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映画「SNS-少女たちの10日間」#669


モテる人の第一条件として、よく言われるのが「相手の話を聞く」ことです。相手が気分よく話せるようにしてくれるから、別れた後も「楽しかったー」という記憶が残る。そしてまた会いたくなるのです。

反対に、「自分の話しかしない」人は、まず、絶対に、たぶん、モテない。だって、自分が気持ちいいだけなんだもん。じゃあ、ひとりでしゃべってろよ、わたしの時間を奪うんじゃない!と思ってしまうのです。

「SNS-少女たちの10日間」は、衝撃的なドキュメンタリーで、観ている間も気持ち悪くて仕方なかったのですが、目が離せないんです。こんなにも危ない世界があったなんてと戦慄してしまいました。

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公式サイト
http://www.hark3.com/sns-10days/

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「12歳の少女に扮した童顔の大人の女優3人が、スタジオ内のリアルに作りこまれた3つの子供部屋で10日間、12歳の偽アカウントでSNSを使うと、どのようなことが起こるのか」という実験のようなリアリティーショー。もともとは、チェコの通信会社が依頼した動画制作を請け負ったことでした。

「12歳の少女・ティンカ」という情報だけで、80人を超える成人男性がコンタクトをしてくるという内容でした。ここから、長編ドキュメンタリーの制作を決めたのだそう。

3人の少女役は12歳にしか見えませんが、成人した女性たちで、それぞれに12歳の役作りをして臨んでいます。最後に「いまでも悪夢を見る」と語っていた人がいましたけれど、なかなかこのショックからは抜け出せない気がする。

それくらい、衝撃的なんです。男の身勝手な欲望が。

「自分の話しかしない」上に、自分の欲求を突きつけ、怒り、脅し、心を支配していく。アクセスしてきた人の中には、結婚している人も、子ども相手の仕事をしている人も登場します。スタッフのひとりが「この人は知り合いかも!?」と言い出したときは、膝が震えました。

スカイプに映る人の顔には(男性たちが見せたがる男性器にも)モザイクがかかっているのですが、目と口元だけはナマの状態になっています。これが、超マヌケに見えて……。やっていることのグロテスクさと相まって、滑稽度が爆上がりしていました。

インターネットのない時代に戻ることは考えられない以上、今までとは違う、もっと踏み込んだリテラシーが必要なのだと思います。

監督のひとり、クルサーク氏は、「正しい知識を教えること」と「親子の信頼関係を築くこと」の重要性を説いています。「『何があっても相談しろ』と言える関係性を築くことが、なにより子どもを守ることにつながるから。

【インタビュー】『SNS-少女たちの10日間-』監督が語る、子どもたちをネット上の性被害から守るために必要なこと
https://www.cinemacafe.net/article/2021/04/24/72498.html


わたしたちがどんな時代に生きているのか、見えていなかった世界を知ることができる映画でした。

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