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『ロスト ハウス』#956

少女マンガ界で「24年組」と称されるマンガ家さんがいます。 萩尾望都さんや竹宮惠子さんら、昭和24年頃に生まれ、1970年代から活動されている方々です。 わたしの家ではマンガを買ってもらえなかったので、夏休みに従姉の家に行くのを楽しみしていました。 なぜって、従姉はマンガが好きだったから。 萩尾望都さんのマンガや、『エースをねらえ!』なんかを、布団の中で従姉と一緒に読んだんですよね。 この頃、たぶん大島弓子さんのマンガも読んだように思いますが、あんまり記憶に残っていない……。 久しぶりに『ロスト ハウス』を読み返してみると、日常の中にある違和感を描いた作品が多い。だから小学生には難しかったのかもしれません。 ☆☆☆☆☆ 『ロスト ハウス』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 表題作の「ロスト ハウス」のほか、6編の短編と、あとがきマンガが収められています。 あとがきには「猫が増えてきたし、引っ越します」という話があり、「吉祥寺駅徒歩5分、2DK」のマンションから、「一坪ほどのささやかな庭がついた小さな一軒家」へお引っ越しをされています。 引っ越しを検討しているとき、一度は契約しようとしたけど、そこから頭痛に悩まされてキャンセル。振り出しに戻ったところで、希望通りの家に出会った話は、『グーグーだって猫である』でも紹介されていました。 (画像リンクです) 昨日、2022年2月22日は「猫の日」だったと、ブログを公開してから気が付きました。今年の「猫の日」は、『グーグーだって猫である』を紹介しようと思っていたのに……。 950日も書いていて、相変わらずの計画性のなさ。 そんなフラフラしたわたしでも、生きていていいんじゃないかと思える温もりが、「ロスト ハウス」にはあるんです。なんかムリヤリ感ありますが、本当です。 突然、「北海道の話聞きたくないですか?」と、エリをナンパした仁。うっかりエリを怒らせてしまい、「一か月間、部屋の鍵をかけずに、出入り自由にできたら許す」という約束をしてしまいます。 おかげで泥棒に入られたりするんですが、エリには「散らかった部屋でボーッと過ごす」ことに特別な意味があったのです……というお話。 毎日の連続が、息苦しくなったり、色のないものに思えたりすることがあります。そんな時に読み返すのに、ぴったりなのが大島作品。手の中にある、小さな自由を大事にしよう

『さるのこしかけ』#928

天才の頭の中は、こうなっていたのか!!! 『ちびまる子ちゃん』の作者・さくらももこさんのエッセイは、これまた“電車で読んではいけない”系の本。 『もものかんづめ』『さるのこしかけ』『たいのおかしら』が、三部作として知られています。今日はここから『さるのこしかけ』を紹介します。 ☆☆☆☆☆ 『さるのこしかけ』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 『ちびまる子ちゃん』や『コジコジ』で人気マンガ家となったさくらももこさん。2018年に亡くなられましたが、その後もさくらさんの残したものは広がり続けています。 アシスタントさんが新作マンガを描かれたり、オーディオブックが発売されたり。朗読はもちろん、まる子役のTARAKOさんです。 さくらももこ「もものかんづめ」がオーディオブック化、TARAKOが全編朗読(コメントあり)   どのエッセイを読んでいても、まるちゃんの「ぐふふふ」という笑いが聞こえてきそうな、ポップさとイケズ感がありました。 『さるのこしかけ』の巻末には、周防正行監督との対談が収録されています。 ここで出た話によると……。 マンガ家になりたいけど、絵が上手くないから難しいかも ↓ じゃあエッセイストを目指そうか ↓ エッセイを書いてるのは俳優とか小説家とかマンガ家だな ↓ じゃあやっぱりマンガ家になっとこうか という流れで、マンガ家になったのだとか。 (!!!!!!!!!!) インド旅行や痔、骨折に離婚と、人生のすべてを「ネタ」にするためには、目の前に起きている事象と自分の心の間に「距離」が必要なわけで、さくらさんは「観察の天才」だったのですね。 自分のことも、周囲のことも、すべてを笑いに転換する力。見習いたい。

