貧乏でドジで学のないシングルマザーが、新しい恋に出会い、自立を目指す物語「がんばれ!クムスン」です。
☆☆☆☆☆
「がんばれ!クムスン」
DVD
☆☆☆☆☆
父は病死、母には捨てられ、祖母に育てられたクムスン。いまは美容師を目指している。ところが、叔母の下宿に住む大学生のチョンワンと一夜を共にし、妊娠。家族の反対を押し切って結婚するも、新婚4日目で夫が事故死。行く当てのないクムスンは、そのまま婚家で暮らすことを決意する。姑や義兄から冷たくされながらも、息子フィソンを出産し、あらためて美容師に挑戦しようとアルバイトを始めたところで、外科医のク・ジェヒと出会う。
全163話もありますが、1話がだいたい40分程度。かるーく観られるファミリードラマです。韓国では最高視聴率42%を獲得したという、オバケぶり。
わたしは某配信系の無料サービスで観ていたのですが、そこのコメント欄に並ぶ罵詈雑言がけっこうすごくて、これを読むのも楽しみにしていました。
・食べ方が汚い! サイテーな女だ!!!
・居候のくせに姑に文句言うなんて、サイテーな女だ!!!
・息子をほったらかしてデートするなんて、サイテーな女だ!!!
こんなに本気で観ている人がいるなんて、制作者側も本望なんじゃないかと思ってしまいました。とはいっても、クムスンは「サイテーな女」では全然ありません。
夫が亡くなっても、嫁は嫁。追い出されても舞い戻ってきたクムスンは、「居候」状態ではありますが、6人家族の家事労働を一手に引き受けています。
長男が結婚して(クムスンの夫は三男)、兄嫁がやって来た時。進歩的な考えの彼女はクムスンを見てびっくりするのです。
「今どきタライで洗濯するなんて! 洗濯機を買いましょう」
このドラマ、韓国で放送されたのは2005年ですからね。念のため。
こんな状況に誰も疑問を持たない。それが韓国の「家」における「嫁」なんだなーと強く印象に残っています。言葉は悪いけど、「奴隷」にしか見えない。「家族」というより、無料の「家政婦」なんです。兄嫁のような感覚が、文学の世界で大爆発しているんだなと感じました。
とにかくドジで、何かやらせると事故を起こし、母に甘えたことがないから人への頼り方も分からない。それでも明るくポジティブな主人公クムスンを演じたのはハン・ヘジン。すんごい美人なのに、気が強くて、おバカで、根性だけで人生を切り開くクムスンを熱演していました。
映画への出演はまだ少なく、ファン・ジョンミンと共演した映画「傷だらけのふたり」しか観てなかった。
https://note.com/33_33/n/n3ae284a185f8
クムスンを妊娠させて、すぐに死んじゃう三男は、キム・ナムギルが昔の名前で出ています。そして次の恋の相手、ク・ジェヒを演じるのはカン・ジファン。最初はめっちゃイヤなヤツなんですが、「恋に落ちた男」になったとたん、めっちゃかわいくなります。その点、「傷だらけのふたり」のテイルも同じだったなー。
自宅勤務生活とゴールデンウィークを経て、家事労働をひとりでやるのも疲れてきました。我が家はもともとわたしひとりでやっていましたが、ずーーーーっとテレビを観ている人が家にいる中でやるのは、ちょっとだいぶ気持ちが違いますね。
韓国の物語に「家族」ははずせないテーマです。クムスンの日常が当たり前だった時代から、いまはずいぶんと変わったのではないか。我が家も改革したいと思ったのでした。
☆☆☆
(ここから追記)
2021年3月に「ミナリ」が日本で公開され、第93回アカデミー賞6部門にノミネートされました。この記事では長くなるから省略したんですが、クムスンのおばあちゃんを演じたのが、ユン・ヨジョン。「ミナリ」でも破天荒なおばあちゃんを演じて助演女優賞にノミネートされています。
わたしがユン・ヨジョンを初めて見たのが、この「がんばれ!クムスン」で、嫁をいびり尽くす毒舌と、孫には限りなく甘い姿に、韓国のハンメ(おばあちゃん)そのもののような印象を持っていました。
この時、ユン・ヨジョンはまだ50代だったそう。初めての「おばあちゃん役」に迷っていたけれど、台本を受け取ってみたら、めちゃくちゃセリフが多い! 脚本家に電話して抗議したとバラエティ番組で語っていました。
(普通、そんなことせんやろ。だから恐れられるのや……と思ったw)
SBS「ヒーリングキャンプ」
TBC3期のタレントとして20歳でデビューし、キム・ギヨン監督の「火女」でその年の映画賞を総なめにします。その後、結婚して引退。アメリカに移住して12年暮らしたそう。1984年、離婚して韓国に帰国し、再び俳優として活動を始めますが、最初は端役ばかり。時代的に、「離婚した女がテレビに出るなんて!」と言われたりなんかもして、かなり苦労したようです。
「ミナリ」特集として、YTにユン・ヨジョンのテレビ出演がたくさん。
— mame3@韓国映画ファン (@yymame33) April 24, 2021
KBSの「her story」では、映画「浮気な家族」の話やデビューのきっかけなど。
Q:難しい演技は?
ヨジョン:簡単な演技の方が怖い。自分がダメになってるってことだから。
80歳まで演じられるかなーとも。https://t.co/iMMwcTIRuS
新時代の母を演じたり、年下の男性とのベッドシーンにも挑戦したり。「生きるためにワンシーンを命がけで演じています」と語り、ドラマに、映画に精力的に出演し、「韓国映画界の永遠のミューズ」と呼ばれるまでに。
「難しくない、痛みのない人生なんてあるわけない」
バラエティー番組で明かしたユン・ヨジョンの哲学は、「ミナリ」の世界そのものかもしれない。英国アカデミー賞の授賞式でも毒舌コメントをして、みなを笑わせ、でも後で謝罪したらしいけど。
晴れ舞台でオスカー像を手に、ユン・ヨジョンらしいコメントが聞けることを期待したい。
ドラマ情報「がんばれ!クムスン」MBC全163話(2005年)
演出:イ・デヨン
脚本:イ・ジョンソン
出演:ハン・ヘジン、カン・ジファン、イ・セウン、
パク・イナン、キム・ジャオク、ユン・ヨジョン
コメント
コメントを投稿