「雪が溶けたら、なんになる?」
学校の問題なら答えは「水」で、そう答えるのが合理的なのでしょうけれど。ここはやっぱり「春になる!」と答えたい。
堂々と、胸を張って。
イム・デヒョン監督の長編2作目となる「ユンヒへ」には、印象的な台詞がいくつか出てきます。
わたしがとても心に残っているのは、
「雪はいつ止むのかしら」
でした。
最初と半ばと最後に登場するこの言葉。性的マイノリティであることを、隠さずに生きられるようになった社会を象徴しているように感じました。
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映画「ユンヒへ」
https://transformer.co.jp/m/dearyunhee/
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韓国の地方都市で高校生の娘と暮らすシングルマザーのユンヒの元に、小樽で暮らす友人ジュンから1通の手紙が届く。20年以上も連絡を絶っていたユンヒとジュンには、互いの家族にも明かしていない秘密があった。手紙を盗み見てしまったユンヒの娘セボムは、そこに自分の知らない母の姿を見つけ、ジュンに会うことを決意。ユンヒはセボムに強引に誘われ、小樽へと旅立つことにするが……。
ユンヒを演じたキム・ヒエさんは、ドラマ「密会」や映画「優しい嘘」に出演されている方です。
「優しい嘘」の方は、Amazonのレンタルで配信されています。
とにかくキレイで、清楚で、おっとりしていて、ステキな女性なんですよね。「ユンヒへ」では、シングルマザーとして働きながら娘のセボムと暮らしています。
そのセボムが、ジュンからの手紙を読んでしまったことから物語は動き出します。いや、そもそも出すつもりのなかった手紙を、ジュンのおばさんが“気を利かせて”投函してしまったことから、かな。
ふたりの「おせっかい」によって、ユンヒとジュンの再会がお膳立てされるのですが。
この映画の一番よかったところは、回想シーンがなかったことかもしれない、と思うのです。過去に何があったのかは、交わされる手紙の文面で想像するしかない。
それだけでも伝わってくる、痛ましい別れの記憶。
「わたしは、この手紙を書いている自分が恥ずかしくない」と語るジュンも、自分について語らないユンヒも、20年もの間、「雪が止む」のを待っていたのかも。
雪の下に埋められ、なかったことにされてしまった想いを、掘り出すことはできるのか。
雪の小樽が舞台ということで、岩井俊二監督の「Love Letter」を彷彿させる映画なんですが、女性同士の恋を描くところが、現代の社会問題に向き合う韓国映画らしさですかね。
日本でも、韓国でも、まだまだ「冬」。
それでも、雪は明日止むのだと信じたい。
映画「ユンヒへ」 105分(2019年)
監督:イム・デヒョン
脚本:イム・デヒョン
出演:キム・ヒエ、中村優子、キム・ソヘ、ソン・ユビン、木野花、瀧内公美、薬丸翔、ユ・ジェミョン
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