スキップしてメイン コンテンツに移動

ドラマ「ロースクール」#713


「ルールは、頭のいい奴に都合のいいように作られてるってことだっ!」

マンガ『ドラゴン桜』で、弁護士の桜木建二が檄を飛ばす時のセリフです。世の中が気に入らないなら、自分でルールを作る側に回るしかない。

そう思ったのかどうかは知らないけれど、ドラマ「ロースクール」でルールを作る側の人・行使する側の人たちは、ホントーーーに、自分の都合のいいように法を解釈していました。

その姿、アッパレと言いたくなるほど。

憑依型俳優キム・ミョンミン主演のドラマで、若手俳優たちがのびのびと演技している、というか、しごかれています。現在、Netflixで配信中です。

☆☆☆☆☆

ドラマ「ロースクール」Netflixで配信中
https://www.netflix.com/title/81413647

☆☆☆☆☆

<あらすじ>
韓国一の名門・韓国大学のロースクールで、教授が殺害されるという事件が発生。検事出身で、現在は刑法教授のヤン・ジョンフンが逮捕されてしまう。「ヤンクラテス」とあだ名されるほどのスパルタで知られるジョンフンは、自身の事件をも教材にしようとするが……。


2004年から放送されていたJ・J・エイブラムス監督のドラマ「LOST」って、ご存じでしょうか。無人島に不時着した乗客の、過去や秘密が徐々に明らかになっていく、というストーリーで、日本でも大人気になりましたよね。

当時のキャストがインタビューで、「来週の脚本を受け取った時、“オレ、まだ生きてるかなー”って、まず確認してたよ。笑」なんてことを語っていました。

ドラマ「ロースクール」でいうと、「来週は、わたしが“犯人”だー」なんて言っていたんじゃないかと思うくらい、殺人事件の容疑者が次々に変わっていくんです。

そして回を追うごとに、学生と教授、学生同士の関係、過去、秘密が明らかになっていきます。

犯人は、いったい誰なのか。なんのために殺したのか。

推理ドラマをベースに、突きつけられるのは、法律における「正義」です。

落第スレスレの落ちこぼれ学生もいれば、優秀なんだけどコミュニケーションに問題のある学生もいる。ピカイチの頭脳を持っているけど、倫理観がなかったり、必死さのあまり一線を越えてしまったり。

司法試験に挑戦する学生たちの、厳しい現実。こんな苦労をして「法律の専門家」になった後、どんな道をいくのでしょう。

現役のプロである検事、政治家、弁護士、大学教授たちの姿が、学生たちにも大きな影響を与えていきます。

キム・ボム、リュ・ヘヨン、ヒョヌら、若手俳優たちが悩める学生を熱演。「パラサイト 半地下の家族」で、“印象的”な家政婦を演じたイ・ジョンウンが、民法の教授を演じています。

でも、わたし的にはやっぱり“ヤンクラテス”を、静かに、熱く、シビアに演じたキム・ミョンミンを推したい。

ドラマ「ベートーベン・ウィルス」でみせた“オレ様指揮者”に、輪をかけて我が道を行く教授役です。


徹底した役作りで知られるキム・ミョンミンは、1996年にSBSの第6期公開採用タレントに選ばれてデビュー。2004年にドラマ「不滅の李舜臣」の李将軍役で一躍スターとなります。

役作りのために20kgもの減量をしたり、人との関わりを絶つことで絶望を演じたり。ロバート・デ・ニーロみたいな俳優なんです。

今回のドラマでは、難しい法律用語をベラベラと速射砲のように連射。相手を追い詰めていくシーンが多かったのですが、インタビューで「セリフをしっかりと覚えるのに、普通のドラマの10倍の時間がかかった」と語っています。

(全編韓国語です。時間ができたら字幕をつけたい)


政治家のスキャンダルが続き、検察改革が叫ばれる韓国で、自分でルールを作る側への怒りを表現した、骨太のドラマです。正義を具現化しようとする「大人のかっこよさ」を、若者目線で感じられますよ。


