外国映画を観るとき、吹き替え版と字幕版のどちらを選びますか? わたしは字幕で観ることが多いんですよね。俳優さんの声を聞きたいという思いがあるのと、字幕の仕事の背景をちょっと知っているからです。
ビジネス翻訳、文芸翻訳、それぞれに難しさはありますが、映像翻訳の難しさは、なんといっても「文字数」です。1秒に3~4文字が基本なので、早口で話しているのか、タメがあるか、などなどで「文字通り」に訳すことができないことが多々あるのです。
「それを、誤訳って言われちゃうとツライのよね~」
という、字幕翻訳の裏側(というか嘆き)を綴った本が太田直子さんの『字幕屋に「、」はない (字幕はウラがおもしろい)』です。
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『字幕屋に「、」はない』
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1本の映画には、だいたい1000個のセリフがあるそう。セリフのタイミングに合わせて字幕を入れる枠を決める作業を「ハコ割り」と呼びます。以前、わたしも字幕制作の現場で仕事をしていました。そこでは、この「ハコ割り」作業をする人と、翻訳をする人、それをチェックする人で分業し、完成させていました。
で、この「ハコ割り」が下手な人と組むと、本当に訳が入らないんです。笑
この本でも「ハコ割り」と秒数を測るプロの話が出てきますが、こういう職人技の話は、ふだん表に出てこないことだらけなので、読んでいて本当におもしろいです。
アニメやファンタジーでは、熱烈なファンから「このセリフのウラの意味が伝わらない!」というクレームが入ることもあるそうです。でも、映画を観に来る人は、熱烈なファンよりも、1回だけの方が多いのです。当然、多い方に合わせることになっちゃう。
こういう、字幕制作のことを知っていると、「ああ、ここ、すごく工夫してある!」と気づくこともできます。
たとえば、こんなセリフです。
嘘じゃないわ
直訳ですが、ピッタリですよね。でも、セリフの長さが1秒以下であれば、6文字を4文字以下にしなければならないのです。
字幕翻訳家になったつもりで、ちょっと考えてみてください。
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太田さんの修正はこちら。
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本当よ
なるほど!ですよね。字幕のことを知っていると、映画を2倍3倍楽しめますよ。おすすめの本です。
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