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でぶりんの観察日記 #1:上手なお願いの仕方が知りたい

冷蔵庫にオリーブオイルが入っていたのを発見したとき。 あなたなら、パートナーになんと言いますか……!? 土曜の夜にこんばんは! 1000日間もブログを書いたんだし、もういいんじゃない……!? と思っていたんけどね。 一度休んだら、もう二度と立ち上がらない気がしたので、一週間に一度くらい、お気軽なものを書いてみようと思いつきました。 名付けて、「でぶりんの観察日記」です。 「でぶりん」とは、わたしのダンナの名前です。いえ、本当の名前は別にありますが、わたしの友人の間ではずっと「でぶりん」と呼ばれております。 本人もうっすら気に入っているっぽいです。 ちょうど2年ほど前の2020年の3月半ばからリモートワークとなり、お互い家にいる時間が増えました。 これが、とてもありがたい展開になったんだけど……というお話です。 リモートワークが始まったころ、会社の同僚の中でも、子どもさんのいるメンバーや、部屋数の少ない家からオンラインで仕事をしている人は、なかなか大変そうでした。 でも、ありがたいことに、我が家はオトナふたり。 自分のことは自分でやってね!! と言いつつ、20年間、家事はわたしひとりが担当してきました。料理も後片付けも、掃除も洗濯も、税金の支払いもご近所づきあいも、全部です。 そして、リモートになったタイミングの3月から4月は、わたしが一番忙しい時期。おかげで、でぶりんは、 「この人、朝から夜中までずーーーーーっとパソコンの前に座ってる!?」 と感じたようです。本当はブログを書いたり、Netflixを観たりしているのだけど、でぶりんにその違いは分からないのですよ。フフフ。 その後、でぶりんは早期リタイアをし、ずっと家にいる状態になりました。 で、変わったんですよ。 家事をしてくれるようになったんです!! これには本当に驚きました。いまだに料理はできないので、でぶりんの担当は、居間やキッチンの掃除と、ご飯の後片付けですが、買出しにも付き合ってくれるようになりました。 ずっと「1000日チャレンジ」中でしたから、できるだけ歩きたい、でも重いものを持って歩くのは大変……と感じることが多かったので、とてもありがたかったです。 ふたりで車でスーパーに行き、わたしはそのままお散歩へ。でぶりんは家に帰って、買い物したものを冷蔵庫や冷凍庫に入れる係に。 冷蔵と冷凍の区別はできな

ドラマ「レディプレジデント〜大物」#969

今日3月8日は「国際女性デー(International Women’s Day)」です。 1904年、ニューヨークで婦人参政権を求めたデモがあり、それを記念して制定されたのだとか。 日本で女性が初めて参政権を行使したのは、1946年4月10日。戦後初めての衆議院議員総選挙が行われ、約1,380万人の女性が初めて投票し、39名の女性国会議員が誕生。 女性の参政権の獲得に尽力した市川房枝さんは、柚木麻子さんの小説『らんたん』にも登場します。戦争中の「銃後の守り」への協力と引き換えに、参政権にイエスと言わせた……ような描かれ方をしていました。初めての選挙のときは、公職追放処分を受けていて投票できなかったそう。 『らんたん』#963   2030年までに達成すべきSDGsには、「目標5:ジェンダー平等を実現しよう」がありますが、日本では劇的に進んだ……ようには感じられないですね。正直に言って。 世界経済フォーラムが公表した「ジェンダー・ギャップ指数2021」によると、日本の順位は156か国中120位。韓国は前年の108位から102位へと、前進しました。 家父長的な社会の空気や男性中心の組織文化、“飲みニュケーション”も盛んな韓国では、長く女性の社会進出が難しいといわれてきました。 自ら「フェミニズム大統領」と名乗った文在寅大統領が強力に「男女公正」を進めたおかげで、順位がアップしたようです。 そんな文大統領の任期も今年の5月9日まで。明日3月9日に、次の大統領を選ぶ選挙の投票が行われます。誰が選ばれるのか、今後の世界はどうなるのか、気になるところです。 かつてパク・クネ大統領が、女性として東アジア初、韓国史上初の大統領に就任した際は、どうしてもドラマ「レディプレジデント〜大物」と比べてしまいました。 コ・ヒョンジョン演じる、初の女性大統領に吹き付ける風圧に驚き、彼女を支え、10年愛を貫くクォン・サンウの純愛が光るドラマです。 ☆☆☆☆☆ ドラマ「レディプレジデント〜大物」 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ <あらすじ> アナウンサー採用試験へ向かっていたソ・ヘリムは、偶然、不良少年のハ・ドヤと知り合う。数年後、ソ・ヘリムの夫がアフガニスタンで殺害され、ヘリムは番組内で政府の対応を批判。会社を辞めることに。一方のハ・ドヤは検事となり、政治家の収賄事件を調査するようになり……。