ドラマ情報「ロースクール」JTBC 全16話(2021年)

演出:キム・ソクユン

脚本:ソ・イン

出演:キム・ミョンミン、キム・ボム、リュ・ヘヨン、イ・ジョンウン、イ・デビッド、イ・スギョン、ヒョヌ


コメント

このブログの人気の投稿

人生をやり直したい男の誤算が招くコメディ 映画「LUCK-KEY」 #298

名バイプレーヤーとして知られる俳優が、主演を務めるとき。その心中はドッキドキでしょうね……。 映画「ベテラン」や「タクシー運転手 約束は海を越えて」で味のある演技を披露していたユ・ヘジンにとって、初めての単独主演映画が「LUCK-KEY ラッキー」でした。 ☆☆☆☆☆ 映画「LUCK-KEY」 https://amzn.to/3watGNT ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 売れない貧乏役者のジェソンは、将来に絶望して自殺を試みます。が、大家の侵入によって失敗。せめて身ぎれいになってからにしようと銭湯に行くことに。石けんを踏んで転倒した男の鍵をすり替え、男のフリをして暮らそうとしますが……。 原作は内田けんじ監督のコメディ「鍵泥棒のメソッド」。リメイク版の試写会で、観客が提案したタイトルが「LUCK-KEY」で、それがそのまま使われることに決まったのだそう。 ☆☆☆☆☆ 映画「鍵泥棒のメソッド」 https://amzn.to/3jEEotv ☆☆☆☆☆ ユ・ヘジンが演じるのは記憶喪失になった男「ヒョヌク」なのですが、ロッカーの鍵をすり替えられてしまったため、周囲には貧乏役者だと思われています。助けてくれた救急隊員の実家である食堂で働くことになりますが、刀さばきはすごいし、客さばきもうまい。だけど彼自身は俳優として成功し、親孝行しなければとマジメに努力します。 (画像はKMDbより) 一方、鍵をすり替えて逃げ出したジェソンの方は、豪勢な「ヒョヌク」の家にビックリ。贅沢三昧に自堕落に暮らし始めますが、隠し部屋で多くの銃を発見してしまいます。 実は「ヒョヌク」は、100%の成功率を誇る伝説の殺し屋だったのです!!! というお話。とにかくおかしな方へ、おかしな方へと話が転がっていく、コメディです。 (画像はKMDbより) 驚くのはユ・ヘジンの身体能力の高さ。趣味は登山と日曜大工だそうですが、いや、すごすぎやろというくらい、見事なアクションをみせています。 映画では、どう見てもおっちゃんなのに身分証は20代だったり、大部屋俳優から出世しちゃったり。 記憶は失っても、努力の仕方は覚えてるんですよね。 逆に、鍵をすり替えたジェソンは、夢はでっかく、だけど行動力はゼロという青年です。ふたりの対照的な生き方は、入れ替わっても続いてしまう。「幸運の鍵」をつかむには、という部分で、ちょっと身に...

