「マナーが紳士をつくる」
スパイ映画は数多くあるけれど、「キングスマン」シリーズは異色かもしれません。なにしろ「国家」の後ろ盾はない「民間」の組織なんですから。モットー(?)は、上に書いた「マナーが紳士をつくる」なので、“貴族的”な言動が求められる。そして、ユニフォーム(?)は、オーダーメイドのスーツ!
これまでに公開されたのは、コリン・ファースとタロン・エガートンがコンビを組んだ「キングスマン」。おバカ加減が倍加した「キングスマン ゴールデン・サークル」。
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(画像リンクです)このシリーズ2本のプリクエルにあたるのが、「キングスマン ファースト・エージェント」です。
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映画「キングスマン ファースト・エージェント」
公式サイト:https://www.20thcenturystudios.jp/movies/kingsman_fa
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1914年、ヨーロッパに戦争の気配が広がる中、キッチナーの訪問を受けたオックスフォード公と息子コンラッドは、オーストリアのフェルディナント大公の護衛を依頼される。しかし、サラエボで大公夫妻は死亡。世界大戦が始まったことで、コンラッドは軍隊に志願しようとするが……。
このシリーズの舞台は、なんといっても、ロンドンのサヴィル・ロウにある高級テーラー“キングスマン”です。高級なショップの“裏の顔”がスパイ組織なわけですが、1914年時点では、本当の“高級テーラー”です。
安全な密会の場所として選ばれたのが、“キングスマン”だったのです。
なぜ、組織のアジトが“高級テーラー”なのか。なぜ、貴族的な行動が求められるのか。といった組織の誕生秘話が明らかにされていきます。
“キングスマン”で仕立てられたスーツは、大人の証。セーターを着た青年が、変身する姿は感動的です。
(画像は映画.comより)
従軍して、国家の役に立ちたい息子と、亡くなった妻との約束のために、息子を戦争から遠ざけたい父。
主軸はこれなんですが、この映画の「ヴィラン」が実在の、歴史上の人物たちのため、歴史のおさらいみたいな話でもありました。この時代の歴史を勉強してから行けば、より楽しめるかも。
一番の見どころは、“怪僧”と呼ばれたラスプーチン。ロシア皇帝に仕えた祈祷師で、皇帝を操るほどの実力者だった……といわれています。キテレツな風貌のラスプーチンとの闘いは、ダンス! オックスフォード公は、貴族なのにパンツ一丁!
(画像は映画.comより)
監督、脚本、製作は、今作もマシュー・ボーン。緊迫したシーンに、「プッ」となれるお茶目を入れ込んで、スタイリッシュなおバカを見せてくれます。前作の方が、おバカっぷりがはじけていたなーという気もしますが。
国家に属さず、権力者におもねらず、「キングスマン」が自主路線を歩む理由は、騎士道精神にあり、と言いたいところですが、映画の中で「騎士道」の裏側が薄汚れていることが語られています。貴族のノブレス・オブリージュとも違う。
どこまでも皮肉な「勇敢さ」の結末に、胸が塞がる思いでした。
「マナーが紳士をつくる」と、ちょっと突っ込まれそうな台詞もありつつ、階級を超えた愛のパワーを感じられる映画でした。
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