『らんたん』#963

なぜ、学ぶのか。 答えは人によっていろいろだと思います。わたしは知識を得ることで見る目を養い、自分の言葉を獲得することが楽しいと感じるし、なにより世界が広がることがうれしい。 でも、これは学んだ立場からの結果論かもしれないですね。 子どもなら、ウニョウニョして訳の分からない文字を追うよりも、野原で犬を追いかけていた方が楽しいですもん。 恵泉女学園の創立者・河井道もそうでした。 教育を受けられなかった母から諭されるも、学校から逃げ回った河井道。親の都合で三重から北海道へ移住した後、ようやく学ぶことのおもしろさに目覚めます。 女性に対する教育が当たり前ではなかった時代に、アメリカ留学を果たし、教育に生涯を捧げた人生。 柚木麻子さんの小説『らんたん』は、そんな河井道の「光をシェアする」精神を描いた小説です。 ☆☆☆☆☆ 『らんたん』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 大正最後の年。かの天璋院篤姫が名付け親だという一色乕児は、渡辺ゆりにプロポーズした。 彼女からの受諾の条件は、シスターフッドの契りを結ぶ河井道と3人で暮らす、という前代未聞のものだった……。 河井道が、「シスターフッド」の関係にあった渡辺ゆりと共に、1929年に創立した恵泉女学園は、いまでは中高一貫校となり、大学もあります。で、実は柚木麻子さんの母校でもあるそう。 恵泉女学園について | 学校案内 | 恵泉女学園 中学・高等学校   河井道は伊勢神宮の神主の娘として生まれたにも関わらず、洗礼を受け、キリスト教に改宗。アメリカのブリンマー女子大に留学する機会に恵まれるなど、高等教育を受けられた女性なんです。 道に学ぶことの喜びを教えてくれた人々が、とにかく豪華。明治から大正、昭和にかけての女性運動、女性の教育運動に関わった人たちが多く登場します。 北海道で出会ったのは、新渡戸稲造。五千円札の人です。河井道が留学する際、一緒の船に乗るんですが、長旅に飽きた新渡戸に、「日本を紹介する本を英語でお書きになっては?」と提案。それが『武士道』です。マジか。 (画像リンクです) 留学を勧め、手配してくれたのは津田梅子。現在の津田塾大学の創立者です。アメリカでは偶然出会ったご夫婦がロックフェラー家の人だったり、野口英世に会ったり。反抗的な教え子の中には、平塚らいてうがいます。北海道時代からアメリカ、東京でも「腐れ

