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ドラマ「ベートーベン・ウィルス」#666


思わずDVDも買っちゃったくらい、驚異のオレ様指揮者キム・ミョンミンに火を付けられたドラマです。最近は「夢をあきらめない」ドラマが増えたけど、その走りだったかも。


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日本でも大人気となった二ノ宮知子さんのマンガ『のだめカンタービレ』を基にしたドラマです。チャン・グンソクが、天才的な音感を持ちながら、警察官をしているカン・ゴヌを熱演しています。


何者かになりたいのに、そのために動くことができない人々を描いたドラマなのですが、動けない“理由”が問題なわけで。韓国の若者を指す言葉に、「N放世代」があります。


三放世代:恋愛・結婚・出産をあきらめる

五放世代:さらに就職とマイホームもあきらめる

N放世代:不定数の「N」=すべてをあきらめる


つらすぎる現実に言葉を失ってしまう……。「夢をあきらめない」ドラマが増えた背景には、こうした現実があるのかもしれません。


パク・ボゴム×パク・ソダムの「青春の記録」や、起業を目指す若者たちを描いた「スタートアップ:夢の扉」などは、20代が主人公でした。



その点、異色の設定だったのが「ナビレラ -それでも蝶は舞う-」。70歳のおじいちゃんが、バレエにチャレンジするというドラマです。ちょっとムリゲーなんでは、と笑ってしまったわたし自身が、おじいちゃんの足を引っ張ろうとする輩と同じだったと気がついた時の戦慄……。


まずは、自分のことをがんばろうぜ。言い訳してるヒマなんかない!


頭では分かっていても、出てしまうのが言い訳なのです。

「年齢が」

「父が病気で」

「お金がなくて」

音楽を続けられなかった“理由”を、「言い訳です!!」と切り捨てるのが、「ベートーベン・ウィルス」のカン・マエ。驚異のオレ様指揮者に扮したキム・ミョンミンに、笑い、震え、泣いたドラマでした。

(やっと本筋に入れた)


「ソクラン市を音楽の町にしよう」と企画したものの、公演の費用を横領され、オーケストラは初日に解散することに。市民ボランティアで団員を募りますが、指揮者としてやってきたのは、オーケストラ・キラーとして知られるカン・マエ(マエストロ・カンの略)だった、というストーリー。


趣味として音楽を続けたい、程度の気持ちでやってきた団員たちに火を付け、どんどん本気にしていきます。まー、かなりパワハラで、「クソのカタマリ」というパワーワードも飛び出す指導でした。


ホントは誰もが、団員たちと同じ気持ちで暮らしているのではないでしょうか。本当にやりたいことがありつつ、生活のために、本意ではない仕事をせざるを得ない。そうして自分の心にフタをするのは、感受性を殺し、自分で自分を消してしまう行為なのだと思います。


言い訳にまみれているけれど、それでも今日も生かされている。だったらせめて、自分の心に正直に生きたい。


無愛想でぶっきらぼうなキム・ミョンミンに、火を付けられますよ。

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