵜くん」。 それぞれの震災の記憶が、それぞれの形で残っています。とはいえ、大きな被害を受けなかった伊智花は、一様に「被災者」としてひとくくりにされることに違和感を持つ。 自分に、何かを語る資格はあるのだろうか、と。 『氷柱の声』は、「失わなかった立場」から語るという小説です。傷は、

『世界で一番すばらしい俺』#768

世界が反転した。 工藤吉生さんの第一歌集『世界で一番すばらしい俺』は、ページをめくるごとに歌人のイメージが変わってしまいます。 タイトルになっている「世界で一番すばらしい俺」は、実は一首の下の句です。これだけ見ると、ブイブイでウェイウェイな感じがするんだけれど。 膝蹴りを暗い野原で受けている世界で一番すばらしい俺 なんと!! 思い描いた世界と全然違ってた。 生きることのしんどさと、やりきれなさ。人の目にイラつき、自分にイラつく。ああ、もう、どうにでもなれ!と思うのに、まだしぶとく生きている自分を発見するような歌集です。 ☆☆☆☆☆ 『世界で一番すばらしい俺』 https://amzn.to/3mdEFoG ☆☆☆☆☆ 1990年前後に広まった「ニューウェーブ短歌」は、インターネットのおかげで裾野が広がったのだそうです。 工藤吉生さんは、歌人・枡野浩一さんがネット上で「ドラえもんあるある」的な短歌を募集した『ドラえもん短歌』を見て、興味を持ち、歌を作り始めます。 歌集は、初々しい、青春の甘酸っぱさ全開の、レモンが降ってくるような、まぶしさいっぱいの歌からスタート。 そして、好きだった女性にふられて、4階のベランダから飛び降りる。 すごく凝縮された青春が、ガラスのような鋭さを持って振り下ろされてくるんです。一命をとりとめた後も、震災被害に遭い、交通事故にも遭われています。 クリエイターの業の深さを感じさせる一文がありました。 「車にはねられました」というシリーズについての紹介です。 “体験としては強烈でしたが、短歌は十首しかできませんでした。” 生きててよかった……。 どんな体験も、自分の中に取り込み、「作品」に昇華できるって、清算ができたってことなのかしら。負の感情を成仏させることができたら、明日も生きてみようと思えるかもしれないですね。

『すべての瞬間が君だった きらきら輝いていた僕たちの時間』#767

韓国人男性の特徴を挙げるなら、まずは「マザコン」であることでしょうか。そして「ポエム男」も意外と多い気がします。 40代から50代の場合、座右の銘を漢文で挙げる人も。日本だったら「オレか、オレ以外か」って言いそうな人なのに……と感じたこともありました。 とはいえ、強さを前面に押し出している人だって、心の中までは分からない。しょっぱい思い出も、甘酸っぱい初恋も、自分なりの「詩」に昇華して、記憶しているのかもしれません。 ラブコメの帝王パク・ソジュンと、パク・ミニョン主演のドラマ「キム秘書はいったい、なぜ?」は、まさにそんなストーリーでした。 “傾聴”できない男は、インサイトをつかめるか!? ドラマ「キム秘書はいったい、なぜ?」 #494   このドラマでキム秘書が読んでいた本が、ハ・テワンさんの『すべての瞬間が君だった きらきら輝いていた僕たちの時間』です。韓国でこのドラマが放送されていた頃、すでにベストセラーになっていたのだそう。 愛する人への言葉、別れた人への言葉、ひとつひとつの思いをすくい上げたようなエッセイなのですが、長編恋愛小説のようでもあります。 ☆☆☆☆☆ 『すべての瞬間が君だった きらきら輝いていた僕たちの時間』 https://amzn.to/2W2UnYJ ☆☆☆☆☆ ハ・テワンさんは、SNSを中心に支持を受けてデビューしたため、「SNS作家」と呼ばれているそうです。年齢が出てこないけれど、本を出版した時に軍隊生活をしていたとのことなので、たぶん20代ですかね。 2作目にあたるこの本は、韓国でミュージカル化されるほど大人気に。 どのページを開いても、励まされるし、心を落ち着かせることができる。でも、やさしいだけじゃなくて、暗闇をのぞいているみたいな気持ちになる話もあります。 生活していれば、すべてがハッピーで、順調で、オーライな日ばかりではないでしょう。心の中に浮かんだカサカサを持て余してしまう夜は、ぜひ本をパラリと開いてみてください。 たとえば、「あなたは、本当にきれいで素敵な人」というエッセイには、こんな言葉が。 “あなたは とても魅力的なのに それを見せる方法を よくわかっていないのです。 他の誰よりも きれいで素敵な人であることは確かなのに。” そこにある言葉が、いま自分に必要なものだと感じられる、ビブリオマンシー(書物占い)みたいな一冊。