『ミシンと金魚』#959

どれだけ孤独が好きだったとしても、友だちと呼べる人が少なかったとしても、ひとりじゃない。 永井みみさんの『ミシンと金魚』を読みながら、あらためてそんなことを感じました。 主人公は、認知症を患う「カケイさん」です。人生の軌跡を可視化するライフチャートなんか書いたら、「ドン底期」しかないんじゃないかと思うほどの人生。 その中にあった、幸せの時間とは? ☆☆☆☆☆ 『ミシンと金魚』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 永井みみさんは、ケアマネージャーとして働きながら、この小説を書き上げ、第45回すばる文学賞を受賞。絶賛されているレビューをTwitterで見かけて、さっそく読んでみました。 物語は、「カケイさん」のひとり語りで進みます。というか、超絶マシンガントークで、「カケイさん」の日常が浮き彫りになっていく。 デイサービスと、息子の嫁の介護を受けながら、ひとりで暮らしている「カケイさん」。嫁の名前はかろうじて覚えているんですが、デイサービスで出会う介護士たちは、みんな「みっちゃん」という名前で認識されているんです。 その、「みっちゃん」という名前に込められた背景に、またまた壮絶な「ドン底期」を知ることになります。 継母から毎日薪で殴られ、犬のおっぱいをもらいながら育った幼少期。 女に学はいらないと教育は受けられず、古新聞を読んで文字を知った少女時代。 兄のおかげで結婚するも、夫は蒸発。先妻の息子と、自分の子どもを必死に育てた、母としての時間。 学もなく、周囲にバカにされるだけだった「カケイさん」の、唯一の特技がミシンでした。 以前、在日一世の聞き取り調査をした際、ミシンの話がたくさん出てきたと聞いたことがあります。遺品として残っているものも、旧型の足踏みミシンが多くあったそう。 外で女性が働くことが難しく、学もない女性が働こうとなったとき、初期投資の少ないミシン仕事は、家計を助けるものだったのかもしれないですね。 ミシンに夢中になり、いわゆる「ゾーン」に入ったときに、事件は起きます。 禍福は糾える縄の如しなんてことわざがありますが、「カケイさん」にとって、禍福の採算はどうだったんだろうと思わずにいられない。 ずっと搾取される側で、人間の尊厳なんて言葉も知らず、バカにされ、雑に扱われてきた人生。 それでも。 「カケイさん」は決してひとりではなかった。 デイサービスで隣に座った

『私の少女マンガ講義』#874

萩尾望都さんって、「少女マンガ」の神様だったのか!!! ある意味、「そこ!?」と言われそうなところから衝撃を受けたのが、『私の少女マンガ講義』でした。萩尾望都さんがイタリアで行った少女マンガ史の講義録とインタビューが収録されています。 ☆☆☆☆☆ 『私の少女マンガ講義』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 我が家はとんでもなく貧乏で、子どものころは「マンガ雑誌」というものを買ってもらえませんでした。近所に本屋さんもなかったので、学校の図書館か、公立の図書館に行って「文字」の本を借りてくるくらい。 「絵」の書いてある本を読めるのは、夏休みや冬休みに親戚宅に泊まった時だけだったんですよね。『エースをねらえ!』や『ベルサイユのばら』があったので、何度も何度も読んでいました。 こうしたマンガとは、ちょっと違う世界だな……と子ども心に感じていたのが『ポーの一族』。萩尾望都さんの代表作です。 (画像リンクです) イタリアでの講義は、「日本ではマンガはどのような場所に売られていて、どのような人に読まれているのか」から始まります。 日本では、コンビニでも本屋さんでもマンガ本やマンガ雑誌が手に入りますが、海外では事情が違います。 以前聞いた話によると、アメリカの場合、オトナが目にするところにマンガがないのだそうです。『SHONEN JUMP』がアメリカに進出した時には、書籍流通の仕組みが日本とは違うため、定期購読者を増やすことで読者を増やしていったそう。 少年ジャンプが転機「漫画海外進出」の難しさ | ゲーム・エンタメ   ところが、イタリアでは駅の売店で『名探偵コナン』や『NARUTO -ナルト-』が売られていたそうで、日本のマンガの受容度が全然違ったようです。 講義では、手塚治虫さんの『リボンの騎士』から『大奥』まで、多様なマンガが取り上げられています。質問者の質問内容も鋭いものばかり。 Q.:日本では、マンガが映画やテレビドラマの原作になっていますが、それはマンガ家にとってどういう意味があるのでしょうか。 萩尾さん:『イグアナの娘」をドラマにしたいという話が最初に来たときには、実は断りました。だってイグアナですよ? こんな打ち明け話も披露されています。 先人が築き上げた歴史への敬意。少女マンガの黄金時代に、読者と編集者に鍛えられ、成長していったこと。作品を生み出す原動力。ひとつひと

