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『時代の風音』#973

「世界的巨匠」なんて呼ばれることを、たぶん宮崎駿監督はお嫌いなんでは……と思ったことがあります。 何者かになりたくてアニメをつくってきたわけではないだろうから。 情熱のまま、子どものように無邪気に、ガンコに物語を紡いできた姿は、鈴木敏夫さんの『天才の思考 高畑勲と宮崎駿』に綴られていました。 『天才の思考 高畑勲と宮崎駿』#927   そんな宮崎監督にも“若かりし頃”はあったわけで、堀田善衛さん、司馬遼太郎さんという知の巨人に挟まれて、20世紀を語りつくす鼎談『時代の風音』では、「書生役」というか、「小僧役」のような扱いをうけています。 ☆☆☆☆☆ 『時代の風音』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ ロシアや中国、イスラームに日本、近代から現代へと時代が移る中で、日本人が得たものと、失ったもの。世界が向かう方向についてなどなど、話題がとても広い。 もともと別の出版社から刊行されていた本の再版なのですけど、最初に刊行されたのが1992年。 ソ連が崩壊したのは1991年12月25日なので、まだ生々しい興奮が感じられます。堀田善衛さん曰く、ソ連は「難治の国」なのだとか。 イスラムとモンゴル族に気を使わざるを得なかったイワン雷帝。イデオロギー独裁政治から、強行着陸を目指すしかなかったゴルバチョフ。 合議制という発想がなかったのだから、そうなりますよね……。 なーんて、分かったようなことを書いていますけれど。 この鼎談、堀田さんと司馬さんの知識量が豊富すぎて、しかも怒濤なので、まったく理解できない……。笑 たとえていうなら、空中戦のドッジボールのコートにいるような感じです。ぜったい自分にボールがヒットする可能性はない。 そんな中、宮崎さんが何か言うと、かるく司馬さんにいなされてしまうシーンも。 ちょうどこの頃、映画を準備されていた宮崎さん。司馬さんからこんな質問を受けます。 司馬「今度の作品の題名はなんでしたっけ。『ピンクの豚』?(笑)」 宮崎「ヤケクソみたいな名前なんですけど『紅の豚』」 司馬「紅か。おもしろそうですね。また飛んでいくんでしょう」 ピンク……。飛んでいく……。 門前の小僧のように、何度も読めば、少しはヒットするところが出てくるのかしら。と、思いつつ、自分がふだん、いかに「分かりやすい」ものに触れているのか感じました。 難しいことを分かりやすく言えるって、すごい知

『東大教授がおしえる やばい日本史』#955

「どうしたら本を一冊読めるようになりますか?」 知人にそう聞かれて、とても困りました。息をするように自然に本を手にしてしまうわたしにとって、「読む」ことは当たり前だったからです。 この方のように「文字を追いかけるのが苦手」な人は、意外と多いのかもしれません。 わたしの友人も「文字を追いかけるのが苦手」なため、「聞く」ことで本を読んでいます。AmazonのAudibleやオーディオブックなど、最近は書籍の音声コンテンツ化も増えていますよね。 この話を聞いて、散歩のときにAudibleで本を「聞く」ようになりました。おもしろそうなら紙の本を買うこともあります。実質2冊になっちゃうけど、ポイントを振り返るには、やっぱり紙の方が便利なので。 最近の散歩の共は、Podcast 「歴史を面白く学ぶCOTEN RADIO」です。 「COTEN RADIO」とは、株式会社COTEN代表の深井さん、楊睿之さん、そして株式会社BOOK代表の樋口さんが、日本と世界の歴史を「現代の言葉で」語り尽くす番組です。 COTEN RADIO コテンラジオ オフィシャルサイト   歴史上の偉人と呼ばれる人たちも、踏んだり蹴ったりな目に遭ったり、絶望したり、もがいたりしていた話がおもしろくて、聞き入ってしまう。 中でも、今年の1月下旬から配信されている、東京大学史料編纂所の本郷和人教授が語る日本の歴史も、人間ドラマの語りが秀逸。 思わずご著書の『東大教授がおしえる やばい日本史』を買ってしまいました。 これも“やばい”おもしろさを秘めた本でした。 ☆☆☆☆☆ 『東大教授がおしえる やばい日本史』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 聖徳太子に紫式部、徳川家康や坂本龍馬といった武士たちまで、日本史に必ず登場する偉人たちの姿が立体的に紹介されています。和田ラジヲさんのイラストもクスッとなるポイントです。 キーワードは、「人はすごいとやばいでできている!」。 (画像はAmazonより) 「COTEN RADIO」の良さについて、「現代の言葉で」語り尽くすところと紹介しましたが、この本も同じ。難しい話をかみ砕いて説明してくれていて、偉人たちの人間性に触れることができます。 本屋さんでずっとこの本を探していたんですが、歴史コーナーやエッセイの棚では、まったく見つけられませんでした。検索機で探したところ……。 子ども