4月に発令された緊急事態宣言と外出自粛要請は、前例主義の考え方をガランと変えたように感じます。だって、誰も経験したことがない事態。みんなが手探りで「よりよいやり方」を探していました。
過去の事例はもちろん、ロールモデルや人生プランなども吹っ飛んだかもしれませんが。
そんなもの不要ですよ、と『ぜんぶ、すてれば』の中で仰っているのが中野善壽さん。寺田倉庫の代表取締役を勤めた方です。
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『ぜんぶ、すてれば』
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「モノだけではなく、価値をお預かりする」という理念に基づいて事業を行っているという寺田倉庫。先日、日本最大のアート複合施設をオープンさせることを発表しました。会社の本拠地である天王洲アイル地区の活性化に力を入れた人が中野さんだそうです。
『ぜんぶ、すてれば』は、そんな中野さんにインタビューし、語録を集めた本です。
どれもドキリとする言葉ですが、特にスマホに関しては、「スマホで観る貧しい映画は文化じゃない」「どこで感動するかは自分で決める」と断言されています。
伊勢丹と鈴屋で新規事業の立ち上げを経験。その後、台湾で経営者となり、寺田倉庫の社長に就任。
一見、華やかな経歴に見えますが、生き方の根幹は「何も持たない」ことで、お金も生活に必要な分以外はすべて寄付してきたそう。
そんな異端の人物は、「会社」についてはこんな風に語っています。
こう聞くと、野放図な人かという気がしますが、自分でやると決めたことはやり抜く。信じて任せた以上、責任は自分にあるというのが信条。なんだか高潔な武士といった感じのイメージもわきます。
なぜビジネス本ではないのか?
なぜ一代記ではないのか?
いままでほとんどメディアに登場していないそうで、経営改革に関する書籍の出版依頼はすべて断ってきたのだとか。
でも、若手編集者の熱のこもった企画書が、中野さんを動かします。著者の印税は東方文化地域で支援を必要とする子どもたちに贈ることも決め、世に出た一冊なんです。
わたしが一番好きな言葉はこれでした。
3月半ばから在宅勤務となって、日々「よりよいやり方」を探しながら3か月以上が経ちました。ずっと家にいるので刺激が減った気がしていたのですが。
ああ、慣れてしまったと気づいたのです。
見知らぬことにも挑戦しなければと思った本でした。
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