今週はビジネスパーソンにおすすめの時代小説を紹介しています。
1月27日に発表された、「理想の上司」アンケートによると、男性上司は内村光良さん、女性上司はアナウンサーの水卜麻美さんが1位とのこと。
(明治安田生命保険が実施。2020年春の新入社員が対象)
まもなく社会人デビューをする人たちにとって“親しみやすさ”は大きなポイントのようですね。
斬り捨て御免の権限を持つ幕府の火付盗賊改方の長官・長谷川平蔵と聞くと、強面感満載ですが、ついでに漢字もいっぱいですが、わたしは理想の上司と言われると“鬼平”を思い浮かべるかなぁ。
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『鬼平犯科帳』
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名前こそ“鬼の平蔵”ですが、平蔵が鬼となるのは盗賊に対してだけ。部下や協力者たちからは心から信頼され、頼りにされています。それは平蔵が義理も人情もユーモアも心得た、懐の深い人だったからでしょう。
文春文庫の「決定版」はカバーデザインが一新されて、歌川広重の「名所江戸百景」になりました。紙の本で時代小説を読む人はある程度の年齢がいった人、という見立てなのか、文字も大きめです。笑
作者の池波正太郎さんは、もしもこの小説を映像化するなら、主人公は八代目松本幸四郎がいいと仰っていたそうです。希望は叶えられ、テレビドラマ化された時は八代目松本幸四郎が、役者交代の際は息子の中村吉右衛門が演じました。
落語家や歌舞伎俳優って名前が変わっていくのでややこしいですね。八代目松本幸四郎とは、初代松本白鸚のことで、松たか子のおじいさんにあたる人です。
(※画像はWikipediaより)
小説の話に戻ると、1作目が「オール讀物」1967年12月号に掲載され、その後、全部で135作におよぶ長期連載となりました。文庫本は24巻あります。「鬼平犯科帳」の名前をつけたのは、当時の担当編集者だった花田紀凱だそう。
人気連載となり、ドラマ化、アニメ化、マンガ化と、メディアは広がっていきましたが、池波さんは「原作のあるものだけ使ってOK」と強く主張していました。その点、原作を元に脚色を進めるアニメ番組などとは違うわけですが、やはり鬼平のイメージを守りたかったのかな。
鬼平自身は、恵まれた生い立ちではありません。妾腹の子で母親の顔も知らず、マイルドではないヤンキー時代もあったようです。そこから放火や強盗、賭博を取り締まる警察である「火付盗賊改方」となるのですから、犯罪者なりの事情を慮ることができる、背景も度量もあったということ。
特に、スパイをしてくれる元盗賊たちへの優しさは格別です。元の盗賊仲間からは「狗(いぬ)」と蔑まれる彼らを、ひとりの人間として、仕事仲間として、あたたかく包み込む。
型どおりに「規則」を押しつけない。各自の裁量を尊重するけれど、最終責任は自分がとる。繊細で豪胆で、でも茶目っ気たっぷり。
この人のためなら、と思える人と出会えることは、とても幸せな仕事人生なのかもしれません。
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