いつの時代でも、どこの国でも、社会の歪みの被害者は、一番弱いところにいく。そこから目を背けることはできないし、もしできたとしても、呪縛から逃れることなんてできない。
ハ・ジョンウとキム・ナムギルという二大スターが初共演した映画「クローゼット」は、ぶっちぎりの「怖おもしろさ」でした。
☆☆☆☆☆
映画「クローゼット」
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妻を事故で亡くしたサンウォンは、娘のイナを連れて引っ越すことに。トラウマに苦しみつつ、仕事に追われ、娘のイナとの間にできた溝も埋めることができない。ある日、新しい友達ができたと笑顔を見せるようになったイナがこつ然と姿を消してしまう。必死で娘を捜すサンウォンの前に、彼女の行方を知るという謎の男ギョンフンが現れる。彼はクローゼットにすべての秘密が隠されていると言うが……。
トラウマを抱えながら娘と関係に悩む父・サンウォンを演じるのはハ・ジョンウ。
(画像は映画.comより)
新居に向かう途中での事故、新居に着いてすぐのアクシデント。緊張感がメリメリと高まっていく中、登場するのがキム・ナムギル演じるギョンフンです。ヘラヘラとした妖しさを振りまきつつ、不穏な空気の中で笑いもとっていく、ミラクルな男です。
(画像は映画.comより)
もうね。このふたりが出会った瞬間、画がしまるんです。
監督のキム・グァンビンは、これが長編デビュー。よくぞふたりをキャスティングしてくれたなーと思ってしまう。西洋的な「クローゼット」を舞台にしたミステリーに、日本のホラーを融合させ、ガツッと韓国映画に仕上げたといえるストーリーです。
心を閉ざし、父に邪魔にされていることを感じたイナは、新居で「新しい友達」と出会ったと語ります。見たことのないぬいぐるみを抱きしめ、浮かべる笑顔。人里離れた山の中で、カラスしかいない場所なのに……。
イナの「新しい友達」とは、誰なのか。そして、イナを連れ去ったのは誰なのか。
ギョンフンの職業は「退魔師」。聞き慣れない言葉ですが、悪霊を祓う霊媒師みたいなもんですね。イナがいる場所について説明する時のセリフが笑えます。
「『神と共に』って映画、観てないの? アレ知ってたら話が早いんだけどなー」
観てないどころか、ハ・ジョンウ主演ですから!!!
もちろん、「知らない」と答えるわけですが、おどろおどろしさをほぐしてくれるユーモアが最高でした。
映画の中の悪霊は、韓国の民話に登場する妖怪をモチーフにしているのだとか。闇を象徴し、人の関心を集めると大きくなるけれど、無視されると消えてしまう妖怪です。
幸せに生きたいと必死でもがけばもがくほど、歪みは一番の弱者へと向かいます。「関心」を失ったが故の無念が、人を悪霊にしてしまうのなら。
消えた娘を救うのも、作戦を成功させるのも、愛こそがなせる技なのかも。
「哭声 コクソン」や「サバハ」に連なる、ホラーミステリー。これは、韓国映画の新たな人気ジャンルになるのかも。
映画「クローゼット」98分(2020年)
監督:キム・グァンビン
脚本:キム・グァンビン
出演:ハ・ジョンウ、キム・ナムギル、ホ・ユル
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