「いかなる理念も理想たりえぬ限りは魂の力を殺す。しかし、いかなる理念も理想たりうる限りは、すべてあなたの中に生命力を生み出す」
哲学者で教育者のルドルフ・シュタイナーの言葉です。神秘思想家でもあったシュタイナーは、「理想」を持つことが、生きる力を生み出すのだと信じていたのだそう。
あまりにも理想的な仲間関係、理想的な先輩後輩関係、理想的なプロフェッショナルを描いたドラマ「賢い医師生活」を観て。
(あー! こんな理想的な友だちがいたらいいのに)
と思ったのですが。同時に、
(しょせん、ドラマだしね)
とも思ったんですよね。でもこのドラマが描き出す「理想」を、単なる夢物語としてしまうと、非常に、ものすごく、とっても人生もったいないことをしているんじゃないかという気がしたのです。
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ドラマ「賢い医師生活」
https://www.netflix.com/title/81239224
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3月から韓国で放送がスタートしたこのドラマ。「応答せよ」シリーズを制作したイ・ウジョン脚本家×シン・ウォンホ演出家コンビによる最新作なのですが。日本で大人気となっている「愛の不時着」や「梨泰院クラス」よりも視聴率ははるかに上。
昼間は大学病院の医師として働き、週に1度はバンドの練習をするアラフォー5人が主人公。大学の同期で、別々の病院で働いていたものの、同じ病院に勤めることになる、というのが第1話です。
医療ドラマというと「白い巨塔」とか、「ドクターX」を想像していましたが、そんなどす黒さはナッシング(いや、ちょっとあるかな)。
実は第1話を観たとき、登場人物がこんがらがってしまったんですよね。BB Crewさんが分かりやすい画像を作ってくれていたので、お借りしてきました。とりあえず、一番上の段の人だけ覚えておけばなんとかなります。
韓国のドラマ制作の現場は、それはそれは過酷なのだそうです。理由は、週に2話放送日があること! たとえば「愛の不時着」は放送日が土曜日と日曜日だったため、「土日ドラマ」と呼ばれていました。
週1話だってスケジュールを合わせたり、脚本を仕上げたりするのは大変だろうなと思うのに、週に2話。今の時代、一番ブラックな現場なんではないかと思ってしまう状況です。
そこでシン・ウォンホ演出家は週1話の放送を提案。幸いにも視聴率がとれたので、シーズン2の制作も決まったそうです。現在配信されているのはシーズン1の12話です。
韓国のネット掲示板で、「女性キャラクターの名前は、春夏秋冬の四季を象徴しているのでは?」というコメントが掲載されていました。
イ・ウジョン脚本家ギャラリー
https://gall.dcinside.com/mgallery/board/view/?id=leewoojung&no=4908
(韓国語のページです)
チェ・ソンファの「ソンファ」:韓国語でマツバボタン=夏に咲く
チュ・ミナの「チュ」:漢字で「秋」
チャン・キョウルの「キョウル」:韓国語で「冬」
えーー!?って感じですが、万事に細かい芸を見せるイ・ウジョン脚本家なら、ありえるかもしれない推理ですね。
5人の医師は担当こそ違えど、いつでも緊急呼び出しが入る生活です。バンドの練習中に電話を受け、ひとり、ふたりと消えていくシーンも。
手術を終えて、夜中にみんなでご飯を食べるときも、お酒はなし。「飲みニュケーション」の多い韓国ドラマで、こういう展開はなかったかもしれません。
なにより5人の仲間はそれぞれにリスペクトしあい、支え合い、お互いに自分が考える「かっこよさ」を追っているようでした。
たとえば、手術の内容について家族に説明をするインターン医師がいます。彼女は他人への共感性が低いため、キッパリサッパリとした言葉を使ってしまうので家族としては「うっ!」となってしまうんですよね。そんな彼女を、大声で叱るでもなく、たしなめるでもなく、自分の行動で見せる先輩。
また、プライベートでやらかした後輩が手術中にボーッとしていた時には「お前の事情をここに持ち込むな」と、医師としての自覚を促す。
誠にプロフェッショナルな姿は、「こんなお医者さんに診てもらえたら安心だよね」と感じさせてくれます。そして12話まで観て、もう一度第1話を観てみたら、ここにいろんな伏線が引かれてた!
バンド練習でやる曲は、どれも韓国にとっての懐メロなのだそう。第1話で披露する「Lonely Night」という曲は、キム・テウォンというロック歌手が歌った曲です。新歓合宿の回想シーンでマネされているとおり、ストレートのロン毛がトレードマークなんです。
学生時代に思い描いた「理想」と、20年後の現実に生きる自分。
若かりし頃の思い出は、語りかけてくるようです。「理想」は、生きる力を生み出すものだから。
自分にとっての「理想的にかっこいい姿」を忘れていないかい?
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