『いっぱしの女』#873

子ども時代の読書の充実は、成人としてからの心理的な充実に関わっているのだそうです。 The Science of Reading Access full-text academic articles: J-STAGE is an online platform for Japanese academic journals.   いまの自分が、これまでに読んだ本でできているのだとしたら、わたしの場合はミルフィーユのように階層ができているかもしれない。 小学生のころは、民話や世界文学全集、中学生くらいからSFやショートショートを読むようになり、高校時代はミステリーを、大学に入ってからは哲学や心理学の本を手に取るように。ここ数年はビジネス書も読むようになりました。 単純に、活字を読んでいるのが好きなだけなんだと思います。 いま思うと、わたしを活字好きにしてくれたのは、コバルト文庫の小説群でした。 集英社コバルト文庫 https://cobalt.shueisha.co.jp/ 多くはジュブナイル小説で、新井素子さんや、久美沙織さん、氷室冴子さんらの作品をたくさん読んでいました。現在のものは表紙がマンガっぽいイラストだけど、むかしはもっとシンプルなカットっぽいイラストでした。紺色の背表紙がなつかしい。 たくさんの物語世界の中で、わたしは胸をときめかせていたのですが、当の小説家さんたちは、「少女小説家」として嘲笑されていたと知り、大きなショックを受けました。 氷室冴子さんのエッセイ集『いっぱしの女』には、“女だから”とひとくくりにされる違和感が綴られています。 ☆☆☆☆☆ 『いっぱしの女』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 1977年に小説家としてデビューした氷室さんの代表作といえば、平安時代の恋愛物語『なんて素敵にジャパネスク』でしょうか。 (画像リンクです) あるカップルを、男女両面から描いた『なぎさボーイ』と『多恵子ガール』は、10代の少女にとってトキメキマックスな小説でした。 (画像リンクです) (画像リンクです) コバルト文庫の小説は、「りぼん」や「マーガレット」の少女マンガの世界を小説にしたような世界だったと思います。 氷室さんも、萩尾望都さんらの影響を受けたと語っていて、萩尾さんの性別を超越したようなキャラクター描写に感化されたのだそう。現実世界では、女性がトップ

