スキップしてメイン コンテンツに移動

早く、何度も、打席に立つ方法 『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』 #322


4月から5月にかけて、「困った新人ちゃん」という記事が増える気がします。先日も、そんな記事を続けて目にしました。



どちらもネタとしてはおもしろいけれど、「モーレツ社員」世代と「ゆるふわ新人」世代の固定観念をさらにすり込んでくるように思います。

そこで分断してどうする!?

と思うのです。もちろん、「あるあるー」と感じることもありますが、こういう記事を読んだ後は必ず、

(うちの子たちは、いい子でよかった)

と記憶を書き換えることにしています。たとえ、その直前に不愉快なことがあっても、稚拙な論理で口撃されても、研修中の大あくびを見ても、頬杖ついて人の話を聞いていても、必ず。でないと、(やっぱりこの世代は……)と色眼鏡で見てしまいそうだし。


モンスター・ブロガーふろむださんの『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』を読んで、認知の歪みの力を思い知ったからよけいにそうなりました。

☆☆☆☆☆

『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』
https://amzn.to/2RPX4Lt

☆☆☆☆☆

「実力を魔くよりも、はるかに人生を好転させる実用書」という触れ込みの本書。本来は認知の歪みを利用して、よりよい環境を手に入れる方法が説かれています。

思考の錯覚=認知バイアスを自覚した方がいい理由とは。

認知バイアスを自覚するメリット
 1. 自分が騙されないため
2. 周囲の人を詐欺から守る
3. 自覚できないから
4. 実力を伸ばせないから


成功した人が、自分の方法論について語る本は多いですよね。でも、なぜその人は成功したのか。失敗してもあきらめなかったから、とか、優秀だったから、とかあるでしょうけれど。成功の原因はなによりも、「運」だそう。

成功者の成功方法
正しかったから <<< 運


では、この「運」を太く強くするにはどうすればいいのか。「錯覚資産」を手に入れることです。

錯覚資産とは
自分の得になるような、他人の勘違い


ようするに、ビッグマウスでゲタを履かせてもらうわけです。そこで生まれるのが「ハロー効果」。社内で表彰された、こんなことができるようになった、○○賞をもらった、なんでもOK。それさえあれば、勘違いしてもらえます。

ハロー効果を使え!
よく分からないけど、なんだかすごそう。


「ハロー効果」を生むのに手っ取り早い方法とは。

確率の高い成功方法
小さく賭ける

当たる確率が高い時に全力で投資

ハロー効果をゲット

よりよい環境を手に入れる


これを繰り返して、「運」を太く強くしていくのです。そんなの詐欺じゃないの? 実力が大事でしょ!!という気がしますよね。でも、自分はそんなハリボテには騙されない!!!と思っている人ほど騙されちゃう。なぜなら、直感が間違っていると、頭は理解できますが、直感は認識できないからです。

錯覚資産
「自分だけは大丈夫。騙されない」 と思っている人ほど危ない。


「自分のやり方が正しかったから成功した」。だからあなたも……!という言葉が有効なのは、ハロー効果を利用しているからです。もし、これが剥がれてしまったら。

強者・成功者の論理や正しさが暴落します。

この世界は「実力が正しく評価される健全でフェアで気持ちのいい世界なんかじゃない」ことさえ理解しておけば、「ハロー効果」は活用しがいのあるものです。

なぜなら、早く、何度も、打席に立てるようになるから。

そして打席数が多くなればなるほど、当たる確率も上がります。実力はそこで磨かれていく。ハリボテでもなんでも、利用できるものはした方がいい。

わたしにも固定観念はあるし、先入観はあると思います。それに自分で気づくことはできません。上昇気流をつかまえるのに利用するならいいけれど、色眼鏡を広めるのは勘弁して欲しい。

コメント

このブログの人気の投稿

映画「新しき世界」#293

「アメリカに“ハリウッド”があるように、韓国には“忠武路”という町があります」 第92回アカデミー賞で 「パラサイト 半地下の家族」 が脚本賞を受賞した時、ポン・ジュノ監督と共同で脚本にあたったハン・ジュヌォンは、そう挨拶していました。「この栄光を“忠武路”(チュンムノ)の仲間たちと分かち合いたい」。泣けるなー! ハン・ジュヌォンのスピーチ(1:50くらいから) アメリカにハリウッドがあるように、韓国には忠武路というところがあります。わたしはこの栄光を忠武路の仲間たちと分かち合いたいと思います。ありがとう! #アカデミー賞 https://t.co/LLK7rUPTDI — mame3@韓国映画ファン (@yymame33) February 10, 2020 1955年に「大韓劇場」という大規模映画館ができたことをきっかけに、映画会社が多く集まり、“忠武路”(チュンムノ)は映画の町と呼ばれるようになりました。 一夜にしてスターに躍り出る人や、その浮き沈みも見つめてきた町です。 リュ・スンワン監督×ファン・ジョンミンの映画「生き残るための3つの取引」での脚本が評価されたパク・フンジョン。韓国最大の映画の祭典で、最も権威のある映画賞である「青龍映画賞」で、彼自身は脚本賞を受賞。映画も作品賞を受賞し、一躍“忠武路”の注目を浴びることに。 そうして、自らメガホンを取った作品が「新しき世界」です。 ☆☆☆☆☆ 映画「新しき世界」 Amazonプライム配信 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ <あらすじ> 韓国最大の犯罪組織のトップが事故死し、跡目争いに突入。組織のナンバー2であるチョン・チョンは、部下のジャソンに全幅の信頼を寄せていますが、彼は組織に潜入した警察官でした。この機会にスパイ生活を止めたいと願い出ますが、上司のカン課長の返事はNO。組織壊滅を狙った「新世界」作戦を命じられ……。 あらすじを読んでお分かりのように、思いっきり「ゴッドファーザー」と「インファナル・アフェア」のミックスジュース特盛り「仁義なき戦い」スパイス風味入りです。 無節操といえばそうですけれど、名作のオマージュはヘタをすると二番煎じの域を出なくなっちゃうと思うんです。よいところが薄まっちゃうというか。人気作の続編が、「あれれ?」となるのもそうですよね。ですが。 名作と名作を合わせたら、一大名作が...

