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お客様のために“名物”店長が取り組んできたこと 『盛岡さわや書店奮戦記』 #532


マジでガチでホンモノの「名物」店長を見ました。

その昔、新宿の書店で売り上げを急激に伸ばし、盛岡の書店に移動してからは伝説的な記録をつくったという書店の店長さんです。その名を伊藤清彦さんといいます。

著書『盛岡さわや書店奮戦記』には、いかにして「本を売る」という仕事と向き合ったのかが綴られています。これがもう、本屋さんだけの話ではなく、すべての仕事に通じる内容でした。

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『盛岡さわや書店奮戦記』
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伊藤さんが「名物店長」と呼ばれたのは、盛岡にあるさわや書店時代だそう。

盛岡駅の1階にあるさわや書店フェザン店には、何度か行ったことがあります。店内は、この時の「名物書店員さん」である長江さんによるPOPがあふれていました。わたしがうかがった時にはすでに伊藤さんは引退され、図書館の館長をされていたんです。


そして2019年1月に開催されたトークイベントでは、当時の元店長・現店長・現店員さんが登壇。

「真冬のトークイベント 面白い本と出合う方法3 本との出合いにまちの本屋ができること」と題されたイベントだったのですが、「伊藤さんと目を合わせることはできなかった」という言葉もでるほど、ぶっちゃけ話が飛び交っていました。

初めて見た伊藤さんは、見た目はやさしそうなおじいさんでしたが、そんなに恐ろしい存在だったのか。


一番右におられるのが元店長の伊藤さん。順に、長男・田口さん(当時の店長)、次男・松本さん、末っ子・長江さんです。

イベントの様子はこちらの記事に詳しいです。


伊藤さんが就職した山下書店は、新宿駅のマイシティにありました。そこで文庫本担当になってから手書きのPOPを置くようになり、既刊の小説を1万冊売ったこともあるのだとか。すげーしかない。切り口を変えて、本の見せ方を変える。これぞ「ザ・マーケティング」です。

盛岡に移ってからは、売り上げは伸ばせたのに、パートのおばさんたちに嫌われて大変な思いをされたそう。

わたしは書店の経験がないので、本の仕入れや棚の構成って、そうやってつくっていくのかーという驚きが多かったのですが。それ以上に、流れを読む目の鋭さを感じました。

「名物書店員さん」なので「本の目利き」に優れているのかと思いきや、それ以上にあったのは、お客様のためにという視点でした。「どの本が求められているのか」「どんな本を読んでほしいのか」を考え続ける。テレビで紹介される予定の本を、大量に仕入れる綱渡りの方法も。

毎日こうしてnoteを書く中で迷いも多いけれど、この本のあとがきにあった言葉に励まされました。

“考え得る限り、様々な事を試みてはきたが、最も迂遠に見える道が、実は最短な道だったという真実に行き着く。 それは、本を読んで内容を知るということ、これに尽きると思う。 本が好きなお客様は、ただ本を求めに来るだけでなく、自分が読んだ本の感想なりを話したくて来店することもある。そこで相槌を打てるかどうかといったことは、常連さんを作る可能性の芽を育てることにもつながると思う。”

自分が読んだ本の感想を話したいし、誰かが読んだ本の話も聞きたい。映画も同じです。

誰かの興奮する言葉を聞いて、「だよねーだよねー」と相槌を打てるようになりたいなと思ったのでした。

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