『マチズモを削り取れ』#855

合気道の稽古に「かかり稽古」というものがあります。 通常の稽古は、ふたり一組になって、取り(技をかける方)と受け(技をかけられる方)を交代しながらやります。 「かかり稽古」はというと、5人~8人くらいが一組になり、ひとりが全員に技をかけていく、というものです。受けが順番に「かかって」いくから、「かかり稽古」と呼ぶのかしら。そこはよく知らないのですが。 ある時、身長180cm超のデカイ男性ばかりのチームに入ってしまったことがありました。一人目が投げられ、二人目が投げられ、三人目がわたしです。 けど。 明らかに取りの人は、わたしを見失っていました……。 ピョンピョン跳びながら手を振ると、ようやく目線が下に降り、わたしを発見。思わず、ふたりで吹き出しました。稽古中に笑っちゃいけないんだけど。 ふだん、町を歩いていて、ガタイのいい人ほどぶつかってくるのは、わたしが視界に入っていない性なのか?と、この時、思いました。 もちろん、もう少し注意深く歩いてよ、とは思いますが、視点を変えてみると、意外なことにイラッとポイントがあることが分かるはず。 チビッコで、女性で、おばさんであるわたしなんて、いろいろ大変なんですよ、ホントに。 たぶん正反対の極にいる、ガタイのいい男性であり、ライターである武田砂鉄さんが、視点を変えることで世の中にある「マチズモ=男性優位主義」に気付いていく、という本が『マチズモを削り取れ』です。 ☆☆☆☆☆ 『マチズモを削り取れ』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ ジェンダーギャップ指数、先進国でぶっちぎりの最下位である日本。 ヘイトスピーチは放置され、レイプされても女性に問題があることにされ、なのに「活躍」と「看護」を両立せよと迫られています。冗談としか思えない。 【独自】経団連、女性の両立支援強化に注力…春闘方針案 : 経済 : ニュース   「マチズモ」とは、男性が優位でいられる社会的な構図や、言動のことです。 日本にあふれる「マチズモ」を指摘し、毎回、武田さんに「お題」を出すのは、編集者のKさん。とにかくいろんなことに怒っているKさんですが、決して「ささいなこと」なんかじゃない。女性にとってはシビアにしびれる大問題。 だけど、こんなにも、男性の目には映っていないのか……と、武田さんの体験を読みながら感じました。 「女性活躍」とか、「男も大変なんだよ」とか言

『西の善き魔女』#776

先日、自分の「価値観」と「仕事の真価」を探るワークを実施しました。いろいろ考えながらキーワードを整理していて、あぁ、これかもと拾い上げたワードに、自分でも笑ってしまった。 わたしにとって大切で、心躍るもの。それは、「冒険」でした。 仕事の上では、チャレンジが好きで、チャレンジする人を応援したいタイプです。プライベートでは、ファンタジー小説やミステリーが好き。他にもいろいろ自分が好きなものを挙げていくと、行き着くのは「冒険」。 荻原規子さんの『西の善き魔女』シリーズは、出生の秘密、異国への旅、学園生活と、辺境の地育ちの少女が大冒険するお話で、ワクワクが満載でした。 ☆☆☆☆☆ 『西の善き魔女』 ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 辺境の地セラフィールドで生まれ育った15歳の少女フィリエル。初めての舞踏会の朝、幼なじみの少年ルーンから、亡き母の首飾りを渡される。フィリエルの父で、行方不明の天文学者ディー博士が託した品だったが、従姉のアデイルによって女王試金石であることが判明。フィリエルは全寮制の修道院で学ぶことになるが……。 わたしが持っているのは中公文庫のシリーズですが、これは新装版。C★NOVELSファンタジア版や、ハードカバー、角川文庫版などがあるのでややこしいですが、「外伝」の入り方が違うだけで、だいたい8巻のシリーズです。(“だいたい”って……) I:セラフィールドの少女 II:秘密の花園 III:薔薇の名前 IV:世界のかなたの森 V:銀の鳥プラチナの鳥(外伝・IVとVIの間の話) VI:闇の左手 VII:金の糸紡げば(外伝・Iの前日譚) VIII:真昼の星迷走(外伝だけど、実質最終巻) タイトルがル=グィンの異名である「The Good Witch of the West」、サブタイトルに彼女のSF作品の名前を使っていたりと、思い入れの強さが感じられるのですよね。 それもそのはず。 荻原さんが大学時代に所属していた、児童文学研究会で初めて完成させた小説が基になっているのだそう。 学園ものにあたる第2巻の「秘密の花園」では、学生たちがヒミツの活動をしているんですが、研究会での活動の思い出がベースになっています。 シリーズの中でわたしが好きなのも、「秘密の花園」です。国中から集められた女子学生たちが学ぶ内容を知って、思わず本を落っことした! くノ一学園かよ!? そんな展

