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『わけるとつなぐ これ以上シンプルにできない「論理思考」の講義』#711


「わかる」は「わける」と同源の言葉といわれています。

広辞苑によると……

わかる(分かる):
① きっぱりと離れる。別々になる。
② 事の筋道がはっきりする。了解される。
③ 明らかになる。判明する。


わける(分ける):
① まとまりに境界をくっきりとつけて、二つ以上にする。区別する。


「二つ以上のグループに仕分ける」ということは、「違いを明らかにする」ことでもあります。違いを明らかにして「わける」ことによって、「わかる=理解する」が生まれるのだといえます。

理解する意味の「わかる」を書く時、「分かる」の漢字を使う理由が、これでした。「分けて、分かる」んだなと、自分で納得できるから。

ちなみに、「解る」「判る」といった漢字を使う方もいますが、これらの漢字は漢字表にない音訓なので、新聞などでは使われない表記です。

こうした表記については『記者ハンドブック』が参考になりますよ。


で、「なんかよく分かんないわー」という時は、だいたい「わける」が足りていないのではないか。

たとえるなら、まな板の上に、ジャガイモとニンジンとタマネギとお肉とお鍋とスパイスを並べて、カレーを作ろうとしているような状態。これ、全部いっぺんにお鍋に放り込んでも、おいしいカレーにはならないんですよね。

まずは、それぞれの野菜を切らなければならない。

おまけに野菜ごとに、ちょうどいい大きさにしないといけない。

などなど、何かをしようとする時は、自分が「わかる」単位まで「わける」ことが大切。とはいえ、「わける」って、なかなかに一筋縄ではいきません。おまけに「わけた」ものを再度組み立て直して、形にしなければならないのですから。

深沢真太郎さんの『わけるとつなぐ これ以上シンプルにできない「論理思考」の講義』は、そんな「わける」の重要性をとても分かりやすく説いた本です。

☆☆☆☆☆

『わけるとつなぐ これ以上シンプルにできない「論理思考」の講義』https://amzn.to/3wQVlEP

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「論理思考」の講義というと、めっちゃお固い、文字が詰まった本をイメージしませんか?

この本は、ちょっと違うんです。著者の深沢さんは、「ビジネス数学教育」の第一人者だそう。

え、すごい!!!

算数講座に困っているわたしの救世主!?

という感じで、他の「数学本」も手に取りましたが、やっぱり『わけるとつなぐ』が断然読みやすかったです。

なぜなら、数字が出てこないから。

ではなく、ストーリー仕立てだから。

一度も勝てなかった弱小サッカーチームが、「考える練習」によって勝利するまでのお話なのです。おまけに、主人公の女子高生アヤは、数学が苦手。めっちゃ共感する……。

弱小サッカーチーム最後の試合を前に、キャプテンのアヤの前に現われたのは、サンドロというおじさん。彼は、アヤに「ちゃんと考える」ことを薦めます。

「ちゃんと考える」とは、「わける」と「つなぐ」をやるだけ。これだけで、勝つ可能性が高まるというのです。

最初のレッスンでは、「なぜ数学が苦手になってしまったのか?」について考えています。


本を読んですぐの頃、わたしは「わける」ことに重点を置いていました。日々の「分からない」を、なにが・どこがが明確になるまで分けていたんです。

でも、最近になって、実は「つなぐ」方が難しいのではと思うようになりました。というか、ちゃんと分けられていないから、難しいのかもしれない。

上の画像にあるように、レッスンでは分けたものを矢印でつないでいきます。たぶん、この矢印の幅ができるだけそろっている方が美しい=分かりやすいのだと思います。なめらかにつながっているというか。

「わける」がちゃんと分けられていないと、なめらかにつながらないんです。

サンドロさんが紹介してくれた「わける」と「つなぐ」は、実はコンサルタントがよく使うさまざまなフレームワークに対応しています。

企業の課題発見や、将来のキャリア設計など、いろんなシーンで使えますが、特におすすめなのが、このブログのような記事制作に使うことです。


ここから話が大きく脱線します。


日本語の文章には「意味段落」と「形式段落」があります。

意味段落:内容に応じて分けた文のまとまり
形式段落:意味に直接的な関係はなく、形の上のまとまり

わたしは紙媒体にいたので、これまでは意味段落を意識して書いていました。ところが、webで書くようになって、以前より段落を分けるようになりました。形式段落を増やしたわけです。

特にスマホで見た時、真っ黒な文字のカタマリに見えてしまうことを避ける目的からですが、これだと、意味段落が目立たなくなるんですよね。文字のカタマリであることは同じなので。

そして、分からなくなったんです。意味としての「行間」が。

そこでこの「#1000日チャレンジ」の最初の頃は、ずっと「行間」の練習をしていました。広げたり、縮めたりしながら、ちょうどよい幅を探す。そうして段落ごとの、ちょうどよいつながりを探る。

試行錯誤した結果、意味段落としての切れ目に画像を差し込んでみたのが、街角のクリエイティブで書いた「82年生まれ、キム・ジヨン」の記事でした。

ちょうど本を読んですぐの頃に書いた記事で、ありがたいことに、「とても読みやすかった」という感想をもらうことができました。

いまもまだ「お試し中」ですが、ようやく「わける」と「つなぐ」のなめらかさが、ほんのりと分かってきたように思います。


閑話休題。

「わける」と「つなぐ」信者となったいま。

社内の研修で講師をしてくれる人には、必ず『わけるとつなぐ』を渡しています。テーマとゴールをブレストする前に、お互いの共通認識として、「わける」と「つなぐ」を持っていたいからです。

先日実施した「数字を使わない算数講座」でも、後輩にわたしの「分からない」を分けてもらい、解説をつないでいってもらいました。


いろんな場面で使える「わける」と「つなぐ」。あとは算数が好きになれる方法を探すだけです。おいしいカレーを作りながらみつけたい。


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