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『進む、書籍PR! たくさんの人に読んでほしい本があります』#832

次はどんな本を読もうかな。 そう思った時、わたしは新聞の書評欄や、SNSで本を探すことが多いです。「王様のブランチ」で、編集者の松田哲夫さんがガイドしてくれる「松田チョイス」のコーナーも楽しみに見ていました。 こうした新聞や雑誌、テレビで紹介してもらうために活動しているのが、PRパーソン。『進む、書籍PR! たくさんの人に読んでほしい本があります』の著者である奥村知花さんも、新刊書籍のパブリシティを専門にされている方です。 本との出会い、読んでほしい本が世の中に広がっていく様子に、興奮してしまうお仕事エッセイです。 ☆☆☆☆☆ 『進む、書籍PR! たくさんの人に読んでほしい本があります』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 『日本の統計2021』 によると、2019年に、日本では71,903冊の書籍が発売されました。1日に約196冊もの本が世に出ている計算になります。 (出典:総務省統計局『日本の統計2021』 https://www.stat.go.jp/data/nihon/index1.html ) そんな数、全部読めない!!! たぶん、タイトルを追うだけでも大変なことになってしまいます。 そこで奥村さんのような書籍のパブリシティをしている方がガイド役となり、テレビ局などに企画として売り込むわけです。 テレビで紹介されることや、書評欄に取り上げられる効果は絶大だそう。 盛岡にある「さわや書店」で名物店長と呼ばれていた伊藤清彦さんは、乙武洋匡さんの『五体不満足』を読み、テレビで紹介されるタイミングを逆算し、在庫を確保したそうです。 当時、乙武さんは大学生だったので、試験期間が明けた頃に動くだろう……と推理。前もってあちこちに手配をしておいたのだとか。 お客様のために“名物”店長が取り組んできたこと 『盛岡さわや書店奮戦記』 #532   一冊の本を世に出すために必要なのは、著者自身の努力だけではありません。編集者、出版社の営業、書店員、そしてパブリシストたちが一丸となって取り組むんですね。 本への愛情と仕事への熱意に打たれました。 奥村さんは、自分の肩書きを「本しゃべりすと」としているそう。 いいな、この肩書き。

『新聞記者、本屋になる』#816

落合さんが「ラーメン屋さん」じゃなくてよかった。 初めてお目にかかってから、実は何度かそう思ったことがありました。 たとえば、 「赤味噌ラーメンに、ニンニクとニラと味玉入れてください」 なんてオーダーをしちゃったら、 「僕が精魂込めて作り上げたスープは塩ラーメンの方がおいしいんだけど、ニンニクなんか入れたらぶち壊しなんだけど、それでもそのオーダーにします?」 と、穏やかに“真顔で”返されそう……。あくまで妄想です。 でも、もし「ラーメン屋さん」だったら、「こだわりの強いガンコなおやっさん」になっていたんではないかと思ってしまう。 落合博さんの本当の姿は、東京の浅草近くにある本屋「Readin' Writin' BOOK STORE」の店長さんです。 「Readin' Writin' BOOK STORE」 http://readinwritin.net/ 元新聞記者で、長くスポーツ欄を担当されていたそう。定年前の58歳で退職、本屋を開業されました。 『新聞記者、本屋になる』には、新聞記者時代のことと、本屋の開業準備から現在までの日々が綴られています。 ☆☆☆☆☆ 『新聞記者、本屋になる』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 定年後の生活について、「人生100年時代」の生き方について、考えたことがある人は多いと思います。 10年くらい前、わたしの夫“でぶりん”が唐突に言い出したことがありました。 「早期退職して、居酒屋をやりたい」 早期退職でも、契約社員でも、自分の人生なんだから好きにしたらいいやん、がわたしの意見でしたが、居酒屋は勘弁してほしい。 居酒屋がイヤなのではなく、夫の“でぶりん”は、およそ居酒屋の仕事で必要なことが何もできないからです。 料理はまったくできない。 皿洗いは人生で3回くらいしかしたことない。 利き酒ができるわけでもない。 無愛想でコミュニケーション力ゼロなので接客もムリ。 経理はわたしの方が得意。 けっきょく、居酒屋をやったらすべてをわたしが背負い込むことになるのが目に見えている。だから、上に挙げたもののふたつ以上できるようになったら、その時、もう一度考えましょうと言って終わりました。 こんな風に、「なにかをやりたい」と思っても、道のりを具体化してみると、めんどくさいことがいっぱい待ち構えています。現段階では分から