『彼岸花が咲く島』#762

わたしは「ことば」としての日本語が好きです。文字も好き。音感も好き。 だけど、日本語を学ぶ人にとっては、いろいろ難しいと思います。 「なんで日本語って、こんなに文字が多いの?」 日本語を勉強していた韓国人の友人が、こう言っていたことがありました。ひらがなとカタカナが46個ずつ、数限りない漢字、日本語化して使われている外国語。たしかに、24個の文字を組み合わせるハングルに比べて、日本語の文字は豊かですよね。 第165回芥川賞の受賞作となった、李琴峰さんの『彼岸花が咲く島』は、そんな日本語の特徴を活かした小説で、「ことば」を使った実験的な作品といえると思います。 ☆☆☆☆☆ 『彼岸花が咲く島』 https://amzn.to/3k4NwX9 ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 彼岸花が咲き乱れる島に暮らす少女・游娜(ヨナ)はある日、砂浜に一人の少女が倒れているのを発見する。記憶を失っていた少女は、游娜によって宇実(ウミ)と名付けられる。島に置いてもらう条件として、島の指導者で歴史の担い手でもある〈ノロ〉を目指すことになる宇実。男性でありながら密かに〈ノロ〉になりたいと願う拓慈(タツ)の助けも借りながら、島での生活が始まる……。 宇実が流れ着いた「島」では、男女で使う言葉が違います。 ・島の言葉:ニホン語 ・女性だけが使う言葉:女語(じょご) そして、島の人の言葉が半分くらいしか分からない……という宇実の話す言葉は「ひのもとことば」と呼ばれています。 疑問形の語尾が「マー?」だったり、がんばれという状況で使われることばが「加油」だったり。「ニホン語」は、古典に出てくるような漢字交じり文に、中国語を混ぜたような言葉です。中国語と日本語、台湾語、琉球語を混ぜ合わせて創作したとのこと。 「非常に餓(アー)したマー?」(お腹が空いたでしょう) 「リーの名字、書くを欲すラー」(あなたの名前が書きたい) こんな感じで会話が進んでいくので、最初は(おお!?)と思ってしまうのですが、だいたいの意味が分かってしまうんですよね。これが“表意文字”である漢字の優れたところだと思います。 李琴峰さんは台湾生まれ、台湾育ち、15歳の時から日本語を勉強していたのだそう。中国語と日本語の両方で作品を発表しているというのだから、すごいですよね。 日本語を学ぼうと思ったきっかけが、またすごい。 「平仮名の海に漢字の

映画「ブラック・ウィドウ」#746

かつて吉田沙保里さんは「霊長類最強 女子 」と呼ばれていましたが、現在「霊長類最強 兄妹 」といえば、間違いなく阿部一二三さんと詩さんでしょう。 兄妹で同日に金メダルを獲得したのは、日本柔道史で初の快挙なのだそうです。 柔道、阿部兄妹が金メダル 兄妹Vは日本初   でも、「霊長類最強 姉妹 」となれば、ナターシャ&エレーナ姉妹だと思う。スカーレット・ヨハンソンが演じるブラック・ウィドウのラスト演技となった映画「ブラック・ウィドウ」は、美しくも哀しい、憎しみと慈しみのこもったストーリーでした。 ☆☆☆☆☆ 映画「ブラック・ウィドウ」 https://marvel.disney.co.jp/movie/blackwidow.html ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 逃亡生活を送るブラック・ウィドウのもとに、“妹”エレーナからのメッセージが届く。姉妹は、自分たちを暗殺者に育てたスパイ組織「レッドルーム」の秘密を知ったことで命を狙われることに。ふたりはかつて家族として暮らした“偽りの両親”を尋ねることにするが……。 2010年に公開された「アイアンマン2」で登場し、2019年の「アベンジャーズ/エンドゲーム」まで、孤高の暗殺者ブラック・ウィドウを演じたスカーレット・ヨハンソン。 シリーズが23本もあるので混乱しますが、今回公開された「ブラック・ウィドウ」は、2016年の「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」の後の世界です。 アベンジャーズシリーズを整理すると、こんな感じ。 1:「アイアンマン」2008年 2:「インクレディブル・ハルク」2008年 3:「アイアンマン2」2010年 4:「マイティ・ソー」2011年 5:「キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー」2011年 6:「アベンジャーズ」2012年 7:「アイアンマン3」2013年 8:「マイティ・ソー/ダーク・ワールド」2013年 9:「キャプテンアメリカ/ウィンター・ソルジャー」2014年 10:「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」2014年 11:「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」2015年 12:「アントマン」2015年 13:「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」2016年 14:「ドクター・ストレンジ」2016年 15:「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス」2017年 16

