詩人に見えている世界は、凡人のわたしとはなんて違っているんだろう。
うだつの上がらない詩人が、ひとりの青年に出会ったことで自分の世界を開いていく。
でも、トキメキの対象は同性の青年。妻は妊活中で、現実と恋との板挟みになってしまうんです。その姿が、ひたすら愛おしくて痛々しかった。
済州島を舞台に、ヤン・イクチュンを主演に迎え、詩人の心の揺れを映画化したキム・ヤンヒ監督は、これが長編デビュー作です。
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映画「詩人の恋」
オフィシャルサイト
https://shijin.espace-sarou.com/
DVD
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済州島で生まれ育った詩人テッキは、スランプに陥っていた。稼げないテッキを支える妻のガンスンが妊活を始めたことから、人生に波が立ち始める。乏精子症と診断され、詩も浮かばずに思い悩むテッキは、ある時、港に開店したドーナツ屋で働く美青年セユンと出会う。セユンのつぶやきをきっかけに新しい詩の世界を広げることができ、セユンについてもっと知りたいと思うようになるが……。
朝鮮半島の南西部にある済州島。自然に恵まれた火山島なんですが、風と石と女が多いため、「三多島」とも呼ばれています。
伝統的に女性が強いそうで、テッキも完全に主導権を妻に握られています。詩を読む会で酷評され、家に帰って「ボクっておデブかなー?」と聞くところなんて、かわいいしかない。
(画像は映画.comより)
しっかり者の妻のおかげで、自分自身は現実に対峙せずに済んでいたところもあったんですよね。5センチくらい宙に浮いているような感じ。
でも、ドーナツ屋の青年にときめいちゃってからは、「生きる」ことに対して積極的になっていきます。寝てるけど。
そんなテッキを微笑ましく見守りながら、わたしの頭の中を占めていたのは。
「クリスピー・クリーム・ドーナツ」が食べたい。
「クリスピー・クリーム・ドーナツ」が食べたい。
「クリスピー・クリーム・ドーナツ」が食べたい。
行ってきました。
わたし、オリジナル・グレーズドが好きなのですけど、テッキのマネをしたくて、いろんなドーナツを買ってしまった。
ああ、なんか、詩人とは見ている世界が違いすぎて、自分で自分にガッカリしてしまう……。
テッキ役のヤン・イクチュンがみせるモジモジしたおっちゃん感はたまらないし、美青年役のチョン・ガラムは、相変わらず美青年なので、ちょっと「ベニスに死す」を思い出しました。
チョン・ガラムといえば、「感染家族」で、かわいいゾンビを演じた青年です。「藁にもすがる獣たち」など、名優たちとの共演が続いていますね。ここからドンドン伸びていくはず。
ただ、テッキ自身も、自分の気持ちに戸惑っていたように思えます。貧しい美青年を想うこの気持ちは、「同情」なのか、「恋」なのか。
その気持ちが詩人としての「才能スイッチ」を押してしまうのだから、人生ってせつない!
5センチくらい宙に浮いていた、詩人の恋の行方。ぜひ、見届けてください。現在、Netflixで配信中です。
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映画「詩人の恋」
https://www.netflix.com/title/80209030
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映画「詩人の恋」110分(2017年)
監督:キム・ヤンヒ
脚本:キム・ヤンヒ
出演:ヤン・イクチュン、チョン・ヘジン、チョン・ガラム
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