『コロナ時代の選挙漫遊記』#839

学生時代、選挙カーに乗っていました。 もちろん、なにかの「候補者」として立候補したわけではありません。「ウグイス嬢」のアルバイトをしていたんです。候補者による街頭演説は、午前8時から午後8時までと決まっているため、選挙事務所から離れた地域で演説をスタートする日は、朝の6時くらいに出発することもあり、なかなかのハードワークでした。 選挙の現場なんて、見るのも初めて。派遣される党によって、お弁当の“豪華さ”が違うんだなーとか、候補者の年齢によって休憩時間が違うんだなーとか、分かりやすい部分で差を感じていました。 それでも、情勢のニュースが出た翌日なんかは事務所の中がピリピリしていることもあり、真剣勝負の怖さを感じたものでした。 「猿は木から落ちても猿だが、代議士は選挙に落ちれば“ただの人”だ」とは、大野伴睦の言葉だそうですが、誰だって“ただの人”にはなりたくないですもんね……。 そんな代議士を選ぶ第49回衆議院議員総選挙の投票日が、今週末10月31日に迫っています。   与党で過半数を獲得できるのかが注目されていますが、わたしが毎回気になっているのは投票率です。今回は、どれくらい“上がる”のかを、いつも期待して見ているのですが、なかなか爆上がりはしませんね……。 ちなみに、2017年10月に行われた第48回衆議院議員総選挙の投票率は、53.68%でした。 『コロナ時代の選挙漫遊記』の著者であり、フリーライターの畠山理仁さんは、選挙に行かないことに対して、こう語っています。 “選挙に行かないことは、決して格好いいことではない。” 全国15の選挙を取材したルポルタージュ『コロナ時代の選挙漫遊記』を読むと、なるほど、こんなエキサイティングな「大会」に積極的に参加しないのはもったいないことがよく分かります。 ☆☆☆☆☆ 『コロナ時代の選挙漫遊記』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 昨年行われた東京都知事選で、「スーパークレイジー君」という党があったのをご存じでしょうか? またオモシロ系が出てきたのかしら……と、スルーしてしまったのですけれど、本を読んで、とても真剣に勝負していたことを知りました。300万円もの供託金を払ってまで挑戦するんですもん。そりゃそうですよね。 この方の演説を、生で見てみたかった。もったいないことをしてしまった。 こんな風に後悔しないで済むように、畠...

まったく新しい映画体験に思うこと 4D映画「ハリー・ポッターと賢者の石」 #484

映画の公開20周年を記念して、「ハリー・ポッターと賢者の石」が初の3D化されました。体感型の4DXやMX4Dで上映されています。 映画を「配信」するサービスが増え、パソコンやスマホでも映画が観られるようになったいま、「劇場で観る楽しみ」を、最大限与えてくれる上映方法だと思います。 でも、なぜか、4D映画ってモヤッとしてしまう……。 クィディッチゲームの疾走感や、チェスの駒が破壊されるシーンの緊迫感は倍増されていたので、こうした場面の再現率、体感度は以前に比べてかなり上がってきたように感じます。 (画像はIMDbより) それでも、稲光、爆風や水滴など、ストーリーとのズレを感じてしまう。 むかし観た4D映画では主人公が「GO! GO!」と走り出すシーンで、スポットライトがピカピカと点滅していたんですよね。わたしの頭の中で、「パラリラ パラリラ~」という暴走族のバイクの音が再生されてしまいました。 そうしたストーリーとは関係のない効果は減り、洗練されてきた感じはするものの、やっぱりスッキリしないものは残るのです。 4D映画はなぜモヤるのだろうと考えていて、「誰の目線で映画を観ればいいのか混乱する」からかもしれないと気がつきました。 ここで、あらためて4D映画について説明しておきます。 4D映画とは、映画に合わせて光や風などの演出が施された、アトラクション型の「映画鑑賞設備」のことです。 2D映画でも、4D映画の設備で上映されなら、4D映画になります。今回わたしが観た「ハリー・ポッターと賢者の石」は、3D映画の4D上映でした。 日本で導入されている4Dシアターは2種類。韓国のCJ 4DPLEX社が開発した4DXと、アメリカのMediaMation社が開発したMX4Dです。わたしは今回、TOHOシネマズで観たのですが、導入しているのはMX4Dのほうでした。サイトによると、体感できる環境効果はこちら。 特殊効果 ・シートが上下前後左右に動く ・首元、背後、足元への感触 ・香り ・風 ・水しぶき ・地響き ・霧 ・閃光 なるほど、のっけからシートがジェットコースターのように揺れ、風が吹きつけ、地響きも、ふくらはぎに礫が当たるような感触も体験できました。 人間社会で虐待されながら育ったハリー・ポッターは、ハグリットと出会うことで初めて魔法の世界に触れることになります。 ホグワーツ魔...