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『ロボット・イン・ザ・ガーデン』#771


“かわいい”は、すべてを越える。

パッと見には、時代遅れでポンコツのロボット。ホントになにをしてくれるわけでもない、しかも“壊れかけ”のロボットである「タング」が、ずっと一緒にいたいと思えるくらいにかわいいんです。

デボラ・インストールの小説『ロボット・イン・ザ・ガーデン』は、レトロなロボット「タング」と、妻に愛想を尽かされたベンの旅物語です。

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『ロボット・イン・ザ・ガーデン』
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<あらすじ>
近未来のイギリス南部の村。仕事も家事もせず、家でブラブラと過ごしている34歳のベンは、庭で壊れかけのロボットのタングを見つける。巷に溢れるアンドロイドにはない「何か」をタングに感じたベンは、彼を直してやるため、作り主を探そうとアメリカに向かうことになるが……。


2016年ベルリン国際映画祭で「映画化したい一冊」に選ばれ、劇団四季では舞台化もされています。映画化はいつ……!?と思ったら。

二宮和也さん主演、三木孝浩監督で製作が決定したとニュースになっていました。


ベンがニノか……。ちょっとキレイすぎる気もしちゃう。

というくらい、やさぐれた中年のおっさんなんです、ベンは。妻のエイミーのことは大切に想っているようなんですが、なぜ彼女がそんなにイライラしているのか分からない。

庭にとつぜん現われた「タング」を、捨ててくるように言う理由も分からない。

共感性ゼロなおっさんが、幼児レベルの頭脳しかもたないロボットと旅をするのですから、そりゃもう「珍道中」にならざるを得ないのです。


「タング」は簡単な会話なら交わせる程度ですが、やっぱロボットといえば、「スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望」のR2-D2だと思います。

(画像はIMDbより)

1977年公開とあって、いま見ると、ホントに「レトロ風」ですね。2015年に公開された“新たなる”3部作1作目の「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」には、BB-8が登場します。動きの軽やかさは段違いでした。

(画像は映画.comより)


「スター・ウォーズ」シリーズでも、有能で、かっこよく、人間の“役に立ってくれる”ロボットに活躍のシーンが与えられていましたよね。

『ロボット・イン・ザ・ガーデン』の舞台は、アンドロイドが大人気の時代です。「タング」のような何もできない……というか、3歳児並みに手がかかるロボットは、「捨ててきて」と言われてしまうような存在。

人間の“役に立ってくれる”なんて、望むべくもなさそうなボロいみかけで、妻とのコミュニケーションに悩む(悩んでさえいなかったかもしれない)ベンは、そんな「タング」に自分を見たのかもしれません。

でも、“役に立たない”人間は、存在してはいけないのでしょうか?

「タング」というワガママロボットは、役に立つ、立たないだけが判断基準ではないことを教えてくれます。そして、自分よりも手のかかる存在を世話することで、ベンのコミュニケーションも変わっていくのです。


作者のデボラ・インストールは、元コピーライターで、長男を出産後にこの本を執筆して、デビュー。シリーズは4巻まであります。

第1巻:『ロボット・イン・ザ・ガーデン』
第2巻:『ロボット・イン・ザ・ハウス』
第3巻:『ロボット・イン・ザ・スクール』
第4巻:『ロボット・イン・ザ・ファミリー』

「タング」が名乗る〈アクリッド・タング〉という名前には、「つんとする匂い」の意味があるそう。子どものおむつの匂いから着想したと語っておられます。いやー、なんか、ピッタリ。


ラブリーでハートウォーミングな物語で、なんだか「タング」と一緒に映画が観たくなるんですよ。「タング」は、話をめっちゃシンプルに説明してくれます……。


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