スキップしてメイン コンテンツに移動

映画「ブラック・ウィドウ」#746


かつて吉田沙保里さんは「霊長類最強女子」と呼ばれていましたが、現在「霊長類最強兄妹」といえば、間違いなく阿部一二三さんと詩さんでしょう。

兄妹で同日に金メダルを獲得したのは、日本柔道史で初の快挙なのだそうです。


でも、「霊長類最強姉妹」となれば、ナターシャ&エレーナ姉妹だと思う。スカーレット・ヨハンソンが演じるブラック・ウィドウのラスト演技となった映画「ブラック・ウィドウ」は、美しくも哀しい、憎しみと慈しみのこもったストーリーでした。

☆☆☆☆☆

映画「ブラック・ウィドウ」
https://marvel.disney.co.jp/movie/blackwidow.html

☆☆☆☆☆

<あらすじ>
逃亡生活を送るブラック・ウィドウのもとに、“妹”エレーナからのメッセージが届く。姉妹は、自分たちを暗殺者に育てたスパイ組織「レッドルーム」の秘密を知ったことで命を狙われることに。ふたりはかつて家族として暮らした“偽りの両親”を尋ねることにするが……。


2010年に公開された「アイアンマン2」で登場し、2019年の「アベンジャーズ/エンドゲーム」まで、孤高の暗殺者ブラック・ウィドウを演じたスカーレット・ヨハンソン。

シリーズが23本もあるので混乱しますが、今回公開された「ブラック・ウィドウ」は、2016年の「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」の後の世界です。

アベンジャーズシリーズを整理すると、こんな感じ。

1:「アイアンマン」2008年
2:「インクレディブル・ハルク」2008年
3:「アイアンマン2」2010年
4:「マイティ・ソー」2011年
5:「キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー」2011年
6:「アベンジャーズ」2012年
7:「アイアンマン3」2013年
8:「マイティ・ソー/ダーク・ワールド」2013年
9:「キャプテンアメリカ/ウィンター・ソルジャー」2014年
10:「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」2014年
11:「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」2015年
12:「アントマン」2015年
13:「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」2016年
14:「ドクター・ストレンジ」2016年
15:「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス」2017年
16:「スパイダーマン:ホームカミング」2017年
17:「マイティ・ソー/バトルロイヤル」2017年
18:「ブラックパンサー」2018年
19:「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」2018年
20:「アントマン&ワスプ」2018年
21:「キャプテン・マーベル」2019年
22:「アベンジャーズ/エンドゲーム」2019年
23:「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」2019年


「シビル・ウォー」って、ようするにアベンジャーズの分裂を描いた映画で、「ブラック・ウィドウ」の中でもナターシャは、

「トニー・スタークとは、いまちょっと疎遠でさ」

なんて言っていました。

わたしはアベンジャーズ・シリーズを制覇したわけではないんですが、それでも「ブラック・ウィドウ」は十分ストーリーについていけましたし、大いに感動したし、なにより、いますぐ1から見直したくなりました!

久しぶりに会った妹エレーナが、「なんなの、あのヘンなポーズは」とマネするというクスリとする小ネタもあるので、なおさらです。

(画像はIMDbより)


とりあえず、「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」はAmazonプライムで配信されているので、これを観ておくといいかもです。

☆☆☆☆☆

映画「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」
https://amzn.to/3xidVoZ

☆☆☆☆☆


映画は分かりやすく「悪いおっちゃん」から女性たちを救い出すヒーローものなんですけど、ものすごく感じるのが「目覚め」へのエールです。

幼い頃に連れてこられ、暗殺者としてのトレーニングを積まされ、脳をコントロールされている「レッドルーム」の女性たち。歴史的に抑圧される側であった女性たちを表しているのだと思います。

そして、「悪いおっちゃん」に激しく殴られ、詰められ、追い込まれるナターシャは、弱き者を解放するために命を捧げる覚悟なんです。同時に、バラバラになっていた疑似家族にも、抑えきれない愛があることを自覚する。

