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映画「ワンドゥギ」#791


何をやっても“どうせ”うまくいかないし。

夢もなければ、希望もない。金もないし、勉強もできない。ないない尽くしの高校生・ワンドゥクが望むものは、ただひとつ。

口うるさい担任がいなくなること!

夜な夜な教会で真摯に祈っていたのに、どんどんと私生活に踏み込んでくる担任のドンジュとの掛け合いに、思わず笑い、ホロリとしてしまった。

ユ・アインがまだ「注目の若手俳優」だった頃に、キム・ユンソクと共演した映画が「ワンドゥギ」です。

☆☆☆☆☆

映画「ワンドゥギ」

DVD


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☆☆☆☆☆

<あらすじ>
障害をもつ父親と風変わりな叔父と3人で暮らす高校生のワンドゥク。家庭は貧しく、勉強もできず、夢も希望ももてない上に、隣に住む担任教師のドンジュが生活に干渉してくることにうんざりしていた。ドンジュがいなくなることを切実に願うワンドゥクだったが、ある日、ドンジュから会ったことのない母親の消息を知らされ……。


「ワンドゥギ」は、“ワンドゥク”という名前の会話体といえばいいのかな。韓国語で名前を呼ぶ時の助詞がくっついているので、カタカナ表記すると音が変わって見えちゃうんですね。日本語でいうところの「ワンドゥクくん」よりも、もっと近しい感じがあると思います。

映画は、身体障害者、精神障害者、外国人労働者、貧困家庭、教育問題と、重めの社会的テーマをガツッと詰め込んだストーリーなのですが、展開はとても軽やかです。

キム・リョリョンの同名のベストセラー小説が原作。でも、登場人物はちょっと違うそう。

イ・ハン監督の映画で観たことがあったのが、甘酸っぱい恋愛を描いた「永遠の片想い」だったので、振り幅の大きさに驚いた記憶がありました。


将来も見えず、憤懣を吐き出す先もない高校生・ワンドゥクにとって、父親は世界で一番すごい人であり、同時に、守るべき存在でもあります。

でも、しょせんは高校生。

キム・ユンソク演じる不良教師にたかられても文句も言えない。

できることは、神に祈ることだけ。

だけど、99.9%くらい“どうせ”が詰まった少年が、人とつながることで変わっていくんです。不良というよりも、斜に構えた感じがピッタリのユ・アイン。初めて出会ったお母さんとのシーンは、ホロリとしてしまいます。

一方の、神さまに「どうかあいつを殺して」とお願いされるほど、嫌われていたドンジュ先公(今でもこんな言い方するのかな?笑)。でも、演じたキム・ユンソクは、この映画が一番心に残っているのだそう。自由奔放なドンジュというキャラクターが、自身ととても似ているから。

うむ。やさぐれたオッサン感もありつつ、正義感は捨ててないところがポイのかも。

2011年に韓国で公開された時は、530万人を突破。年間ランキングでも「サニー 永遠の仲間たち」に続く4位になりました。

日本で公開されたのは2012年とあるので、約10年にもなるんですね。あの頃はまだユ・アインのこともよく知らず、なんとなく観に行った映画でした。あらためて観てみて。

やっぱ、ユ・アインもキム・ユンソクも迫力ある!!

ライジング・スターは巨星だったと、実感できる映画ですよ。


映画「ワンドゥギ」108分(2011年)

監督:イ・ハン

脚本:キム・ドンウ

原作:キム・リョリョン

出演:キム・ユンソク、ユ・アイン、パク・スヨン、イ・ジャスミン、キム・サンホ




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