『カイジ「したたかにつかみとる」覚悟の話』#914

『カイジ』って、こんな話だったのか!! 原作のマンガは読んだことがなく、映画版を観て「うーーーーん」となって。原作と映画はだいぶ違うよ!!と聞いて、「ふーーーーん」程度の反応しか示せないくらい、私の中で距離があったのですが。 経済ジャーナリストである木暮太一さんの『カイジ「したたかにつかみとる」覚悟の話』を読んで、やっと人気の秘密が分かった気がしました。 ☆☆☆☆☆ 『カイジ「したたかにつかみとる」覚悟の話』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 『賭博黙示録 カイジ』とは、福本伸行さんの代表作で、全13巻のマンガです。 (画像リンクです) 自堕落な日々を過ごしていた伊藤開司(カイジ)が、自分が保証人になっていた借金を押しつけられ、ギャンブル船「エスポワール」に乗り込む……というお話です。 藤原竜也さんが「カイジ」を演じた映画版なら観たことがある、という方もいるかもしれませんね。わたしもそうでした。 (画像リンクです) わたしの数少ない「経営者」の知人から、絶大な支持を得ているマンガのひとつでもありました。 でも、映画版を観ただけのわたしには、とても不思議だったんですよね。 いったい、どこにそんな魅力が?(映画が好きな方、ごめんなさい……) 「カイジ」は特別なスキルを持っているわけでもなく、努力の天才というわけでもありません。むしろ逆。自分に甘く、のらりくらりとした暮らしを送っていただけ。 でも、命のやり取りをする現場に放り込まれて、どんどんと変わっていきます。 彼を変えたのは、覚悟。 勝つために世の中のルールを知れ。そして他人が決めたルールに振り回されるな。 そんな進化の魅力が、『カイジ「したたかにつかみとる」覚悟の話』でやっと分かりました。本は経済の話が中心ですが、自分の人生を生きるためのマインド形成にも役立つエキスが満載です。 こういう進化を遂げられれば、人生はエキサイティングになるのかも。でも、命のやり取りはイヤだな。 「会社員」を卒業したいま。読みたかったマンガを制覇しようと、ひとつずつ味わっているところです。 さぁ、読書タイムだ。かなり眠いけど🥱 pic.twitter.com/nOzdnpHT6d — mame3@韓国映画ファン (@yymame33) January 6, 2022 次は『カイジ』にするかな。

『ナナ&ハチ プレミアムファンブック!』#878

ヴィヴィアン・ウエストウッドに、ブラックストーンの香り。 矢沢あいさんのマンガ『NANA』に触発され、すっかり「NANA」化していた友人がいました。 ブラックストーンは煙草の中でも香りが強いので、一緒に行ったレストランで「葉巻はご遠慮ください」と止められたことも。 ひところ夢中になって読んでいた『NANA』。 衝撃的なシーンを描いた後、2009年8月号から休載が続いています。いまも待ち続けるファンを慰めてくれるのが、『ナナ&ハチ プレミアムファンブック!』です。 ☆☆☆☆☆ 『ナナ&ハチ プレミアムファンブック!』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 大阪モード学園を中退し、マンガ家となった矢沢あいさん。敬愛する「矢沢永吉」の名前からペンネームをつけたそう。 『ご近所物語』や『Paradise Kiss』など、ファッションを学ぶ高校生が主人公のマンガもありましたよね。 (画像リンクです) (画像リンクです) とはいえ、掲載されていた雑誌「りぼん」では乙女チック路線から外れていたため、掲載順は後ろの方だったのだとか。 99年に創刊された「Cookie」で発表した新作『NANA』が大ヒット。アニメ化・映画化もされました。 ストーリーは、同じ「なな」という名前を持つ、同い年の女の子が知り合うところから始まります。 東京に住む彼氏を追いかけて新幹線に乗った小松奈々と、ミュージシャンとして成功するために東京に向かう大崎ナナ。席が隣り合わせになり、大いに盛り上がります。東京で再び出会ったふたりは同居生活をすることに。 その後、ナナのバンド仲間と仲良くなり、ナナのむかしのバンド仲間が登場し、といった感じで輪が広がっていきます。 「誰かと誰かがヤッたことに泣いて、誰かと誰かはヤッてくれないことに泣く話」 とまとめてくれた友人もいましたが、まぁ、そういうところもあったかも。 いまあらためて考えてみると、「奈々」は不思議なキャラクターだったなと思います。見事なくらいに「からっぽ」なんですよね。仲のいい友だちが行くから専門学校に進学し、友だちが東京の芸大を受けるから自分も行きたいと言い出し、彼氏が東京に行ってしまったから、自分も上京する。 ナナと知り合った後も、確固たる夢をもっているナナとは違い、「奈々」は応援するだけ。 というか、次々に恋をしているだけ。 その「からっぽ」さが、「ナナ」とい