その愛が、「アベンジャーズ/エンドゲーム」の行動だったんだなーと思うと、胸がいっぱいになりました。

冷静で、強く、美しく、愛情深い暗殺者という役は、スカーレット・ヨハンソンが10年にわたって育ててきたものです。

それを卒業するのは、ホッとするところなのだろうか。せつないものなのだろうか。

一ファンとしては、最大級のありがとうを言いたい。

そして物語は、「霊長類最強姉妹」の妹へと引き継がれていくのですかね。


映画情報「ブラック・ウィドウ」134分(2021年)

監督:ケイト・ショートランド

原案:ジャック・シェイファー ネッド・ベンソン

脚本:エリック・ピアソン

出演:スカーレット・ヨハンソン、フローレンス・ピュー、レイチェル・ワイズ

コメント

このブログの人気の投稿

『JAGAE 織田信長伝奇行』#725

歴史に「if」はないというけれど。 現代にまで伝わっている逸話と逸話の間を、想像の力で埋めるのは、歴史小説の醍醐味かもしれません。 『陰陽師』 の夢枕獏さんの新刊『JAGAE 織田信長伝奇行』は、主人公が織田信長です。 旧臣が残した『信長公記』や、宣教師の書いた『日本史』などから、人間・信長の姿を形にした小説。もちろん、闇が闇としてあった時代の“妖しいもの”も登場。夢枕版信長という人物の求心力に、虜になりました。 ☆☆☆☆☆ 『JAGAE 織田信長伝奇行』 https://amzn.to/2SNz4ZI ☆☆☆☆☆ 信長といえば、気性が荒く、残忍で、情け容赦ないイメージがありました。眞邊明人さんの『もしも徳川家康が総理大臣になったら』には、経済産業大臣として織田信長が登場します。首相である家康を牽制しつつ、イノベーターらしい発想で万博を企画したりなんかしていました。 『もしも徳川家康が総理大臣になったら』#687   『JAGAE』は、信長が14歳の少年時代から始まります。不思議な術をつかう男・飛び加藤との出会いのシーンが、また鮮烈なんです。人質としてやって来た徳川家康をイジる様子、子分となった秀吉との出会いなどなど。 信長のもとに常に漂う、血の臭い……。 これに引きつけられるのは、蚊だけではないのかも。 おもしろいのは、一度も合戦シーンが出てこないことです。信長のとった戦術・戦略は、実は極めてオーソドックスなものだったそう。そこで戦よりも、合理主義者としての人物像を描いているのではないか、と思います。 小説の基になっている『信長公記』は、旧臣の太田牛一が書いた信長の一代記です。相撲大会を好んで開催していたことなどが残っているそうで、史料としての信頼も高いと評価されているもの。 そんな逸話の間を想像で埋めていくのです。なんといっても、夢枕獏さんの小説だから。闇が闇としてあった時代の“妖しいもの”が楽しみなんです。 タイトルになっている「JAGAE」とは、「蛇替え」と書き、池の水をかき出して蛇を捕えることを指しています。 なんだかテレビ番組になりそうな話なんですけど、実際に領民が「大蛇を見た~」と騒いでいたことを耳にした信長が、当の池に出張っていって捜索したという記録が残っているのです。 民衆を安心させるための行動ともいえますが、それよりも「未知なるもの」への...

