スキップしてメイン コンテンツに移動

二大スターが初共演! 失った娘を取り戻せ 映画「クローゼット」 #539


いつの時代でも、どこの国でも、社会の歪みの被害者は、一番弱いところにいく。そこから目を背けることはできないし、もしできたとしても、呪縛から逃れることなんてできない。

ハ・ジョンウとキム・ナムギルという二大スターが初共演した映画「クローゼット」は、ぶっちぎりの「怖おもしろさ」でした。

☆☆☆☆☆

映画「クローゼット」

DVD

(画像リンクです)

Amazonプライム配信

(画像リンクです)

☆☆☆☆☆

<あらすじ>
妻を事故で亡くしたサンウォンは、娘のイナを連れて引っ越すことに。トラウマに苦しみつつ、仕事に追われ、娘のイナとの間にできた溝も埋めることができない。ある日、新しい友達ができたと笑顔を見せるようになったイナがこつ然と姿を消してしまう。必死で娘を捜すサンウォンの前に、彼女の行方を知るという謎の男ギョンフンが現れる。彼はクローゼットにすべての秘密が隠されていると言うが……。


トラウマを抱えながら娘と関係に悩む父・サンウォンを演じるのはハ・ジョンウ。

(画像は映画.comより)

新居に向かう途中での事故、新居に着いてすぐのアクシデント。緊張感がメリメリと高まっていく中、登場するのがキム・ナムギル演じるギョンフンです。ヘラヘラとした妖しさを振りまきつつ、不穏な空気の中で笑いもとっていく、ミラクルな男です。

(画像は映画.comより)

もうね。このふたりが出会った瞬間、画がしまるんです。

監督のキム・グァンビンは、これが長編デビュー。よくぞふたりをキャスティングしてくれたなーと思ってしまう。西洋的な「クローゼット」を舞台にしたミステリーに、日本のホラーを融合させ、ガツッと韓国映画に仕上げたといえるストーリーです。

心を閉ざし、父に邪魔にされていることを感じたイナは、新居で「新しい友達」と出会ったと語ります。見たことのないぬいぐるみを抱きしめ、浮かべる笑顔。人里離れた山の中で、カラスしかいない場所なのに……。

イナの「新しい友達」とは、誰なのか。そして、イナを連れ去ったのは誰なのか。

ギョンフンの職業は「退魔師」。聞き慣れない言葉ですが、悪霊を祓う霊媒師みたいなもんですね。イナがいる場所について説明する時のセリフが笑えます。

「『神と共に』って映画、観てないの? アレ知ってたら話が早いんだけどなー」

観てないどころか、ハ・ジョンウ主演ですから!!! 

もちろん、「知らない」と答えるわけですが、おどろおどろしさをほぐしてくれるユーモアが最高でした。

映画の中の悪霊は、韓国の民話に登場する妖怪をモチーフにしているのだとか。闇を象徴し、人の関心を集めると大きくなるけれど、無視されると消えてしまう妖怪です。

幸せに生きたいと必死でもがけばもがくほど、歪みは一番の弱者へと向かいます。「関心」を失ったが故の無念が、人を悪霊にしてしまうのなら。

消えた娘を救うのも、作戦を成功させるのも、愛こそがなせる技なのかも。

「哭声 コクソン」や「サバハ」に連なる、ホラーミステリー。これは、韓国映画の新たな人気ジャンルになるのかも。


映画「クローゼット」98分(2020年)

監督:キム・グァンビン

脚本:キム・グァンビン

出演:ハ・ジョンウ、キム・ナムギル、ホ・ユル

コメント

このブログの人気の投稿

キャラクター名“画数グランプリ” 優勝したのは!?「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」 #515

劇場版「鬼滅の刃」が話題ですね。 校閲ガールであるわたしにとって、気になるのはストーリーでも、煉󠄁獄さんのかっこよさでも、興行収入でもありません。 漢字が多すぎ!!! ってことです。 たぶん、すべての校閲ガールや校閲ボーイは、トラウマとなる漢字を持っています。変換ミスや同音異義語を見落とした経験を持っているから……。一度やってしまうと、その漢字を見ただけで「ヒッ!」となります。特に画数の多い漢字はつらいんです。 なのに、 「鬼滅の刃」の登場人物は、全員画数多過ぎでしょ!!! 劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編公式サイト 「その刃で、悪夢を断ち斬れ」劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編 絶賛公開中!   主人公は竈門炭治郎。その妹は禰豆子。鬼殺隊仲間は、我妻善逸、嘴平伊之助。「鬼殺隊」という名前からすでに怖そうですよね……。ちなみに一度で変換できなくて、「おに」「ころし」「たいちょう」と入力したので、あの日本酒を思い出しました。 清洲城信長 鬼ころしパックが【全国燗酒コンテスト2020】お値打ち熱燗部門 金賞受賞(2年連続受賞)   そんな「鬼殺隊」最強の剣士・煉󠄁獄杏寿郎さんはやはり、漢字の難しさも最高レベル。さすがは炎の呼吸を使う炎柱です。たぶん「隊長」みたいな役職の人です。 今回の映画の敵は魘夢と猗窩座というヤツで、これまで炭治郎たちが戦ってきた鬼よりはるかに強いヤツらしい。文字だけ見ても強そうですもんね。その鬼を束ねている悪の総帥が鬼舞辻無惨。 読み方分かりませんね……? 手書きできませんね……? 「鬼滅の刃」漢字検定1級をとれたらすごいと思います。このアニメとのコラボグッズは、校正するの、大変そう……。 そこで、緊急企画 「画数グランプリ」を開催 したいと思います! 「漢字辞典online」というサイトにて、各キャラクターの名前の画数を確認してみました。 kanji.jitenon.jp 「竈」という漢字を検索すると、こんな感じで表示されます。 この「画数」を足し上げていくのです。さて、優勝したのは!? (表記は公式サイトを基にしています) * * * 第3位:鬼舞辻無惨 54画 第2位:竈門炭治郎 55画 僅差です! 「魘夢」なんて、「魘」だけで24画もありました。これはぶっちぎるのでは……と思いきや、2文字という名前が仇に。けっこうしぶとい強いヤツでしたが、こ