『一度きりの大泉の話』#875

なぜ、少女マンガ家たちの聖地は、聖地になれなかったのか。 昭和を代表するマンガ家たちが暮らした「トキワ荘」は、いまでは「豊島区立トキワ荘マンガミュージアム」として聖地になっています。 豊島区立 トキワ荘マンガミュージアム 昭和を代表するマンガ家たちが若手時代に暮らした木造2階建てのアパート「トキワ荘」。その外観・内装等を忠実に再現した、「マンガの聖地としま」の発信拠点となるミュージアム「豊島区立トキワ荘マンガミュージアム」の紹介ページです。   同じように、少女マンガ家の卵たちの交流の場となった借家が、「大泉サロン」。地方から上京した竹宮惠子さんと萩尾望都さんは、この家で同居生活を送っていて、多くのマンガ家たちが集まったのだそう。 同居生活は、1970年から1972年のたった2年間。 「距離を置きたい」 竹宮さんにそう告げられた萩尾さんは、訳が分からないまま、ひとり暮らしを始めます。親しくしていたマンガ家仲間もいるし、アシスタント同士の交流もあり、噂話がチラホラと漏れ聞こえるわけです。 2019年に竹宮惠子さんが『少年の名はジルベール』を出版し、その後、萩尾さんのところにも取材依頼が多くあったそうですが、萩尾さんは沈黙を保ってきました。 ですがあまりに多いため、答えの代わりにと出版されたのが、『一度きりの大泉の話』です。 ☆☆☆☆☆ 『一度きりの大泉の話』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 福岡に暮らしていたマンガ好きの少女・萩尾さんは、竹宮さんに誘われて大泉にある借家で暮らし始めます。両親にはマンガを描くことを反対されていて、覚悟の上京だったようです。 地方出身のふたりにとって、心強い味方となってくれたのが、増山法恵さん。プロのピアニストを目指していたこともあって、クラシックや文学に詳しく、マンガのアイディアを豊富に持っていた、という方です。 この3人の関係がこじれたため、同居生活は解消されたといわれてきました。 読んでみて思ったのが、「まぁ、そんなひと言で言えるような簡単なことではないわな」です。 実際に竹宮さんは「大泉サロン」を出た後、スランプに陥っていたそうで、『少年の名はジルベール』には、その辺りの話も出てきます。ドン底に落ちた創作意欲を、一から立て直していくところに惹かれました。 基礎の反復で壁を越える『少年の名はジルベール』 #83   大泉時代のマンガ

