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現実と仮想世界が溶け合うミステリー ドラマ「アルハンブラ宮殿の思い出」#380


韓国ドラマを表す言葉のひとつに「マクチャンドラマ」があります。

「マクチャン」とは「どん詰まり」という意味なのですが、ジェットコースターのようにストーリーが急展開していく一方で、非現実的やろ!とツッコまれてしまうようなドラマを指して「マクチャンドラマ」といいます。

展開にムリはありつつ、ハマってしまう要素を持ったドラマという感じですね。

ストーリーがジェットコースターなら、撮影だって綱渡り。その日の夜に放送する予定のドラマを、昼間に撮影していることもあるそう。生放送同然の撮影システムは、何度も放送事故を起こすくらいです。

視聴者の反応を見て、構成を変えたり、キャラクターの厚みを変えたりすることもある。よくいえば視聴者第一主義ということかもしれません。

ただ、ラストに近くなるとやたらと回想シーンが増えるドラマもあって。

(撮影が間に合わなかった……?)

それとも、

(放送の尺に足りなくなった……?)

と感じてしまうこともしばしば。

ヒョンビン主演のドラマ「アルハンブラ宮殿の思い出」は、全16話ですが、10話までは抜群におもしろいんですよね。初回のドキドキ感に引かれてドンドン観てしまうのですが、文字通りドン詰まって失速してしまう「マクチャンドラマ」でもあったかなと感じました。

☆☆☆☆☆

ドラマ「アルハンブラ宮殿の思い出」

Netflix配信
https://www.netflix.com/title/81004280

☆☆☆☆☆

ヒョンビン演じる投資会社の社長ユ・ジヌが、画期的なARゲームと出会うところから話は始まります。コンタクトレンズに映し出されるARの世界は現実ともリンク。武器とアイテムを手に入れ、スペインの騎士と戦うのです。

これ、ゲーム好きの人はめちゃくちゃハマると思います。

しかもゲーム画面と現実の映像がシームレスにつながっているので、「いまヒョンビンはどちらにいるんだっけ?」と思うことも。現実と仮想世界が完全に溶け合っているんです。

話は変わりますが、昨日、「東京藝大「I LOVE YOU」プロジェクト2020」という公開講義が配信されていて、アーティストの日比野克彦さんがこんな話をされていました。

(対談相手である青年失業家の)田中泰延さんは、ガリ版印刷からコピー機が誕生して、パソコンのソフトを経験している世代。一人の人間がこれだけのメディアの変化を経験することは、石器時代以降ほとんどない。ツールやメディアが変われば、表現することも変わっていくはず。


たしかに、すごい時代に生きているんだなと思いますね。

そして、こんなARゲームが現実になったらぜひやってみたい。子どもの頃、ゲームセンターでインベーダーゲームをして、スーパーマリオブラザーズで遊んだわたしにとっては、ドラマでみた技術の進化はSF世界のようでした。

おかしいのが、現実の世界なら大金持ちで買えないもののないジヌなのに、ゲームの世界ではレベルが低いせいでほしいものが買えない悲哀を味わうこと。

ドラマは、ゲームの権利を買おうと制作者に会いに行ったジヌが、ライバル会社の社長と再会。ゲームの中でも対決した翌朝、彼が遺体で発見され……と展開していきます。

「愛の不時着」でヒョンビンを知ったという方には驚きかもしれません。あま~いラブストーリーは後半になってから。前半はミステリーとアクションがメインです。あと、舞台がスペインのグラナダなので、映像もゴージャスです。

とてもとても勢いがあって最高にハマるドラマですが、ラスト3話くらいの訳わからなさも最高なんですよ……。

突然、時間軸が入れ替わったり、回想シーンが増え始めるので……。

11話くらいまでを観るのがおすすめです。

そんな勧め方あるかい!と思いますが本音です。

SF作家のアーサー・C・クラークは、「高度に発達した科学は魔法と区別できない」と語っていました。「アルハンブラ宮殿の思い出」で描かれるのは、まさに科学技術が創り出した魔法の世界。

現実の世界を生きていると感じる根拠ってなんだろうと考えてしまう。初めての体験に震えます。


ドラマ「アルハンブラ宮殿の思い出」tvN 全16話(2018年)

演出:アン・ギルホ

脚本:ソン・ジェジョン

出演:ヒョンビン、パク・シネ、パク・フン、イ・スンジュン、ミン・ジヌン、チョ・ヒョンチョル


コメント

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