「謝るつもりなら、止めてください。言葉でする謝罪は……、許しを得られる時にするものです」
娘を失った母が、いじめを放置していた同級生の母に浴びせた、強烈な一発。静かに、でも強い口調で放たれた矢は、わたしの心にもグサリと刺さりました。
「天才子役」と呼ばれた少女たちが大集合し、母親役にキム・ヒエ、隣の就職浪人生役にユ・アインという豪華なキャスティングの映画「優しい嘘」。
起きてしまった出来事を、精一杯の力で受け止めようとする母と娘の姿に、涙を誘われました。
☆☆☆☆☆
映画「優しい嘘」
DVD
(画像リンクです)Amazonプライム配信
(画像リンクです)☆☆☆☆☆
スーパーマーケットで働くヒョンスクは、クールな長女マンジと明るく優しい次女チョンジを女手ひとつで育てていた。ところがある日、チョンジが自ら命を絶ってしまう。残された母と姉は、悲しみに暮れながらも2人きりの生活に慣れようと努める。そんな折、チョンジの友人たちに会ったマンジは、妹が家族に隠し続けてきた学校での出来事や、親友だったファヨンの存在を知る。
監督のイ・ハンは、ユ・アインが不良高校生を演じた「ワンドゥギ」も演出しています。どちらも原作はキム・リョリョンさんの小説です。
「ワンドゥギ」にも、「優しい嘘」にも、どうにもならない現実が描かれます。その中で、人はもがきながら光を見つけようとする。
特に「優しい嘘」は、学校という閉ざされた空間でのイジメがテーマなので、とても胸が痛みます。
この映画で、第50回百想芸術大賞の女性新人演技賞を受賞したキム・ヒャンギちゃんのいじらしさなんて、ハンパない。
(画像は映画.comより)
ちなみに、お姉ちゃん役のコ・アソンちゃんは、ポン・ジュノ監督の「グエムル-漢江の怪物-」で、グエムルに連れ去られてしまった女の子です。
(画像はKMDbより)
最近では「サムジンカンパニー1995」にも主演して、めざましい活躍をしていますね。
イジメていた方の同級生ファヨンを演じるのは、キム・ユジョンちゃん。でも、彼女には「いじめていた」という感覚がないんです。
(画像はKMDbより)
「友だちのなり方が分からない」というのは、深刻な問題かも。支配でもなく、搾取でもなく、パシリでもなく、嘲りの対象でもないとなると、どうやって付き合ったらいいのか分からなくなってしまうんです。
韓国の中学を舞台にした話ですが、日本のお笑いも一時期、人を貶めるギャグばっかりだったよなーと感じました。
笑いをとるのに、人を傷つける必要はないはず。
ましてや、友だちなら。
亡くなった娘に対して、誰も謝罪しないし、それを求めることもできない母の心情。そこに、娘からの「優しい嘘」が届く、という展開です。
「優しい嘘」とは、自分のためではなく、相手を傷つけないためにつく嘘のこと。こういう嘘がつけるのは、自律した人だけなのかもしれないですね。
ユ・アインのおとぼけでフフッと笑わせてくれて、重いテーマだけど軽やかなラストが待っています。
泣いちゃうけど。
映画「優しい嘘」117分(2014年)
監督:イ・ハン
原作:キム・リョリョン
脚本:イ・スクヨン
出演:キム・ヒエ、コ・アソン、キム・ユジョン、キム・ヒャンギ、ユ・アイン
コメント
コメントを投稿