『私の少女マンガ講義』#874

萩尾望都さんって、「少女マンガ」の神様だったのか!!! ある意味、「そこ!?」と言われそうなところから衝撃を受けたのが、『私の少女マンガ講義』でした。萩尾望都さんがイタリアで行った少女マンガ史の講義録とインタビューが収録されています。 ☆☆☆☆☆ 『私の少女マンガ講義』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 我が家はとんでもなく貧乏で、子どものころは「マンガ雑誌」というものを買ってもらえませんでした。近所に本屋さんもなかったので、学校の図書館か、公立の図書館に行って「文字」の本を借りてくるくらい。 「絵」の書いてある本を読めるのは、夏休みや冬休みに親戚宅に泊まった時だけだったんですよね。『エースをねらえ!』や『ベルサイユのばら』があったので、何度も何度も読んでいました。 こうしたマンガとは、ちょっと違う世界だな……と子ども心に感じていたのが『ポーの一族』。萩尾望都さんの代表作です。 (画像リンクです) イタリアでの講義は、「日本ではマンガはどのような場所に売られていて、どのような人に読まれているのか」から始まります。 日本では、コンビニでも本屋さんでもマンガ本やマンガ雑誌が手に入りますが、海外では事情が違います。 以前聞いた話によると、アメリカの場合、オトナが目にするところにマンガがないのだそうです。『SHONEN JUMP』がアメリカに進出した時には、書籍流通の仕組みが日本とは違うため、定期購読者を増やすことで読者を増やしていったそう。 少年ジャンプが転機「漫画海外進出」の難しさ | ゲーム・エンタメ   ところが、イタリアでは駅の売店で『名探偵コナン』や『NARUTO -ナルト-』が売られていたそうで、日本のマンガの受容度が全然違ったようです。 講義では、手塚治虫さんの『リボンの騎士』から『大奥』まで、多様なマンガが取り上げられています。質問者の質問内容も鋭いものばかり。 Q.:日本では、マンガが映画やテレビドラマの原作になっていますが、それはマンガ家にとってどういう意味があるのでしょうか。 萩尾さん:『イグアナの娘」をドラマにしたいという話が最初に来たときには、実は断りました。だってイグアナですよ? こんな打ち明け話も披露されています。 先人が築き上げた歴史への敬意。少女マンガの黄金時代に、読者と編集者に鍛えられ、成長していったこと。作品を生み出す原動力。ひとつひと

『『キングダム』で学ぶ最強のコミュニケーション力』 #850

「お前は何者だ?」 「天下の大将軍になる男だ」 こんな答えを聞いて、「かっこいー!」と思うか、「アホか!?」と思うかで、その後の付き合いは変わってしまいそうですよね。 原泰久さんの人気マンガ『キングダム』の主人公・信の言葉を実際に聞いたとしたら、どれだけのオトナが信じるでしょう? わたしは3年前にコーチングの資格をとり、いまもう一度勉強しなおしています。その過程で、「あぁ、そうだった」と思い出したのが、「相手をジャッジしない」ということでした。 ボロボロの服を着た小僧が「天下の大将軍になる」と語っても、まともに相手にしないのは、相手をジャッジしているからです。 『キングダム』は、コーチング視点で読んでも学びが多いとのことで、今日は、馬場啓介さんの『『キングダム』で学ぶ最強のコミュニケーション力』 を紹介します。 ☆☆☆☆☆ 『『キングダム』で学ぶ最強のコミュニケーション力』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 馬場啓介さんは、コーチングを提供し、コーチの育成にも取り組んでおられる方です。 公式サイト https://babakeisuke.com/ 馬場さんが『キングダム』の中で最高のコーチと呼ぶのは、王騎将軍の副将を務める「騰」です。理由は、自己認識力に長けているから。 マンガ×コミュニケーション論ということで、とても読みやすいのですが、わたし自身は『キングダム』を3巻くらいまで読んで休憩中だった……。「騰」が登場するところまでいっておらず、他に紹介されている登場人物も、まだ会ってない人が多かったんですよね。でも重要なシーンは、マンガそのものが掲載されています。なので、知らないシーンでもちゃんと話に付いていけました。 大将とNo.2のめっちゃ胸アツな台詞を、コーチング視点で距離感、信頼関係などから読み解くという、1冊で二度おいしい本です。 リーダー職やマネジメントをしている方には、特におすすめ。 ちなみに、うちの会社のライブラリーには、『キングダム』を全巻そろえております。営業とバックオフィス、男性と女性で分断されがちなので、共通言語を作ろうと考えたんですよね。 置いてみたら、女性メンバーの方が熱心に読んでいます。馬場さんの本を読んで、ますますマンガを読みたくなりました。今週はオフィスに行かなくちゃ!

