毎日インターネットを使って、ニュースを知り、調べ物をし、友人と連絡をとり、会社の仕事をしています。もうネットのない時代に戻ることなんて、絶対にできない。
いまやインフラとなったインターネットも、20年ちょっと前は「なんだか怪しげ」と思われていたのでした。それでも、ネットの可能性にとりつかれ、さまざまなサービスを起ち上げた人がいたからこそ、いまの便利さを味わえているわけですよね。
その裏で、どんな攻防があったのか。
日本のネット黎明期を支えた iモード、mixi、楽天、ライブドア、LINEなど、企業の誕生秘話を解き明かした本が『ネット興亡記 敗れざる者たち』です。
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『ネット興亡記 敗れざる者たち』
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日経新聞の電子版に連載されていたときから読んでいましたが、書籍化にあたってはゼロから書き直しているそうです。
この本で、多くの起業家たちが、「ビターバレー」の人脈でつながっていたことを知りました。「ビターバレー」とは、渋谷をシリコンバレーに負けないほどの、起業家が生まれる街にしようという活動のこと。「渋谷」をそのまま英語読みしているんですね。
2000年2月2日の「ヴェルファーレ」での集まりには、堀江さん、南場さん、孫正義さんら、すんごいメンバーが登壇。行間からも、その熱気が伝わってきます。
創業物語ですから、波瀾万丈、ギリギリのヒリヒリな展開が多くて、思わず力が入ってしまうのですが。同時に、この時代の起業家たちに大きく欠けていたものがあったことも感じました。
それが「倫理観」です。
アメリカのとある企業を買収しようとして、失敗。「じゃあ、マネすっか」とパクってしまう。
ライバル企業の広告を売るより、システムを自分で作っちゃえとパクってしまう。
「今ならさすがにやらないですが……」と語っている社長もいましたが、インターネット広告という新しい業界で、コンプライアンスが問題になるのもむべなるかなという気がしてしまいました。
変化の中で進化し、いつ喰われるか分からない状態の経営者という人々。わたしは起業願望がないせいか、「こんなジェットコースターみたいな生き方はムリ!」となりましたが、自分でハンドルを握るおもしろさは分かるように思います。
だって起業って、麻薬みたいなものだから。
ネットという最高の「おもちゃ」を手にした男たちの、ホモソーシャルな世界をのぞき見る、ともいえそう。
ボリューミーですが、日本のインターネット史を知るのに絶好の一冊です。
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