『JAGAE 織田信長伝奇行』#725

歴史に「if」はないというけれど。 現代にまで伝わっている逸話と逸話の間を、想像の力で埋めるのは、歴史小説の醍醐味かもしれません。 『陰陽師』 の夢枕獏さんの新刊『JAGAE 織田信長伝奇行』は、主人公が織田信長です。 旧臣が残した『信長公記』や、宣教師の書いた『日本史』などから、人間・信長の姿を形にした小説。もちろん、闇が闇としてあった時代の“妖しいもの”も登場。夢枕版信長という人物の求心力に、虜になりました。 ☆☆☆☆☆ 『JAGAE 織田信長伝奇行』 https://amzn.to/2SNz4ZI ☆☆☆☆☆ 信長といえば、気性が荒く、残忍で、情け容赦ないイメージがありました。眞邊明人さんの『もしも徳川家康が総理大臣になったら』には、経済産業大臣として織田信長が登場します。首相である家康を牽制しつつ、イノベーターらしい発想で万博を企画したりなんかしていました。 『もしも徳川家康が総理大臣になったら』#687   『JAGAE』は、信長が14歳の少年時代から始まります。不思議な術をつかう男・飛び加藤との出会いのシーンが、また鮮烈なんです。人質としてやって来た徳川家康をイジる様子、子分となった秀吉との出会いなどなど。 信長のもとに常に漂う、血の臭い……。 これに引きつけられるのは、蚊だけではないのかも。 おもしろいのは、一度も合戦シーンが出てこないことです。信長のとった戦術・戦略は、実は極めてオーソドックスなものだったそう。そこで戦よりも、合理主義者としての人物像を描いているのではないか、と思います。 小説の基になっている『信長公記』は、旧臣の太田牛一が書いた信長の一代記です。相撲大会を好んで開催していたことなどが残っているそうで、史料としての信頼も高いと評価されているもの。 そんな逸話の間を想像で埋めていくのです。なんといっても、夢枕獏さんの小説だから。闇が闇としてあった時代の“妖しいもの”が楽しみなんです。 タイトルになっている「JAGAE」とは、「蛇替え」と書き、池の水をかき出して蛇を捕えることを指しています。 なんだかテレビ番組になりそうな話なんですけど、実際に領民が「大蛇を見た~」と騒いでいたことを耳にした信長が、当の池に出張っていって捜索したという記録が残っているのです。 民衆を安心させるための行動ともいえますが、それよりも「未知なるもの」への...

『コロナ時代の選挙漫遊記』#839

学生時代、選挙カーに乗っていました。 もちろん、なにかの「候補者」として立候補したわけではありません。「ウグイス嬢」のアルバイトをしていたんです。候補者による街頭演説は、午前8時から午後8時までと決まっているため、選挙事務所から離れた地域で演説をスタートする日は、朝の6時くらいに出発することもあり、なかなかのハードワークでした。 選挙の現場なんて、見るのも初めて。派遣される党によって、お弁当の“豪華さ”が違うんだなーとか、候補者の年齢によって休憩時間が違うんだなーとか、分かりやすい部分で差を感じていました。 それでも、情勢のニュースが出た翌日なんかは事務所の中がピリピリしていることもあり、真剣勝負の怖さを感じたものでした。 「猿は木から落ちても猿だが、代議士は選挙に落ちれば“ただの人”だ」とは、大野伴睦の言葉だそうですが、誰だって“ただの人”にはなりたくないですもんね……。 そんな代議士を選ぶ第49回衆議院議員総選挙の投票日が、今週末10月31日に迫っています。   与党で過半数を獲得できるのかが注目されていますが、わたしが毎回気になっているのは投票率です。今回は、どれくらい“上がる”のかを、いつも期待して見ているのですが、なかなか爆上がりはしませんね……。 ちなみに、2017年10月に行われた第48回衆議院議員総選挙の投票率は、53.68%でした。 『コロナ時代の選挙漫遊記』の著者であり、フリーライターの畠山理仁さんは、選挙に行かないことに対して、こう語っています。 “選挙に行かないことは、決して格好いいことではない。” 全国15の選挙を取材したルポルタージュ『コロナ時代の選挙漫遊記』を読むと、なるほど、こんなエキサイティングな「大会」に積極的に参加しないのはもったいないことがよく分かります。 ☆☆☆☆☆ 『コロナ時代の選挙漫遊記』 (画像リンクです) ☆☆☆☆☆ 昨年行われた東京都知事選で、「スーパークレイジー君」という党があったのをご存じでしょうか? またオモシロ系が出てきたのかしら……と、スルーしてしまったのですけれど、本を読んで、とても真剣に勝負していたことを知りました。300万円もの供託金を払ってまで挑戦するんですもん。そりゃそうですよね。 この方の演説を、生で見てみたかった。もったいないことをしてしまった。 こんな風に後悔しないで済むように、畠...