合気道の稽古に「かかり稽古」というものがあります。
通常の稽古は、ふたり一組になって、取り(技をかける方)と受け(技をかけられる方)を交代しながらやります。
「かかり稽古」はというと、5人~8人くらいが一組になり、ひとりが全員に技をかけていく、というものです。受けが順番に「かかって」いくから、「かかり稽古」と呼ぶのかしら。そこはよく知らないのですが。
ある時、身長180cm超のデカイ男性ばかりのチームに入ってしまったことがありました。一人目が投げられ、二人目が投げられ、三人目がわたしです。
けど。
明らかに取りの人は、わたしを見失っていました……。
ピョンピョン跳びながら手を振ると、ようやく目線が下に降り、わたしを発見。思わず、ふたりで吹き出しました。稽古中に笑っちゃいけないんだけど。
ふだん、町を歩いていて、ガタイのいい人ほどぶつかってくるのは、わたしが視界に入っていない性なのか?と、この時、思いました。
もちろん、もう少し注意深く歩いてよ、とは思いますが、視点を変えてみると、意外なことにイラッとポイントがあることが分かるはず。
チビッコで、女性で、おばさんであるわたしなんて、いろいろ大変なんですよ、ホントに。
たぶん正反対の極にいる、ガタイのいい男性であり、ライターである武田砂鉄さんが、視点を変えることで世の中にある「マチズモ=男性優位主義」に気付いていく、という本が『マチズモを削り取れ』です。
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『マチズモを削り取れ』
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ジェンダーギャップ指数、先進国でぶっちぎりの最下位である日本。
ヘイトスピーチは放置され、レイプされても女性に問題があることにされ、なのに「活躍」と「看護」を両立せよと迫られています。冗談としか思えない。
「マチズモ」とは、男性が優位でいられる社会的な構図や、言動のことです。
日本にあふれる「マチズモ」を指摘し、毎回、武田さんに「お題」を出すのは、編集者のKさん。とにかくいろんなことに怒っているKさんですが、決して「ささいなこと」なんかじゃない。女性にとってはシビアにしびれる大問題。
だけど、こんなにも、男性の目には映っていないのか……と、武田さんの体験を読みながら感じました。
「女性活躍」とか、「男も大変なんだよ」とか言う前に、この本を読んで出直してきてほしい。
スコットランドではこんな動画を警察が制作しているんです。
【拡散希望】「すべての男がそうではない」#NotAllMen とスルーせずに、「ああいうやつになるな」#dontbethatguy と介入を。女性に注意を促すのではなく、男同士で嗜め合う抑止力を。スコットランド警察の性暴力防止キャンペーンの動画、@kanrooom に字幕をつけてもらいました。日本でもやってほしい。 https://t.co/XbkmPQN8SU pic.twitter.com/42LxZr6fTi
— 長田杏奈 (@osadanna) November 12, 2021
合気道の稽古では、相手をよく見て、身体の声を聞けと教わります。
稽古のいいところは、取り(技をかける方)と受け(技をかけられる方)を交代するところだと思います。ワガママな、相手を痛めつける稽古をすれば、自分が受けになった時、同じようにされるから。稽古を通して、相手の痛みを自分でそのまま受けることになるのです。
こういう武道の教えがもっと広まればいいのになと思ってしまいました。
ホン・ソンスさんの『ヘイトをとめるレッスン』も合わせて読むのが、おすすめです!
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