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7月, 2019の投稿を表示しています

自分をも食い尽くす承認欲求 『ナイルパーチの女子会』#18

「叱る」って本当に難しいですよね。 「怒る」と「叱る」を混同している人も多く、新人に注意する時には、その説明からすることもよくあります。そのことについてはあらためて書きたいと思いますが。 この常識はいまも必要だろうか? このイライラは嫉妬ではないか? といった点は、常に自分に問いかけるようにしています。でないと、自分の価値観が絶対的な正義のモンスターになってしまうから。 そんな「モンスター」を描いた小説が、柚木麻子さんの『ナイルパーチの女子会』です。 ☆☆☆☆☆ ナイルパーチの女子会 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 翔子が匿名で書いている主婦ブログのファンだった大手企業に勤める会社員の栄利子。偶然にも近所に住んでいることが分かり、知り合いになります。同性の友達がいないという共通のコンプレックスによって、ふたりは意気投合。親友になるのですが……。 ナイルパーチとは、アフリカ大陸の川などに生息する大型の淡水魚の名前です。フライ用の白身魚として日本にも輸出されています。肉食の巨大魚で、放流されると生態系に深刻な影響を与えてしまうのだとか。 多様な生物が生息していたビクトリア湖がナイルパーチによって激変しまう様を描いたドキュメンタリー映画「ダーウィンの悪夢」は、数々の映画賞を受賞しました。 (画像リンクです) あんまり穏やかでない魚の名前のついた「女子会」は、お互いを食い合うようなどう猛さがありました。 キャリアウーマンと専業主婦の友情は、『対岸の彼女』を思い出させる設定です。が、この本で描かれるのは「他者の価値観」です。 承認欲求とはつまり、内向きのプライドなので、刺激されると暴走しがちです。そして、モンスター化していく。登場人物のヒエラルキーは、あまりにも脆いものでできている気がしました。 栄利子の場合は、学歴やお金、大手企業に勤めているキャリアウーマンであることが武器。 翔子の場合は、人気ブロガーであり、結婚して社会的に安定したポジションを手に入れていることが武器。 最初のうちこそ、自分にはできない方法で社会から承認されている相手をリスペクトして仲良くなるのですが、深く付き合うことで違う面が見えてきます。 それは、裏切りなのか。 ビクトリア湖に放流されたナイルパーチは、他の固有種を食い尽くし、絶滅に追いやりました。自分以外の存在を認めないかのようなどう猛

『ことばから誤解が生まれる 「伝わらない日本語」見本帳』#6

校閲者のお仕事本シリーズ。本日は飯間浩明さんの『ことばから誤解が生まれる - 「伝わらない日本語」見本帳』です。 ☆☆☆☆☆ 『ことばから誤解が生まれる 「伝わらない日本語」見本帳』 https://amzn.to/2Spc0k5 ☆☆☆☆☆ 著者の飯間さんは国語辞典編纂者です。最初に「言葉によって誤解が生まれる事態は避けられない」とキッパリ宣言。でも誤解されないようにすることはできるはず。だから言葉を上手に扱いましょうと、音声・文法・語義など7テーマに分けて言葉を分析・解説しています。 日本語は同音異義語が多いので、ちょっと使い方を間違うと一気に関係を壊してしまいそう。でも、これをポジティブに考えると、「誤解が生まれる元を知っておけば、気持ちのいいコミュニケーションがとれる」ということ。 なかでも、何気ない使い分けでニュアンスが大きく変わってしまう助詞の項目がおすすめです。 a「グラスに酒が半分はある」 b「グラスに酒が半分もある」 c「グラスに酒が半分しかない」 d「グラスに酒が半分だけある」 事実はひとつなのに、心象を反映してニュアンスが変わっていますよね。変えているのは、助詞です。 よく冗談で言われる「今日 は きれいね」も同じです。「は」は他のものと区別するニュアンスを持つので、「 (いつもと違って) 今日 は きれいね」と聞こえてしまう。いやいや、そんなつもりで言ったんじゃないんですよーと弁解する前に、「 (いつもきれいだけど) 今日 も きれいね」と、意識して助詞を選択できるようになりたいですね。 言葉には多義性があるので、この言い方は間違い、この使い方はNGと切り捨てないのが飯間さんのスタンスです。 飯間さんのこういう姿勢がわたしは好きなんです。 “あることばを、自分がいくら「正しい」意味で使おうとしても、相手も同様にその意味で使っているとは限りません。(中略)「これが正しい意味だ」と、みんなが納得できる規範は、結局、どこにもありません。” 「口は災いの元(門)」「もの言へば唇寒し秋の風」などなど、日本は言葉にしないことをよしとしてきたようですが、いまの時代、そんなわけにはいきません。おまけに「沈黙」していたって誤解は生じます。 「誤解」とは、「情報処理の誤り」です。この本にあるような知識があれば、思い込みで人を断罪するような解釈はなくなるのかなと感

「#1000日チャレンジ」1日目 山田ズーニー『あなたの話はなぜ「通じない」のか』 #1

今日から「#1000日チャレンジ」を始めることにしました。 「#1000日チャレンジ」とは、さとなおさんのアニサキス・アレルギーとの闘いを楽しい活動にしようという取り組みのこと。チャレンジの内容は参加者それぞれ。より詳しく知りたい方は、さとなおさんのこちらの記事を参考にしてください。 1000日チャレンジ、始めます|さとなお(佐藤尚之)|note   チャレンジの成就を願う気持ちと、せっかくだからわたしも何かやってみようと思い、こちらのふたつにチャレンジすることに。 キツイこと:本か映画を1000本紹介する できそうなこと:毎日一万歩歩く 「負け続け」から「勝ち」にいく戦略へ。 さとなおさんの #1000日チャレンジ の成就を願って、わたしも始めます! キツイこと:書評1000本書く できそうなこと:毎日一万歩歩く スタート日は2019年7月14日。 2022年4月8日まで。 https://t.co/U4typ28Wh8 — mame3@韓国映画ファン (@yymame33) July 14, 2019 というわけで、初日の書評は山田ズーニーさんの『あなたの話はなぜ「通じない」のか』です。 言いたいことがうまくまとめられない。話が回りくどくいと言われる。「結論から言え」と言われて混乱する。 そんな経験を持つ人は多いと思う。この本は、そんな悩みを持つ人はもちろん、周囲に話しが分かりにくい人がいると感じている人におすすめだ。 ☆☆☆☆☆ 『あなたの話はなぜ「通じない」のか』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ わたしはいま、校閲の仕事をしながら社内研修を担当している。講師をすることもある。 まだ数年にしかならないが、身にしみて感じていることがある。 人は人の話を聞かない。 難易度や理解力もあるだろう。でも、それ以上に、講師とメンバーの間には薄い幕がかかっているような気がしていた。ちなみに、ほとんどの講義は社内の人間に講師を務めてもらっている。 マジメな話が続くと寝てしまう。そりゃそうだ。では、とエンタメ要素を増やしてみると、「楽しかった」という感想は増えるが、3日も経てば忘れてしまう。 この間、さまざまな本を読んだり、セミナーに参加したりして、「講師の話し方」に注目してきた。 そんな中で、山田ズーニーさんの『あなたの話はなぜ「通じない」のか』が一番分かりやすくまとまっ