映画「新しき世界」#293

「アメリカに“ハリウッド”があるように、韓国には“忠武路”という町があります」 第92回アカデミー賞で 「パラサイト 半地下の家族」 が脚本賞を受賞した時、ポン・ジュノ監督と共同で脚本にあたったハン・ジュヌォンは、そう挨拶していました。「この栄光を“忠武路”(チュンムノ)の仲間たちと分かち合いたい」。泣けるなー! ハン・ジュヌォンのスピーチ(1:50くらいから) アメリカにハリウッドがあるように、韓国には忠武路というところがあります。わたしはこの栄光を忠武路の仲間たちと分かち合いたいと思います。ありがとう! #アカデミー賞 https://t.co/LLK7rUPTDI — mame3@韓国映画ファン (@yymame33) February 10, 2020 1955年に「大韓劇場」という大規模映画館ができたことをきっかけに、映画会社が多く集まり、“忠武路”(チュンムノ)は映画の町と呼ばれるようになりました。 一夜にしてスターに躍り出る人や、その浮き沈みも見つめてきた町です。 リュ・スンワン監督×ファン・ジョンミンの映画「生き残るための3つの取引」での脚本が評価されたパク・フンジョン。韓国最大の映画の祭典で、最も権威のある映画賞である「青龍映画賞」で、彼自身は脚本賞を受賞。映画も作品賞を受賞し、一躍“忠武路”の注目を浴びることに。 そうして、自らメガホンを取った作品が「新しき世界」です。 ☆☆☆☆☆ 映画「新しき世界」 Amazonプライム配信 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 韓国最大の犯罪組織のトップが事故死し、跡目争いに突入。組織のナンバー2であるチョン・チョンは、部下のジャソンに全幅の信頼を寄せていますが、彼は組織に潜入した警察官でした。この機会にスパイ生活を止めたいと願い出ますが、上司のカン課長の返事はNO。組織壊滅を狙った「新世界」作戦を命じられ……。 あらすじを読んでお分かりのように、思いっきり「ゴッドファーザー」と「インファナル・アフェア」のミックスジュース特盛り「仁義なき戦い」スパイス風味入りです。 無節操といえばそうですけれど、名作のオマージュはヘタをすると二番煎じの域を出なくなっちゃうと思うんです。よいところが薄まっちゃうというか。人気作の続編が、「あれれ?」となるのもそうですよね。ですが。 名作と名作を合わせたら、一大名作が...

校閲レディの仕事術 Part II・「読み方」について

突然ですが、こちらの文章を読んでみてください。 「こんにちは 皆さんお元気ですか? 私は元気です。」 と読んだ方、もう一度、一文字ずつ読んでみましょう。 「あれ? あぁぁ!」 と、なった方、これからご紹介する 「校正的読み方」 をぜひご覧ください。 決して、意地悪したわけではないですよ! 今日は校閲レディの仕事術 Part IIとして、文字の「読み方」について書いてみたいと思います。 Part Iはこちらから。 校閲レディの仕事術・校正ってどうやってやるの? Part I   「校正的読み方」:どう見るのか 上の文章をスルリと読めるのは、「Typoglycemia」という現象だそうです。 「Typoglycemia」とは、単語の最初と最後の文字が合っていれば、中の文字が入れ替わっても読めてしまう現象のこと。 ずいぶん前に話題になりましたよね。まだ日本語の名称はないそうですが、要するに、「そら目」しちゃうということかと思います。 デジタル世界では、「こんちには」と「こんにちは」はまったくの別物。読み間違いという現象は起きません。 それはそれでいいのですが、人間がそれをやると疲れてしまいます。だから、“だいたい”のところで“ふんわり”と把握する能力は、生きる知恵なのではないかとわたしは感じるのです。 この大雑把でゆる~い感じはO型人間にとって、とてもうれしい! 大好き! サイコー! なんですが。 校閲レディとして仕事をする時は、この技は使えません。 ダメ。絶対。 校正の読み方とは、こちらです。 1 字 ず つ つ ぶ す なぜ、「つぶす」と呼ぶのか? 理由はよく分かりませんが、色鉛筆でひと文字ずつマークしていくので、確かに「つぶしている感」はある気がします。 webの短い記事を校正する時は、色鉛筆を使いますが、書籍などの長い文章を校正する時は、使いません。たぶん、疲れちゃうからでしょうね。 Part I で書いたように、校正の作業の流れは下記のとおりです。 <校正の流れ> 1 情報確認 2 資料合わせ 3 素読み 4 整合性 5 ネガティブチェック そして、どの作業においても、 1 字 ず つ つ ぶ す のです。 大変でしょ?笑 でも、残念ながら、校正のすべては、このひと言に尽きるのです。 「校正的読み方」:何を見るのか 1字ずつマークするだけなら簡単なのです...