字幕翻訳は「要約翻訳」だと語る、太田直子さん。映像翻訳は「1秒4文字」が絶対に厳守すべきルールなためです。
映画を観るなら字幕派で、実際に字幕翻訳もしていたわたしにとって、太田さんの『字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ』は、痛快愉快な一冊でした。
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『字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ』
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著者の太田直子さんは、「ボディガード」や「コンタクト」など、多くのハリウッド映画を手掛けられている方です。
字幕翻訳の裏側を綴った本は他に、『字幕屋のニホンゴ渡世奮闘記』『字幕屋に「、」はない (字幕はウラがおもしろい)』があります。
太田さんがいかにして字幕翻訳家となったのかを綴った『字幕屋のニホンゴ渡世奮闘記』は、あまりコースが明確でない「プロの翻訳家」となるまでの道のりが見どころ。
『字幕屋に「、」はない (字幕はウラがおもしろい)』は、タイトルどおり字幕に「、」や「。」を使わないことなど、技術的な話というか、そこから生まれる苦労を綴った本。
そして『字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ』には、日本語に悩まされる字幕屋さんの苦労が綴られています。
日本語の文章で一番難しいのは、なんだと思いますか?
太田さんは、言葉の使い分けではないかと指摘。年齢、性別、敬語、立場の違いによるキャラクターは、一人称や語尾に反映されます。そのため、一本の映画の中で言葉が変化するのか、しないのかまで含めた選択をしなければならないのです。
めっちゃ大変な仕事ですね……。
日本で初めて映画に字幕がついたのは、1931年に上映された「モロッコ」という映画だったそう。工夫と試行錯誤を重ねた日本の字幕文化は、世界一クオリティが高いとのこと。
Netflixなどの配信サービスが増えたことで、英語圏でも字幕で映画を観るスタイルへの抵抗が薄れた、といわれています。ただ、量産されることで、質の担保が難しくなるのも事実。でも、字幕って職人仕事のイメージがあるから、ひとりで改善していくのは厳しいかもしれませんね。
韓国ドラマ「それでも僕らは走り続ける」の主人公オ・ミジュが、まさに字幕翻訳家の仕事をしていました。
安いギャラを嘆きつつ、自分ができるギリギリまで考え抜く姿に、太田さんを重ねてしまった。
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