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映画「パイプライン」#940


なんだか“穴掘り”コメディが続いちゃったな。

ふと、そんな気がしてしまった映画「パイプライン」。送油管に穴を開けて盗んだ石油を転売するという、発想がキテレツなストーリーで、ドタバタ感もたっぷり。ひたすら楽しい映画です。

最高の穿孔技術を持っているピンドリ役をソ・イングクが演じています。「君に泳げ!」以来8年ぶりの映画で、2作目の主演。

ドラマ「応答せよ1997」や「元カレは天才詐欺師」でみせた、ワルかわいさ全開で、ソ・イングクのよさ全部のせ!なストーリーでした。

☆☆☆☆☆

映画「パイプライン」

公式サイト:https://klockworx-asia.com/pipeline/

☆☆☆☆☆

<あらすじ>
盗油業界最高の穿孔技術者として知られるピンドリは、大企業の後継者ゴヌが立案した、数千億ウォンの石油を盗む計画に参加することに。プロ溶接工のチョプセ、地中を透視できるかのように把握しているナ課長、怪力の掘削人ビッグショベル、彼らを監視するカウンターと、人生の大逆転を夢見るメンバーが作戦に加わり、互いに騙し騙されながら計画を進めていくが、やがて事態は予想外の方向にこじれ始めていき……。


送油管に穴を開けて石油を盗み出す「盗油」。日本では聞いたことのない犯罪なので、映画のための設定なのかと思ったら、韓国では年間10件ほど起きていたんだそう。2020年にはたった1件に減ったぜ!わーい!という記事がありました。


「盗油」って、たしかにライフラインへの打撃は大きいけど、大胆だけど地味な犯罪ですよね。おまけに、“穴掘り”映画って、ほとんどの場面が地下になってしまうんです。

その単調になりそうな展開を、裏切り行為とだまし合い、ワケアリメンバーの事情で盛り上げるので、飽きさせない。下手すると「ありきたり」になりそうな素材をうまく組み立て、ド派手にドッカーンが楽しめます。

ユ・ハ監督は、この映画を「負け犬のアクション・カーニバル」と語っていて、なるほど、まさに!でした。

盗賊一味のリーダーであるピンドリを演じたソ・イングクは、筋肉美を披露しつつ、泥まみれの焦燥感漂う風貌。

(画像はKMDbより)

インタビューで、「着飾るけどヒゲのそり残しがあるとか、もし気づいてもらえたらありがたい」と語っていたので、めっちゃ注目しました。「おお、これか!?」が分かったときはうれしかった……。


推理力はあるのに、肝心なところでピントがずれてる警察官役のペ・ユラムや、偽ピンドルとしてコンプレックスを抱えながらチームに合流した溶接工役のウム・ムンソクら、助演メンバーがコミカルなシーンをもり立ててくれます。


もうひとつの“穴掘り”コメディ「コレクターズ ソウルに眠る宝刀を盗み出せ」は、悪を持って悪を制すリベンジが楽しめました。


「パイプライン」の方はというと、どれだけ派手にぶちかましてくれるのかがポイント。人生の一発逆転を狙う登場人物たち。

憎めないんですよ、素直なおバカさんたちで。


映画「パイプライン」108分(2021年)

監督:ユ・ハ

脚本:ユ・ハ、キム・ギョンチャン

出演:ソ・イングク、イ・スヒョク、ウム・ムンソク、ユ・スンモク、テ・ハンホ、ペ・ダビン

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