『観察力の鍛え方 一流のクリエイターは世界をどう見ているのか』#824

社会人デビューをした時は、習得しないといけないスキルが山ほどありますよね。 パソコンや敬語といった基礎的なものから、SNSの使い方、営業トーク、コミュニケーションなどなど。その上、データを読み解く力や、論理的思考といった、より高次な思考力も求められるように。 中には器用にこうしたスキルを身につけてステップアップしていく方もいますが、いったい何が違うんだろう? 「学ぶ(まなぶ)」の語源は、「真似ぶ(まねぶ)」といわれていますが、ほぼ同じ時代に登場するそうで、どちらが先だったのかははっきり分かっていないそう。 ただ、「真似る」のが「学ぶ」近道であることは、確かだろうと思います。 佐渡島庸平さんの著書『観察力の鍛え方 一流のクリエイターは世界をどう見ているのか』は、まさに「真似て学ぶ様子=観察力」を「観察」した本です。 タイトルには「鍛え方」とありますが、「こうすれば鍛えられる!」というハウツー本ではないところがおもしろいところ。佐渡島さん自身が、ああだろうか、こう思うんだけど、という思考の過程を開示されていて、その道のりを追っていくことができます。 ☆☆☆☆☆ 『観察力の鍛え方 一流のクリエイターは世界をどう見ているのか』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 佐渡島さんは、編集者として三田紀房さんの『ドラゴン桜』や小山宙哉の『宇宙兄弟』などの人気マンガを作り出した方です。 元ゴールドマン・サックスの金融マンだった田内学さんが、初めての著書『お金のむこうに人がいる』を書くきっかけを作った方でもあります。 『お金のむこうに人がいる』#823   アートディレクターである水野学さんは「センスのよさとは、数値化できない、事象のよし悪しを判断し、最適化する能力」のこと、と語っています。 能力ということは、誰でも磨いて伸ばすことができる“はず”なんですよね。 わたしを悩ませる“センス”の正体 『センスは知識からはじまる』 #183   たぶん「観察力」もこれと同じで、誰でも磨いて伸ばすことができる“はず”なんです。 佐渡島さんは新人マンガ家を育成する際、いいクリエイターの条件として「観察力」に優れていることを挙げておられます。 “インプットの質が良ければ、最終的にアウトプットの質も良くなる。インプットの質を高めるのが「観察力」だ。” こうした考えをお持ちの佐渡島さんが、新人マンガ家さん

『ブタが好きすぎてハンガリーの国賓になりました』#770

ウソみたいなホントの話が、うらやましすぎた!! くるくる巻き毛のブタ「マンガリッツァブタ」ってかわいいよねーとマンガを描いていたら、ハンガリーから招待されてしまったというお話です。 しかも、「国賓」として! 貴重な体験をエッセイをマンガで紹介しているのが、松本救助さんです。 ☆☆☆☆☆ 『ブタが好きすぎてハンガリーの国賓になりました』 https://amzn.to/3yXgmPr ☆☆☆☆☆ 「マンガリッツァブタ」は、品種改良で生み出されたハンガリー固有の、希少種の豚です。一時は絶滅の危機に陥り、国を挙げて養豚を支援。いまでは国宝に指定されています。 一瞬、どっちが顔か分からないくらいモッサモサです……。 (画像はWikipediaより) わたしはブタが好きで、旅行のお土産にもブタ関連のものをもらうことが多いんですよね。これは鹿児島のお土産です。しかも、同じものを別の友人からももらったがあります。 松本さんも、ただただブタさんが好きでマンガを描いていたのだそう。「マンガリッツァブタ」がバーテンダーというマンガを投稿したところ、大使館から連絡が来て、招待されることになり、でもひとりで行くのは不安だし……みたいな展開が、ユーモアたっぷりに描かれています。 不思議なご縁がつながったという、「ブタへの愛」がもたらした奇跡の物語。きっかけとなったマンガ「Bar:Mangalica」は、松本さんの連載デビュー作で、現在、noteで読むことができます。本には「特別編」を収録。 Bar:Mangalica6話目「ある日のMangalica」 https://note.com/mtq/n/n2e182452b66d?magazine_key=maa75ec9f09a4 ハンガリー側としては、国宝である「マンガリッツァブタ」のことを、ただただ「正しく」知ってほしいと思っている。その一心が伝わってきます。 心から、うらやましいしかない展開。将来どうなるかなんて下心は置いておいて、やっぱり「好き」を大事にしたいなと思ったのでした。