まったく新しい映画体験に思うこと 4D映画「ハリー・ポッターと賢者の石」 #484

映画の公開20周年を記念して、「ハリー・ポッターと賢者の石」が初の3D化されました。体感型の4DXやMX4Dで上映されています。 映画を「配信」するサービスが増え、パソコンやスマホでも映画が観られるようになったいま、「劇場で観る楽しみ」を、最大限与えてくれる上映方法だと思います。 でも、なぜか、4D映画ってモヤッとしてしまう……。 クィディッチゲームの疾走感や、チェスの駒が破壊されるシーンの緊迫感は倍増されていたので、こうした場面の再現率、体感度は以前に比べてかなり上がってきたように感じます。 (画像はIMDbより) それでも、稲光、爆風や水滴など、ストーリーとのズレを感じてしまう。 むかし観た4D映画では主人公が「GO! GO!」と走り出すシーンで、スポットライトがピカピカと点滅していたんですよね。わたしの頭の中で、「パラリラ パラリラ~」という暴走族のバイクの音が再生されてしまいました。 そうしたストーリーとは関係のない効果は減り、洗練されてきた感じはするものの、やっぱりスッキリしないものは残るのです。 4D映画はなぜモヤるのだろうと考えていて、「誰の目線で映画を観ればいいのか混乱する」からかもしれないと気がつきました。 ここで、あらためて4D映画について説明しておきます。 4D映画とは、映画に合わせて光や風などの演出が施された、アトラクション型の「映画鑑賞設備」のことです。 2D映画でも、4D映画の設備で上映されなら、4D映画になります。今回わたしが観た「ハリー・ポッターと賢者の石」は、3D映画の4D上映でした。 日本で導入されている4Dシアターは2種類。韓国のCJ 4DPLEX社が開発した4DXと、アメリカのMediaMation社が開発したMX4Dです。わたしは今回、TOHOシネマズで観たのですが、導入しているのはMX4Dのほうでした。サイトによると、体感できる環境効果はこちら。 特殊効果 ・シートが上下前後左右に動く ・首元、背後、足元への感触 ・香り ・風 ・水しぶき ・地響き ・霧 ・閃光 なるほど、のっけからシートがジェットコースターのように揺れ、風が吹きつけ、地響きも、ふくらはぎに礫が当たるような感触も体験できました。 人間社会で虐待されながら育ったハリー・ポッターは、ハグリットと出会うことで初めて魔法の世界に触れることになります。 ホグワーツ魔

『映画を早送りで観る人たち』にみる、パンドラの箱に残っていたもの

インターネットは人類を幸せにしたのだろうか? 日々、インターネットを利用しながら、何度もそう感じてきました。もはやネットのない時代に戻るなんて考えられない。ということは、「上手に、賢く」付き合っていくしかない。 十分にオトナ世代であるわたしはそう割り切っていたのですが、稲田豊史さんの『映画を早送りで観る人たち』を読んで、もっと積極的にこの世界の行方が気になってきました。 すべてのクリエイター、マーケティングに関わる方、若者文化に関心のある方は、ぜひご一読を。 「失敗したくない」と追い込まれていく心情の背景に、ずーんと考え込んでしまいました。 ☆☆☆☆☆ 『映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 昨年1月、「AERA」に「『鬼滅』ブームの裏で進む倍速・ながら見・短尺化 長編ヒットの条件とは」という記事が掲載されました。ここではサブスクサービスによって、「ありがたみ」が薄れていく様子が紹介されています。 「鬼滅」ブームの裏で進む倍速・ながら見・短尺化 長編ヒットの条件とは〈AERA〉   続く3月に「現代ビジネス」で公開された、稲田さんによる「『映画を早送りで観る人たち』の出現が示す、恐ろしい未来」の記事は、わたしも驚愕しながら読みました。 「映画を早送りで観る人たち」の出現が示す、恐ろしい未来(稲田 豊史) @gendai_biz   『映画を早送りで観る人たち』は、上の記事をはじめ、続編記事と追加取材を加えた内容です。 記事では、NetflixやAmazonプライムに実装された「倍速」モードや「10秒飛ばし」での視聴について、その背景が分析されていました。 現役大学生や「倍速」モードで視聴する方へのインタビューが掲載されていて、その回答が正直に言って、 「ひょえぇぇぇええぇぇっっっ!?」 なものでした。 映画業界で仕事をされてきた稲田さんとも、かみ合わない会話があったことが想像されます。 セリフのないシーンや、好きな俳優が出ていない(サブストーリー部分)を飛ばしたい気持ちは分からなくもないんですよね。でも、「先に最終話を見て、犯人が誰か分かってから見る」という心情には驚いたっすよ、ミステリー好きとしては。 コンテンツ多すぎ問題など、こうした視聴理由の背景もさまざまに分析されている中、わたしが気にな