「僕たちはいま、こういうことを話し合っている場合じゃないよね」
「そうね。締め切りが終わってからにしましょう」
むかし読んだ漫画に出てきた一場面です。夫婦共に漫画家として活動していて、家の中のことやパートナーとしてのあり方に不満を抱えていた妻。ひと言漏らしたところで険悪になるんですが、「まず締め切りを片付けよう」というところでは一致する姿に、笑ってしまいました。
パートナーには自分のことを理解してほしい。でも、近すぎると“ライバル感”が出てしまってイヤ。
そんなワガママな想いが、短いシーンに表現されていて、いまでもよく覚えています。
小説家夫婦である、円城塔さんと、田辺青蛙さんによる、おすすめ本のレビュー合戦『読書で離婚を考えた。』は、書籍版夫婦ケンカのような本です。
相互理解のために始めた企画だったのに、どんどんと険悪になるおふたり。さて、どうなるんでしょう!?
☆☆☆☆☆
『読書で離婚を考えた。』
☆☆☆☆☆
まず、円城塔さんについて。作風はSFや前衛的なものまでさまざまだそうで、「数理的小説の第一人者」とも呼ばれているそう。
『道化師の蝶』で第146回芥川賞を受賞されています。
ちなみに、Amazonで著書を検索してみると、こんな感じでした。たしかに物理的で数学的なタイトルですね。
そして田辺青蛙さんはホラー作家として知られています。同じく著書を検索したページがこれ。地元怪談シリーズなんですかね。
「小説家」という点では同じ職業ですが、興味の指向性や好きなものは、およそ正反対。おすすめした本に対しての反応が
「ふーん」
だと、すすめた側もつらいものです。なんとか理解を深めて歩み寄ろうとするんですが。
すべてが正反対すぎる!!!
なかなかにしびれる「夫婦書評漫才」のような展開になっていきます。
読んでいて、あらためて思いました。
似たもの夫婦に、対照的な夫婦。それぞれのあり方に外野がどうこう言うのは野暮ってものでしょう。一番近い他人=夫婦だからといって100%理解できるなんて、幻想でしかない。
お互いのペースを尊重し合える関係が、わたしにとっては理想かも。
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