『不思議の国のアリス』に『ナルニア国ものがたり』、『ピーター・パン』に「ハリー・ポッター」シリーズ。
子どものころに読んだ本だけでなく、大人になってから夢中で読んだ本の中にも、イギリス発のファンタジー小説がたくさんあります。
イギリスは、なぜこうした児童文学を生み出せるのか。
大妻女子大学比較文化学部教授の安藤聡さんの著書『ファンタジーと英国文化 児童文学王国の名作をたどる』によると、「ハリー・ポッター」シリーズは、第四次ファンタジー黄金時代の作品といえるそうです。イギリス製ファンタジーを巡る旅にワクワクしました。
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『ファンタジーと英国文化 児童文学王国の名作をたどる』
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フランスの英文学者ルイ・カザミヤンによると、ファンタジーはイギリスの「国民文学」なのだそう。写実主義小説と叙情詩の中間に位置するからです。
たとえば「ハリー・ポッター」シリーズには、現実世界に存在するキングス・クロス駅や、マグル(魔法を使えない人間)の食べ物が登場します。ハリーの親友であるロンのお父さんは、「電気」や「機械で動くもの」に興味津々。車を改造したりもしてましたよね。
(画像はIMDbより)
現実世界からファンタジーの世界へと逃避することで、現実を「再発見」することができる。これぞ、ファタンジーの一番の魅力といえます。
「食事」についてはおもしろい指摘もありました。
イギリスの食事といえば、「……」なことで有名ですが、「ハリー・ポッター」シリーズに登場する料理のうち、メインディッシュとなる料理は伝統的なイギリス料理がほとんどです。
でも、お菓子類は違う。
「蛙チョコレート」や「バーティ・ボットの全味ビーンズ」など、想像力に富んだ“魔法の”お菓子なんです。
(画像はIMDbより)
このギャップはおもしろいなと本を読みながら感じていました。こうした食事内容について、安藤さんは、こう指摘されています。
思わず笑った……。
近代化と伝統との葛藤、田園風景と資本主義へのアンチテーゼ。帰属意識と多様性。こうした社会の変化が、優れたファンタジーを生み出す一因になったそう。
懐かしい名作を読み直したくなる一冊です。
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