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非エリートの悲哀を描いたサスペンス 映画「生き残るための3つの取引」 #269


「お前は今から犯人になるんだ」

そんな信じられない言葉で犯人にされてしまうなんて。でっち上げの逮捕は検察と警察の対立を生み、血みどろの対決に発展していくという映画「生き残るための3つの取引」。

善良で誠実で正直な人間がまったく出てこないピカレスク映画です。韓国では2010年に公開され、その年の青龍映画賞で最優秀作品賞を受賞しました。青龍映画賞とは、韓国最大の映画祭で、最も権威のある映画賞なんだそう。

☆☆☆☆☆

映画「生き残るための3つの取引」

DVD

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☆☆☆☆☆

<あらすじ>
度重なる失態で世間から批判を浴びていた警察。そこに連続殺人事件が発生します。大統領から今回こそ事件を解決するよう厳命されますが、有力容疑者を誤って射殺してしまいます。上層部からこの事実のもみ消しを命じられたのは、万年班長の刑事チョルギ。ヤクザに証拠づくりを頼み、偽の容疑者を仕立てあげますが……。


映画を監督したリュ・スンワン作品といえば、「アクション」がキーワードでした。でも、この映画ではほとんどアクションシーンはなし。よく練られた脚本と、俳優の好演で話を引っ張っていきます。

主人公のチョルギを演じているのがファン・ジョンミン。主演映画に外れなしと言われています。シリアスからお笑いまで、演じる役柄が幅広いんですよね。


(画像は映画.comより)

ひょうきん者にも、はにかみ屋さんにもなれるし、凄みを利かせたり、軽やかにステップを踏んだり。出演作ごとに違うファン・ジョンミン。「生き残るための3つの取引」では、口数は少ないけれど、チームの仲間を大切にしている刑事です。

怒った時ほど笑う顔が怖い。

上司が自分を「捨て駒」にしようとしていることにも気づいている。でも、ヤクザに足下を見られちゃって、身動きがとれなくなってしまう。

この映画は非エリートの悲哀を描いたサスペンスなんです。

上司の行動に不信感を抱いて、助けようと奔走するのがマ・ドンソク。この頃は二回りくらい痩せて見えますね。


(画像は映画.comより)

ほかにも、リュ・スンボム、ユ・へジンら、芸達者な役者がそろっています。

ファン・ジョンミン演じるチョルギは警察大出身ではないため、組織の中で後ろ盾を持っていません。だからこそ、失敗したら切り捨てることができる「シッポ」要因として抜擢される。

チョルギと対立する検事は、エリート中のエリートで、スポンサーもいれば妻の父の権力もある、という状況。

血みどろの対決をしてもエリートはしぶとく生き残るのですが、チョルギに制裁を下すのは仲間なんです。

それがなんとも悲しい。

韓国語の原題は「不当取り引き」。誰もが生き残るために必死です。でも、“上”だけを見ていると、仲間は離れてしまう。自分はなんのために仕事をしているのか。この仕事は誰を幸せにするものなのか。会社員の身の処し方を考えさせられました。


映画情報「生き残るための3つの取引」119分(2010年)
監督:リュ・スンワン
脚本:パク・フンジョン
撮影:チョン・ジョンフン
出演:ファン・ジョンミン、リュ・スンボム、ユ・ヘジン、マ・ドンソク

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