『おとなになるのび太たちへ: 人生を変える『ドラえもん』セレクション』#727

たぶん誰もが一度は叫んだことがあるのではないでしょうか。 「助けて! ドラえもーん!」 明日で夏休みが終わる日とか、ウソがばれちゃったとか。あの時、ドラえもんがいてくれればどれだけ心強かっただろう……。 わりと利己的な記憶でドラえもんに愛着をもっていたけれど、わたしが見ていたのはテレビのアニメ。マンガの方は、ぜんぜん読んだことがありませんでした。 『おとなになるのび太たちへ』は、俳優や小説家、ラグビー選手や宇宙飛行士ら、それぞれの職業でトップとなった10人がレコメンドする、ドラえもんセレクションです。 ☆☆☆☆☆ 『おとなになるのび太たちへ: 人生を変える『ドラえもん』セレクション』 https://amzn.to/3AQ3mwn ☆☆☆☆☆ 『ドラえもん』といえば、グータラなのび太くんが困ったら助けてくれる=甘やかしてるんじゃないかと思ってきたのですが。 菅田将暉さんがおすすめしている「サンタメール」の回は、 「見直したよ、のび太くーん!」 なんて声が鳴り響きました。もちろん、大山のぶ代さんの声で。 クリスマスに欲しかったラジコンがもらえなかったのび太くん。ガッカリしていると、ドラえもんが「サンタメール」なる葉書をくれるんです。そうして、望み通りのプレゼントを手にいれちゃう。 ここからがすごいんです。 「ぼくだけ楽しんじゃ悪いから」と、つかい残した葉書をみんなに配るんです。その善意が、とんでもない苦労を呼び込むとも知らずに……。 のび太くん自らが、「みんなのために」と動くなんて新鮮! 途中ですぐに疲れちゃうヘタレだけど、最後までやり抜く! うわー、こんなお話があったんだとビックリでした。 菅田さんはこの話をおすすめする理由を、こんな風に説明しています。 “「夢がない世の中」だからこそ 「夢のある世界」を 作っていかなきゃいけない” おとなになってから、子どものころ好きだったものに触れると、むかしとは全然違うところに感動している自分に気付きます。それはわたしが現実と折り合いをつける方法を身につけたということなのかもしれないし、そこそこ・ほどほどで妥協することができるようになったということかもしれない。 それこそが、「おとなになる」ということなのかもしれない。 でも。 「おとなって、そんなにつまんないものじゃないよ、のび太くん」と、いつでも言えるようにしたいと思ったの

『薔薇はシュラバで生まれる』#658

「水面を優雅に浮かぶ白鳥も、水面下では必死に足をもがいてる」 実際には本当に「浮かんでいる」だけらしいですが、努力の必要性を説くときによく使われる言葉です。目に見えるキラキラ感と、裏側のギャップ。 それはまさに、マンガの世界に当てはめられるのかもしれません。 マンガの制作現場というと、手塚治虫が暮らした「トキワ荘」が有名ですよね。少女マンガなら竹宮惠子や萩尾望都の「大泉サロン」も聖地のように言われています。 でも、現実の世界はむしろ“シュラバ”! 『薔薇はシュラバで生まれる』の著者である笹生那実さんも、数々の“シュラバ”を経験してきたマンガ家さんです。でも、その現場が……。 美内すずえ!!! ナマで「紫のバラの人」を見てたの!?と思ったら、その頃は別の連載をされていたそうです。とはいえ、笹生さんのマンガで再現される当時の状況は、十分に『ガラスの仮面』です。アシスタントデビューでの大失敗や、眠気さましの怪談など、“シュラバ”の様子が生き生きと(?)綴られています。 ☆☆☆☆☆ 『薔薇はシュラバで生まれる』 https://amzn.to/2SJNCsY ☆☆☆☆☆ マンガ家のアシスタントは、専属なのかと思っていたのですが、デビュー間もないマンガ家同士で助け合うこともあると、竹宮惠子さんのエッセイ『少年の名はジルベール』で知りました。 『少年の名はジルベール』 https://note.com/33_33/n/n11004581a61a こちらは才能に苦悶する竹宮さんの過去が綴られています。薔薇な“シュラバ”をより味わいたい方には、こちらもおすすめ。 笹生さんは、本当に多くのマンガ家さんの現場におられたのだなーと感じます。なぜなら、紹介しているマンガ家さんの絵が、そのマンガ家さんのタッチで描かれているから。 どれほどマンガを愛し、現場を愛していたのかが伝わるお仕事青春エッセイです。

