2007年に韓国で放送されたドラマ「コーヒープリンス1号店」で爆発的な人気を得た俳優コン・ユ。このドラマに出演する前は「引退」を考えていたそうで、そっからブイブイいわせてもらうぜー!となったわけですが。
ドラマが終了した2008年1月。入隊を決めます。
韓国の男性にとって避けては通れない徴兵は、キャリアプランに大きな影響を与えるものだと思います。コン・ユは、兵役中に一冊の小説と出会うのです。
俳優としての彼に、チャレンジを促した本。「トガニ」という小説を読んで、ぜひ映画化したいと考えたコン・ユ。自身がアプローチして叶えた映画が「トガニ 幼き瞳の告発」でした。
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映画「トガニ 幼き瞳の告発」
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聴覚障害者の学校に赴任した美術教師のイノは、寮の指導教員が女子生徒に体罰を加えている現場を目撃する。やがて、その女子生徒が校長を含む複数の教員から性的虐待を受けていることを知ったイノは、その事実を告発し、子どもたちとともに法廷に立つ決意を固めるが……。
韓国で実際に起きた事件をもとに、コン・ジヨンが小説化。それを読んだコン・ユが、ファン・ドンヒョク監督と共に映画化するという、なんとも映画のようなストーリーです。
「No」を“発声”することができず、意志が尊重されない環境で暮らす子どもたち。学校という“密室”で起きた虐待事件は、社会に衝撃を与えました。
「トガニ」は日本語で「るつぼ」という意味。
見通しの悪い、深い霧に包まれた町を舞台に、「悪のるつぼ」が明るみになっていく。さて、裁判の行方は……という展開に、何度も胸がつまりました。
これまでラブコメ中心に活動してきたコン・ユは、正反対なキャラクターを演じること、重いテーマの映画であることから「ヒットは難しいかも……」と考えていたそうですが。
ふたを開けてみたら、400万人を超える大ヒット。加害者の処罰と事件の再捜査を望む署名活動まで始まり、これがきっかけとなって「トガニ法」と呼ばれる法律までできました。
映画が、社会をよくするきっかけになる。
さすが騎士(ナイト)!と言いたくなるほどの、理想的な展開といえます。
この映画が公開されたとき、わたしは映画館で観たのですが、字幕に違和感を持ったんですよね。
虐待している側の校長たちは、障がいのある子どもたちを「ピーーーーッ」音が必要な言葉で読んでいます。ひらたくいうと、差別的な言葉です。それが字幕ではすべて「聴覚障害」となっていたのです。
いやいやいやいやいやいやいやいや。
教育者なのに、差別語を連呼するおっさんの感覚を問う映画じゃないの!?と思ったんですよね……。
差別語や表現を残したいわけではないけれど、「こういう言葉を選んで使う人」というイメージは伝えてほしかった。ここをマイルドに漂白してしまうと、映画のテーマが伝わらなくなってしまう気がするからです。
とはいえ、コン・ユの誠実さが光っていた映画であることは事実。手話での会話もこなして、精神的にも厳しい裁判を戦う教師を演じ、演技派への道を拓きました。
その相方となったのがチョン・ユミ。正義感の強いおきゃんなキャラクターを熱演しています。
(画像はKMDbより)
これまで「トガニ」と「新 感染 ファイナル・エクスプレス」で共演したふたりが、初の夫婦役で挑んだのが「82年生まれ、キム・ジヨン」です。こちらもおすすめの映画です!
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