映画「サムジンカンパニー1995」#745

先日、日本で公開された映画「サムジンカンパニー1995」は、清々しく、気持ちのいい「女同士の連帯」を見た!と感じられた映画でした。 高卒女子というだけで、サポート仕事ばかりさせられている、“ちっぽけな”女性たちが、会社の不正に立ち向かう物語。舞台が1995年なので、メイクやファッションにもレトロ感が漂っていて、かわいい。ドラマにも増えているこの雰囲気は、韓国のブームなのでしょうね。 ☆☆☆☆☆ 映画「サムジンカンパニー1995」 https://samjincompany1995.com/ ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 大企業サムジン電子に勤める高卒の女性社員たちは、すぐれた実務能力を持っていても、任されるのはお茶くみや書類整理など大卒社員のサポートばかり。そこへ、会社の新たな方針が発表され、TOEIC600点を超えたら「代理」という肩書を与えられることに。英語の勉強に励む女性社員のひとり、ジャヨンは、会社の工場から汚染水が川に流出しているのを目撃する。しかも、その証拠を会社は隠ぺいしようとしていた……。 原題は「サムジン・グループ 英語TOEICクラス」で、「I can do it! You can do it! We can do it!」が映画のテーマになっています。 まぁ、3か月後のTOEICで600点とれたら役職をつけてやる、という会社の提案が、高卒女子たちの境遇を表しているようなもの。人事考課自体から外され、任されるのは雑務だけ。見えないところでアイディア出しのサポートをしたり、資料のありかをすべて把握したりしているので、彼女たちがいなければ、ぶっちゃけ仕事がまわらないんですけどね。 頭は切れるし、実務能力も高いけれど、学歴が「ガラスの天井」になっていたのでした。 ただ、TOEICの点数を重視する大企業は、1997年のIMF危機以降に増えたそうで、1995年当時では試験自体があまりなじみのないものだったのだとか。 うれしそうにカタコトの英語を話し、でも現実にがっかりしているサムジンカンパニーの女性メンバーたち。ジャヨン、ユナ、ボラムの仲良し3人組が中心となって話が進んでいきます。 (画像は映画.comより) 上の画像の中央がジャヨン。手に持った本には「基礎TOEIC問題集」と書かれています。自分のキャリアを変えられるかもしれないチャンスを、心から信じているん