『チャンネルはそのまま!』#651

『動物のお医者さん』の佐々木倫子さん。今度の舞台は北海道のテレビ局! 新人記者の雪丸花子が奮闘するコメディです。 ☆☆☆☆☆ 『チャンネルはそのまま!』 https://amzn.to/2Slb5Ar ☆☆☆☆☆ 一所懸命にやればやるほど、天然が炸裂。見事なほどに周囲をイライラさせるんですが、求心力はあるんですよね。というか、ほっとくととんでもないことをやらかしそうで、目が離せない。 事件取材で「裏取りを忘れるなよ」と指示された花子。キルト展での取材でもそのアドバイスを思い出します。「ウラ……。ウラこそ大事なのか!」と気がついて。 キルト作品を全部裏返して撮影しちゃうんです。 新人の発想って新鮮ですね……。そんな認知のズレにしみじみ戦慄するシーンもあります。 わたしは会社で研修を担当していて、今年も新卒・中途入社の方に研修を行いました。素直な人、マジメな人、イケイケの人、いろんなタイプの人を見ながら、ふとこのマンガのことを思い出していました。 雪丸花子が勤める北海道☆テレビに伝わる噂です。毎年、ひとりだけ「バカ枠」として採用される人がいるとか、いないとか……。 (お前やー!!!) と叫びたくなるほどの無鉄砲記者・雪丸花子だって、“先輩”になっていく。うちの会社には「バカ枠」はなさそうだけれど(そもそもそんな採用はしていないはずw)、バカがピンチを切り開き、新しい視点で会社を引っ張っていってくれるなら。 楽しみでしかない。 こんなバカを矯正しようとしない会社の方が、生き残れるんじゃないかと思えるマンガです。読んでる間は、ただただ笑ってただけですけどね。

基礎の反復で壁を越える『少年の名はジルベール』 #83

かつての少女マンガといえば、フリフリでブリブリでクルクルな感じでした。そこに男同士の友情やBLを持ち込んだのが、竹宮惠子をはじめとする「大泉サロン」の漫画家たちです。 今日は少女マンガ界に革命を起こした漫画家・竹宮惠子さんの半生を綴った本『少年の名はジルベール』をご紹介します。 ☆☆☆☆☆ 『少年の名はジルベール』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 石ノ森章太郎先生に憧れ、徳島から上京した竹宮惠子と、福岡からやってきた萩尾望都、そしてふたりのブレーンとなる増山さん。練馬区大泉のアパートで始まった同居生活は、後に「大泉サロン」と呼ばれるようになります。 漫画家仲間はもちろん、漫画家になりたい人、マンガが好きな人が集まり、夜な夜な繰り広げられる議論と、ラブリーな少女マンガを描いてほしいだけの編集者とのギャップは大きくて、「僕の前に道はない 僕の後ろに道は出來る」という高村光太郎の詩を思い出してしまいます。 そしてこの時期に議論されていたことは、今もまだあちこちで解決されていないのです。世の歩みのなんと鈍いこと! 普通でも共同生活は難しいのに、漫画家が二人+サロンに集う漫画家志望の女の子たち。互いに刺激しあえるうちはいいですが、誰かに圧倒的な才能を感じてしまうと厳しくなりますよね。 たった2年でサロンは解散、ようやく読者の目を意識できた竹宮さんも迷路を脱出。本当に描きたかった、ずっと温めていた漫画を描けるようになります。 やったことは、基礎の反復です。型があってこそ「型やぶり」ができる。感性だけで描いていた表現から、基礎をやり直し、自分の表現を手に入れていく辺りは、読んでいてゾクゾクしました。 往年のマンガファンだけでなく、表現に関わる仕事をしたいと思っている方におすすめ。