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『西の善き魔女』#776


先日、自分の「価値観」と「仕事の真価」を探るワークを実施しました。いろいろ考えながらキーワードを整理していて、あぁ、これかもと拾い上げたワードに、自分でも笑ってしまった。

わたしにとって大切で、心躍るもの。それは、「冒険」でした。

仕事の上では、チャレンジが好きで、チャレンジする人を応援したいタイプです。プライベートでは、ファンタジー小説やミステリーが好き。他にもいろいろ自分が好きなものを挙げていくと、行き着くのは「冒険」。

荻原規子さんの『西の善き魔女』シリーズは、出生の秘密、異国への旅、学園生活と、辺境の地育ちの少女が大冒険するお話で、ワクワクが満載でした。

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『西の善き魔女』

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<あらすじ>
辺境の地セラフィールドで生まれ育った15歳の少女フィリエル。初めての舞踏会の朝、幼なじみの少年ルーンから、亡き母の首飾りを渡される。フィリエルの父で、行方不明の天文学者ディー博士が託した品だったが、従姉のアデイルによって女王試金石であることが判明。フィリエルは全寮制の修道院で学ぶことになるが……。


わたしが持っているのは中公文庫のシリーズですが、これは新装版。C★NOVELSファンタジア版や、ハードカバー、角川文庫版などがあるのでややこしいですが、「外伝」の入り方が違うだけで、だいたい8巻のシリーズです。(“だいたい”って……)

I:セラフィールドの少女
II:秘密の花園
III:薔薇の名前
IV:世界のかなたの森
V:銀の鳥プラチナの鳥(外伝・IVとVIの間の話)
VI:闇の左手
VII:金の糸紡げば(外伝・Iの前日譚)
VIII:真昼の星迷走(外伝だけど、実質最終巻)


タイトルがル=グィンの異名である「The Good Witch of the West」、サブタイトルに彼女のSF作品の名前を使っていたりと、思い入れの強さが感じられるのですよね。

それもそのはず。

荻原さんが大学時代に所属していた、児童文学研究会で初めて完成させた小説が基になっているのだそう。

学園ものにあたる第2巻の「秘密の花園」では、学生たちがヒミツの活動をしているんですが、研究会での活動の思い出がベースになっています。

シリーズの中でわたしが好きなのも、「秘密の花園」です。国中から集められた女子学生たちが学ぶ内容を知って、思わず本を落っことした!

くノ一学園かよ!?

そんな展開もありつつ、幼なじみの少年ルーンとの友情と恋、出自の秘密、父がとりつかれた世界など、ひとつずつ謎が解けていく醍醐味があります。

純和風なファンタジーである『空色勾玉』から一転、洋風な世界に飛び込んだ感も。


壁にぶち当たっても、心が折れそうになっても、自らの求めるものに愚直に立ち向かう人たち。フィリエルの冒険談は、ワクワクと心躍るのですよ。


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