和牛券、魚券ときて、今度はマスク「2枚」かーという話を同僚としておりました。
「これほど小説家泣かせの施策ってなさそうだよね」
「レビュー欄に、和牛のところがリアルじゃないので☆ひとつマイナスです、とか書かれそう」
リアルじゃない。どんなニュースを聞いてもウソっぽい。
だからわたしは最近、ニュースからもTwitterからも離れるようにしています。自分の感受性が少しずつ削られてしまうような気がするから。
いまでは死語であろうノンポリ。
日本の市民は、いつか怒ることがあるのですかね?
1987年、当時の安田火災が57億円でゴッホの「ひまわり」購入したことが話題になるなど、日本はバブル景気に酔っていました。韓国にとって1987年は、民主化運動が激化した年です。
オリンピック開催を1年後に控え、高まる民主化への熱。「6月民主抗争」と呼ばれる民主化抗争のきっかけとなったのは、ひとりの大学生の死でした。
その様子を描いた映画が「1987、ある闘いの真実」です。
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映画「1987、ある闘いの真実」
DVD
Amazonプライム配信
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1987年1月、全斗煥大統領による軍事政権下の韓国。南営洞警察のパク所長は北分子を徹底的に排除するべく、取り調べを日ごとに激化させていた。そんな中、行き過ぎた取り調べによってソウル大学の学生が死亡してしまう。警察は隠蔽のため遺体の火葬を申請するが、違和感を抱いたチェ検事は検死解剖を命じ、拷問致死だったことが判明。さらに、政府が取り調べ担当刑事2人の逮捕だけで事件を終わらせようとしていることに気づいた新聞記者や刑務所看守らは、真実を公表するべく奔走する。また、殺された大学生の仲間たちも立ち上がり、事態は韓国全土を巻き込む民主化闘争へと展開していく。
2017年に韓国で公開された時は、1か月余りで観客動員数700万人を突破。まだ記憶が鮮明な民主化抗争の映画化に、心を熱くした人もいたのだと思います。
ただし、この映画は順調に制作が進んだわけではなかったようです。
シナリオの初稿ができた2015年当時はパク・クネ政権のど真ん中。この時期、文化人を対象にブラックリストが作成され、「パラサイト 半地下の家族」でアカデミー賞を受賞したポン・ジュノ監督もそこに載っていたことが分かっています。
「『スノーピアサー』は市場経済を否定し、抵抗運動を煽っている」
https://note.com/33_33/n/n73f1ae7d934c
一方的な認定は、映画に関わる人たちを萎縮させました。
ブラックリストが論議される中で、民主化抗争をテーマにした映画です。当然、資金も集まらないし、キャスティングも難航。若手人気俳優のカン・ドンウォンが出演することが決まってようやく動き出したそうです。
監督はチャン・ジュナン。昨日ご紹介した「ファイ 悪魔に育てられた少年」に続いての劇映画です。
企画が動き出してからは、大物俳優陣の出演も決定。最大の悪役であるパク所長を演じるのは、ナイスミドルのキム・ユンソク。指名手配されている民主化運動家はソル・ギョング、大学生の死を不審に思い、調べを進める検事はハ・ジョンウが演じています。
実は、韓国ではハ・ジョンウが主演を務めたもう一本の映画「神と共に 第一章:罪と罰」が1週間後に公開となって、どちらも大ヒット。ハ・ジョンウも一躍ヒットメイカーの仲間入りを果たしました。
キム・ユンソクとハ・ジョンウが映画の中で対立するのは、これで3回目。火花の散るやり取りは、観ていてゾッとします。
拷問、隠蔽、マスコミ操作が「当然」だった時代に、「人間として扱ってくれ」という学生たちの声は大きな波となって、政府に迫っていきました。
「1987、ある闘いの真実」は民主化運動の表側の出来事ですが、より個人的な出来事を描いた映画にイ・チャンドン監督の「ペパーミント・キャンディー」があります。
1987年の抗争で、人生を狂わされたひとりの男を演じているのは、ソル・ギョング。この時は取り締まる側で、心に痛みを背負ってしまう役でした。なのに「1987、ある闘いの真実」では民主化運動の指導者を演じるという皮肉。
「人生は美しい」がキーワードとなる映画です。合わせて観るのがおすすめ。初恋は実らないものなんですよ。涙
いま、わたしが毎日目にしているリアルじゃない、ウソっぽい政策に対して、わたしは「人間として扱ってくれ」と言いたい。
映画「1987、ある闘いの真実」は、Amazonプライムのレンタルサービスに入っていますので、ぜひ。
映画「1987、ある闘いの真実」129分(2017年)
監督:チャン・ジュナン
脚本:イ・ファンギョン、ユン・ピルジュン、キム・ヨンソク
出演:キム・ユンソク、ハ・ジョンウ、カン・ドンウォン、ユ・ヘジン、キム・テリ、ソル・ギョング
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