「しくじるのは、しくじるプランだからだ」
女子テニス界最強のプレーヤーであるビーナス&セリーナ姉妹を育て上げた、父のリチャードは、こう何度も繰り返し、準備とプランの大切さを説きます。
ウィル・スミス自身が主演・製作を務め、第94回アカデミー賞では作品賞や主演男優賞などにノミネートされた「ドリームプラン」。
「気合いだー!」的な、暑苦しいお父さんの熱血指導の映画かと思いきや、家族を守るために必死で闘うお父さんの話でした。
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映画「ドリームプラン」
公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/dreamplan/
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ある日、優勝したテニスプレーヤーが4万ドルの小切手を受け取る姿をテレビで見たリチャードは、娘たちが生まれる前から「世界王者にする78ページの計画書」を独学で作成。お金もコネもなく練習するのも劣悪な環境下、途方もない問題に直面しながらも、ビーナス&セリーナと共に“ドリームプラン”を実行し続ける。
信じることの強さを感じさせる、「ドリーマー」のための映画といえます。ただし、実際のリチャード父ちゃんは毀誉褒貶が激しい人物だったそう。
映画にはあまり出てきませんが、白人社会への対抗心と上昇志向、数度にわたる離婚と再婚。独善的で荒削りなテニスの指導方法と、あえて治安の悪い町へ引っ越すことで反骨精神を埋め込んだところなど、すべてが「自分の野望を果たすため」ではないのか、という疑いも感じてしまう。
映画の原題は「King Richard」なので、やはり「リチャード三世」を意識して作られたのかもしれないですね。
マッケンローは練習中にも赤いバンダナを巻いているし、ウィル・スミスの短パン姿も微笑ましい。映画の字幕監修をした伊達公子さんによると、「常にハイソックスを履いていたところも映画そのまま」らしいです。
独学で研究し、作り上げた「78ページの計画書」によって、姉妹の精神的な成長を待ってから、デビューをさせるという戦略を主張するリチャード父ちゃん。同い年のライバルが、プロとして経験を積む姿を横目で見るしかないビーナス。お姉ちゃんに集まる関心に、複雑な想いを抱いてしまうセリーナ。
リチャード父ちゃんが何度も繰り返す、「準備が整っていない」という言葉は、ビーナスを守るためのもので、心技体の「心」を重視していたのだといえます。理由は、ティーンエイジャーの選手が大金を手にしてダークサイドに墜ちるところを見ていたから。
なんですが、これは成功に必須の「こだわり」なのか、思い込みに対する「とらわれ」なのか。結果論ともいえそうな気がしちゃうのは、わたしに夢を見る力が足りないからかも……。
「しくじるのは、しくじるプランだからだ」を合い言葉に、天才姉妹を支える家族。
お姉ちゃんの葛藤をすぐそばで見ていたから、セリーナはより強い選手になれたのかもしれないですね。
テレビにインタビューされたとき、「どんな選手になりたい?」と聞かれたセリーナは、こう答えます。
「憧れられる選手になりたい」
姉妹それぞれに夢を叶えましたが、実は一番大きな夢を叶えたのは「偉大な父」となった父ちゃんだったのかもしれません。
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