第4の権力と呼ばれたジャーナリズムは死んだのか。
学生時代、元朝日新聞記者の本多勝一さんの著書に傾倒していたわたしにとって、観たいけど、観たくない映画がありました。
これ以上、現実に絶望したくないから。
そんな想いを抱えつつ、観に行った「パンケーキを毒見する」。やっぱり行くんかい!なんですけど、やっぱり絶望してしまいました……。
でも、目を背けてはいられないと思うのです。この現実を。
☆☆☆☆☆
映画「パンケーキを毒見する」
https://www.pancake-movie.com/
☆☆☆☆☆
2019年に公開され、ダブル主演を務めたシム・ウンギョンと松坂桃李が、第43回日本アカデミー賞で最優秀主演男優賞と最優秀主演女優賞を受賞。そして最優秀作品賞にも輝いた映画「新聞記者」。
日本ではあまりなかった社会派劇映画でした。
☆☆☆☆☆
映画「新聞記者」
DVD
Amazonプライム配信
☆☆☆☆☆
「パンケーキを毒見する」は、「新聞記者」のプロデューサーである河村光庸さんが、企画・製作・エグゼクティブプロデューサーを務めた映画です。第99代内閣総理大臣・菅義偉の素顔に迫った「政治ドキュメンタリー」映画。
って、映画.comなどでは「政治ドキュメンタリー」と紹介されていますが、どちらかというとパンフレットにあるように「政治バラエティ映画」だと思います。
その点が、もしかしたら好き嫌いの分かれるところかも。
わたしは「ドキュメンタリー」映画が好きなので、正直に言って、微妙に感じるところもありました。たぶん、恣意的にみえるからでしょう……。
石破茂さんや、江田憲司さんら代議士、元官僚の古賀茂明さん、元朝日新聞記者の鮫島浩さんらのインタビューのほか、実際の国会での“議論”の様子を、上西充子教授が解説されています。
特に、国会での“議論”。
ここで露わにされるのは、言葉がないがしろにされていく様子です。
総理が質問に答えない、というニュースは見たことがあったものの、実際の映像は見たことがなかったんですよね。映画では20分もの国会映像を見ることができます。
そんな長いものを?
と思いますよね。でも、上西教授がツッコミながら解説してくれるので、思わず笑ってしまう。
いや、笑ってる場合じゃないんだけど。国会は「言論の府」だと習ったはずが、会話がまったく成立しない様子は衝撃的です。
菅総理は、「文藝春秋」2021年10月号で船橋洋一さんのインタビューに答え、「私は能弁ではありませんが、多くの人の話を聞く力はあると思っています」と語っています。
☆☆☆☆☆
文藝春秋2021年10月号
☆☆☆☆☆
MJSK!?(← なんだかなつかしいな)
代議士の秘書だった菅総理は、気配りの人だと映画でも紹介されていました。今の姿からは想像もつかないんですけどね。「弁舌よりも結果だ」という政治姿勢だったけど、一からやり直さないといけないと語る菅総理。
ぜひ、ご自分で「パンケーキを毒見する」を観てほしいな。
メガホンをとったのは、「世界ふしぎ発見!」などのテレビ番組で、ディレクターを務めてきた内山雄人さん。制作期間が短く、おまけに新型コロナによって対面取材ができないという事態の中、撮影を進めたのだそう。
映画は、「今回の企画には協力できません」と、インタビューお断りの電話音声から始まります。
なぜ、これほどまでに断られるのか。
協力したら、どうなってしまうのか。
ひと言で言うと、待っているのは「言論弾圧」です。そんな中で、出演を決めた方々の勇気を讃えたい。
まもなく自民党の総裁選が行われると、連日ニュースになっています。でも、日本国民すべてが選挙権を持っているわけではないので、ちょっと遠い話に感じてしまう。現実感もない。
遠いんです。すべてが。
伝わらない言葉と、聞いてもらえない言葉と、言いたいけど言えなかった言葉だけが、なにかの残像のように漂っているだけ。
この映画は、日本の政治が壊れていった過程を映しています。そして、ジャーナリズムが黙らされてしまうと、社会はどうなるのかを想像させてくれます。
わたしは残飯を喜ぶ羊にはなりたくないよ。
映画「パンケーキを毒見する」104分(2021年)
監督:内山雄人
企画・製作:河村光庸
アニメーション:べんぴねこ
コメント
コメントを投稿