『活版印刷三日月堂 空色の冊子』#810

終わってしまった……という物語に、続きがあった驚きほど、うれしいものはない。 4巻で完結したと思っていた「活版印刷三日月堂」シリーズに、番外編が登場していました。『活版印刷三日月堂 空色の冊子』は、本編の主人公「弓子」へとバトンが渡る前の、過去の物語です。 ☆☆☆☆☆ 『活版印刷三日月堂 空色の冊子』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 時代や主人公の違う、7つの短編が収められています。 最初は、本編のラストを飾った、西部劇コラムの書籍化のお話。このコラムを書いた映画ライターをはじめ、時間をみつけては活字を拾い、版を組んだ「弓子」のおじいちゃん。若くして妻をなくし、心もなくしてしまった「弓子」の父。「弓子」の母と親しかった旧友。 「三日月堂」に関わる人々が、順番に登場します。「活版印刷」と家族への想いが語られ、ひとつ、またひとつと、バトンが渡されていく。 生業としての「活版印刷」は、いまでは「アート」としてとらえられているようにも感じます。それがいいことなのか悪いことなのかは分からないけれど、「便利」や「効率」だけでは語れないのが、文化なのではないかしらね。 この週末は、東京駅近くにあるビルへと行ってきました。ほしおさなえさんの140字小説を、九ポ堂さんで活版印刷したカードが販売されているんです。活版印刷の、ちょっとだけデコボコした手触りが愛おしくなります。 ほしおさなえさんの140字小説×九ポ堂さんの活版印刷カード。かわいくて、手触りがよくて、ずっとスリスリしちゃう。 angersにあるもの、全部好みで、全部欲しかったよー😆 pic.twitter.com/HISUZBPMga — mame3@韓国映画ファン (@yymame33) September 26, 2021 いまは「好きなことを仕事に」と語られる時代ですが、作者のほしおさんは、「仕事をすることがすなわち生きることである」と語っています。 ほしおさなえさんインタビュー 「活版印刷三日月堂」ついに完結!|好書好日   映画が好きで、コラムを生きがいとしていたライターが、年と共に干されていったり、活版印刷という業界が先細りしていったり。東日本大震災という大きな損失が招いた、空虚な想いや、愛する人を失った絶望。 心で血を流しながら、それでも人は生きていくから。自分にしかできない「仕事」をみつけて、立ち上がる。

お客様のために“名物”店長が取り組んできたこと 『盛岡さわや書店奮戦記』 #532

マジでガチでホンモノの「名物」店長を見ました。 その昔、新宿の書店で売り上げを急激に伸ばし、盛岡の書店に移動してからは伝説的な記録をつくったという書店の店長さんです。その名を伊藤清彦さんといいます。 著書『盛岡さわや書店奮戦記』には、いかにして「本を売る」という仕事と向き合ったのかが綴られています。これがもう、本屋さんだけの話ではなく、すべての仕事に通じる内容でした。 ☆☆☆☆☆ 『盛岡さわや書店奮戦記』 https://amzn.to/3iqKyfK ☆☆☆☆☆ 伊藤さんが「名物店長」と呼ばれたのは、盛岡にあるさわや書店時代だそう。 盛岡駅の1階にあるさわや書店フェザン店には、何度か行ったことがあります。店内は、この時の「名物書店員さん」である長江さんによるPOPがあふれていました。わたしがうかがった時にはすでに伊藤さんは引退され、図書館の館長をされていたんです。 そして2019年1月に開催されたトークイベントでは、当時の元店長・現店長・現店員さんが登壇。 「真冬のトークイベント 面白い本と出合う方法3 本との出合いにまちの本屋ができること」と題されたイベントだったのですが、「伊藤さんと目を合わせることはできなかった」という言葉もでるほど、ぶっちゃけ話が飛び交っていました。 初めて見た伊藤さんは、見た目はやさしそうなおじいさんでしたが、そんなに恐ろしい存在だったのか。 一番右におられるのが元店長の伊藤さん。順に、長男・田口さん(当時の店長)、次男・松本さん、末っ子・長江さんです。 イベントの様子はこちらの記事に詳しいです。 まちの本屋が本を届けるということ ~「真冬のトークイベント 面白い本と出合う方法3 本との出合いにまちの本屋ができること」レポート~ | 八戸ブックセンター   伊藤さんが就職した山下書店は、新宿駅のマイシティにありました。そこで文庫本担当になってから手書きのPOPを置くようになり、既刊の小説を1万冊売ったこともあるのだとか。すげーしかない。切り口を変えて、本の見せ方を変える。これぞ「ザ・マーケティング」です。 盛岡に移ってからは、売り上げは伸ばせたのに、パートのおばさんたちに嫌われて大変な思いをされたそう。 わたしは書店の経験がないので、本の仕入れや棚の構成って、そうやってつくっていくのかーという驚きが多かったのですが。それ以上に、流れを