一途に激しい愛に生きた女の熱い言葉 『風よ あらしよ』 #625

長い、重い、禍々しい。なのにこの小説、とびきりのおもしろさでした。 女性解放家でアナキストの伊藤野枝の生涯を描いた村山由佳さんの小説『風よ あらしよ』です。656ページもあって、本の厚みは4cm。だけど、読書の楽しさを満喫できる一冊です。 ☆☆☆☆☆ 『風よ あらしよ』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 福岡県の海沿いの村・今宿村で生まれ育ったノエは、口減らしのために、何度も親戚宅に里子に出されながら育つ。小学校を卒業後、地元の郵便局に勤めたものの、「学校に行かせて欲しい」と叔父に談判。猛勉強の末、上野高等女学校に編入するが、卒業前に結婚相手を決められてしまう。英語教師の辻潤と思いを交わしたノエは、婚家を出奔。辻の家で暮らし始めるが……。 とにかく明治~大正にかけての有名人がいっぱい登場する小説です。 ノエは、女性のための文芸誌『青鞜』の編集者・平塚らいてうに熱烈な手紙を書いて、筆者のひとりとして迎えられ、ペンネームとして「伊藤野枝」を名乗るようになります。 『青鞜』の創刊から110年。アメリカで日本独自のフェミニズムを振り返る流れがあるそうで、こちらの記事でも特集されていました。 『青鞜』創刊110年─米紙がふりかえる「日本フェミニズムの独自の遺産」   辻潤との危うい生活、らいてう自身の恋愛、周到な弾圧作戦などなどで、雑誌の継続も難しくなってしまう中、編集権を握ったのは野枝でした。でも、野枝は大杉栄との不倫について、仲間から激しい非難を受けることになります。 ただ、『青鞜』の理念に惹かれて集まった人たちの中で、ド底辺の庶民の暮らしを経験しているのは、野枝だけなんですよね。物集和子は国学者の娘で、平塚らいてうにいたっては、父が明治政府の高級官吏です。 一方の野枝はというと、生活力のない父と、必死に働いて一家を支える母のもとで育ちました。 我の強さから、里子にもらわれた先でも持て余され、結局、実家に戻されてしまう。大人の理屈に納得せず、貧乏の辛苦をなめ、何一つ自分で決められない、物々交換のような人生。 学びたい。 福岡にいたときも、上京してからも、辻と赤貧の暮らしをしているときも、常に野枝の頭にあったのは、それでした。頭でっかちなお嬢さんたちよりも、野生丸出しの野枝の方が、アナキズムの本質に迫っていたといえるかもしれません。 高等教育を受け、慣習に疑問を

こじらせ男子の当事者研究 『さよなら、俺たち』 #605

昨日3月8日は「国際女性デー(International Women's Day)」でした。1904年、ニューヨークで婦人参政権を求めたデモが起源となり、1975年に国連によって制定されたのだそうです。 こういう記念日的なものって、当日まではとても盛り上がるんですが、過ぎたとたんに終わってしまったようになることも多いような気がします。 おまけに「フェミニズム」と聞くと、(怒られている気分……)と感じる男性もいると聞いたので、今日は男性にお勧めの本を紹介しようと思います。 「恋バナ」に興味があって収集していたら、自分の男性性の呪縛に気がついたと語る清田隆之さんのエッセイ集『さよなら、俺たち』です。 ☆☆☆☆☆ 『さよなら、俺たち』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 清田さんは「恋バナ収集ユニット」として活動する桃山商事の代表でいらっしゃいます。本には、こんな告白があります。 “両親はどちらもお店(注:電気屋さんだそう)に出ていたが、家事に関してはほとんど母親が担っていた。私はそのことになんの疑問も持たずに育った。自分が着ている衣類は、脱いでカゴに入れたらいつの間にかキレイになってタンスに入っているものだ……という感覚で生きていた。” この「感覚」は、もしかしたら男性に限らないかもしれません。 子どものころ、お母さんがすべての家事をこなし、お父さんがそれを当たり前としていたら、そこに「感謝」が必要だなんて意識は育たないから。 加えて、社会から「料理上手な女」になろう的な、「たくましい男」になろう的な情報にさらされるのだから、「感覚」はより強固になって再生産されていくのではないでしょうか。 韓国映画の「82年生まれ、キム・ジヨン」にも、夫の実家で過ごす正月休みのシーンがありました。ご家族皆さまがくつろぐ中、嫁だけがあれこれの支度をしています。 「82年生まれ、キム・ジヨン」のコン・ユが象徴するものについて考えてみた   清田さん自身、同じような状況を経験して、「自分はこうしていていいのか?」と、うっすらした居心地の悪さを感じたそう。 恋バナ収集の活動を始めるまでは、特にジェンダー意識が高かったというわけでもなく、ただただ恋愛相談を聞いていただけ。1200人以上の女性の話を聞くうちに、こうした「居心地の悪さ」や自分の「性欲」について見直すようになっていったとのことです