日本古来の詩である「和歌」を韓国語に翻訳し、歌にまつわるエッセイを再び日本語に翻訳する。 なんだかややこしい、ふたつの言葉の行ったり来たりが、こんなに美しい世界になるなんて。 韓国で日本語翻訳家として活動されているチョン・スユンさんのエッセイ『言の葉の森——日本の恋の歌』は、限りなく素直な透明感にあふれた一冊でした。 ☆☆☆☆☆ 『言の葉の森——日本の恋の歌』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 韓国留学中に、友人たちと韓国語の詩を読んでみようと挑戦したことがありました。でも、あまりに難しくて挫折しました。 「詩」の中で扱われる言葉は、意味の広さと深さ、音の響きやつらなりが、教科書に載っている文章とはぜんぜん違うんですもん。 「難しさを味わえただけでも、よかったよね」 みたいな感じで会は終わりました……。 当たり前ですが、「詩」よりも「和歌」の方が文字数が少ないわけです。「五七五七七」という決まりごともある。 それを外国語に訳すのは、想像するだけでも絶句するような難しさだと思います。おまけにチョン・スユンさんの韓国語訳は、できるかぎり「五七五七七」に近づけてあるんです。 下の画像がそれ。韓国語は分かち書きをするので、一見そう見えないかもしれませんが、単語としては和歌の型になっています。すごいしかない。 (画像はAmazonより) 取り上げられているのは、『古今和歌集』や『拾遺和歌集』などの和歌です。 もちろん、外国語になることで、さらに情景がクリアになったり、情感がハッキリしたりするんだなーと感じるところも。 それにしても、「翻訳家」という職業についておられる方の、言葉の豊かさよ……。 おだやかでやさしい言葉の森を歩いたような、すがすがしさがあふれていますよ。