あー、なんてみずみずしくて、おいしそうなんだろう。
『わたしを空腹にしないほうがいい』所収
盛岡の歌人・くどうれいんさんのエッセイ集『わたしを空腹にしないほうがいい』は、俳句+食を巡る日々の記録になっています。言葉にどれも透明感があって、切なくて、恋しくて、みずみずしいトマトのような一冊です。
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『わたしを空腹にしないほうがいい』
http://www.keibunsha-books.com/shopdetail/000000022854/
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「トマト捥ぐ」は、「トマトもぐ」と読むようです。収穫の時の青くさい匂いとか、汗のジメッとした感じや、強い日射しまで感じられる句ですよね。
盛岡生まれのくどうさんは、盛岡を拠点として活動されている方です。自費出版した『わたしを空腹にしないほうがいい』を見た書店「BOOKNERD」の店長さんが、改訂版としてあらためて出版したそう。わたしが手に入れたのもこちらです。
タイトルに惹かれて購入したのですが、買ってよかった!と思った一冊でした。なぜなら。
お腹が空くと不機嫌になるという一文に、めちゃくちゃ共感したから(つくづく食いしん坊やな……)。
『わたしを空腹にしないほうがいい』所収
一匹まるごと鯛を手に入れた時の歌です。まな板の上の鯛を前に途方にくれたり、やけくそになってコンビニで甘いものを買ったり。時には「いのちをいただく」ことに打たれすぎて、食べられなくなってしまうことも。
家族の思い出、失恋の思い出、友だちと笑ったこと、ひとりでガスの火を見つめていたこと。食べることは、生きることだけど、料理には、人生が詰まっているように感じます。
『わたしを空腹にしないほうがいい』所収
俳句とエッセイには、すべて日付が振られています。ある年の「6月」に、こんな風に世界を見ている人がいたんだなと思う。食べ物の記録ともいえるし、料理を前にした瞬間の気持ちをフリージングした「日記」ともいえます。
くどうさんもFRIDAYのインタビューでこんな風に語っていました。
読んでいると、思わず料理がしたくなるのです、不思議なことにね。
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