「マザコン」のことを韓国語で「ママボーイ」といいます。マンマです。
ドラマなどを観ていると、母親と息子の関係はみっちりねっちりしているように感じます。現実にも、韓国人男性の多くが「ママボーイ」と言われているそう。
「家」を継ぐ男の子を産むことを期待される
↓
長男が溺愛される
こんな流れと、もともと親を大事にする文化が合わさって、ラブラブ~♡な親子も少なくない。
映画「怪しい彼女」はファンタジックなコメディなのですが、ファン・ドンヒョク監督ったら自分のお母さんのためにつくったでしょ!!!と感じるくらい、かわいらしいストーリーになっています。
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映画「怪しい彼女」
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頑固で毒舌な老女オ・マルスンにとって、唯一の自慢は息子が国立大学の教授であること。職場でも家庭でも怒鳴ってばかりのマルスンは、自分が老人ホームに入れられようとしていることを知ります。最後の記念に写真を撮ろうと写真館へ向かったマルスンは、いきなり20歳の姿に若返ってしまう。アイドル歌手のオ・ドゥリとして新たな人生をスタートさせますが……。
かわいい顔して言動はクソババアというギャップのある女の子をコミカルに演じたのはシム・ウンギョン。はじけるようなお転婆な20歳の歌手と、口の悪い70歳の頑固ババアを「マルスン」の中に融合させて、「怪しすぎる」女の子を作り上げています。
この演技力ですもん。2019年の映画「新聞記者」で最優秀主演女優賞の受賞もうなずけます。
懐メロ満載の音楽のよさもあって、映画もヒットし、8カ国でリメイクされています。日本では 多部未華子&倍賞美津子ペアで映画化。ポスターなどのイメージジャケットは本家のものを踏襲しているようですね。
劇中の歌は、もちろんシム・ウンギョンが歌っています。中でも、チェ・ウンオクという歌手のデビュー曲であるバラードの「雨水」は、1976年に発表された当時、知らない人がいないと言われるほどヒットしたそうです。
40年ぶりにコンサートをするというのでインタビューを受けている映像を見つけました。最初に流れている曲が「雨水」です。しっとりしてる。
静かに雨が降るね 思い出を語るように
이렇게 비가 내리면 그날이 생각이 나네
こうして雨が降ると あの日を思い出すね
옷깃을 세워주면서 우산을 받쳐준 사람
襟をたてながら 傘をさしてくれた人
오늘도 잊지못하고 빗속을 혼자서 가네
今日も忘れられず 雨の中 ひとりで行くわ
物語の主人公「マルスン」が70歳ということは、どん底の貧しさや戦争を味わった世代です。望むまま、自由に生きられる時代ではなかった。
ファン・ジョンミン主演の映画「国際市場で逢いましょう」が、男から描いた現代史だとすると、「怪しい彼女」は女から見た現代史といえるかも。
女手一つで子どもを育て、生活苦にあえぎながら、「雨水」の歌詞のように、ひとりで生き抜いてきた「マルスン」。息子を大学教授にしたことが誇らしいけれど、すべてをないがしろにされる現在。
逃避したくなるじゃないですか?
で、たっぷり夢を見た後は、元に戻ると思うじゃないですか?
そんな予想を裏切るハッピーな結末です。監督はインタビューで、
として、エンディングには神経を使ったと語っています。前作の「トガニ 幼き瞳の告発」の重苦しさとはあまりにも違うハートフルコメディ。才能の幅広さにおののくと共に。
あぁ、これは監督がお母さんに捧げる映画だったのだなーと感じたのでした。
明日は母の日。家族のありがたさ、母への感謝がこみ上げてくる映画です。お母さんと一緒にぜひ。
映画「怪しい彼女」 125分(2014年)
監督:ファン・ドンヒョク
脚本:シン・ドンイク、ホン・ユンジョン、トン・ヒソン
出演:シム・ウンギョン、ナ・ムニ、イ・ジヌク、ジニョン、パク・イナン、ソン・ドンイル、ファン・ジョンミン
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